「……ぁ……んっ!!」
 そっとパジャマのズボンを下ろし、下着の上からゆっくり愛撫をしてやる。
 だが、彼女の秘部は、しっとりとすでに濡れていた。
「……もうこんなにして……。感じやすいな」
「やぁっ……! んっ、意地悪……っ」
 耳元で囁くと、思わず笑みが浮かんだ。
 自分の愛撫に一生懸命耐えている姿は、やはりそそられる。
 ショーツの隙間からそっと指を差し入れると、彼女が大きく背中を反らせた。
「んっ! ……あぁっ」
 そこはすでに熱い蜜で濡れており、少し指を動かしてやるだけで、部屋に淫らな音が広がる。
「やぁっ……! もぅ……やめて……ぇ」
 眉を寄せて軽く首を振る彼女にそっと口づけし、そのままショーツを脱がす。
「んっ!」
 つ、と糸が引かれるほど満たされたそこを、今すぐにでも感じたかった。
 指でなぞってやれば、ぬるりと指を含む。
「やあんっ! そ……んなっ……やだ、ぁ」
「嫌? どうして」
「だっ……て……んっ! っ……もぅっ」
 指をつつっと進めると、ぷっくりとした膨らみに当たった。
 そのまま撫でるようにして指を往復させると、途端に彼女が足を閉じてしまう。
「あんっ! やっ……せんせ!」
「閉じちゃダメ。……そうするなら……」
「っ!? やぁ!! んっ……やめ、てぇっ……!」
 濡れた指で太腿の内側をなぞってから、そのまま足を割って顔をうずめる。
 茂みをそっと掻き分けてからソコを舌先で弄ると、いやいやをするかのように首を振った。
「あっ! やっ……ぃやぁ……っ」
 ついばむようにして刺激を送ると、そのたびにびくびくと身体を震わせた。
 鼻先に彼女の蜜の香りが広がり、指を抜き差ししてやると、新しい蜜が溢れた。
「んんッ! もっ……やめてぇ……ッ! っ! あ、んっ!」
 彼女が髪に添えていた手に、力がこもる。
 限界に近いことをふつふつと感じながらさらに責めやると、ぎゅっと手を握り締めた。
「あ……んぁッ! も……や……っだめ……ぇ、だめっ……ぁああっんん!!」
 次の瞬間、彼女が跳ねた。
 挿し込んだ指が、きゅっと締められる。
 がくがくと身体を震わせて絶頂に達したのを感じながら、唇を離して彼女を下に捉えると、大きく息を付いて涙を目の端に浮かべていた。
 飲み込まれた指を抜き取り、瞳を開けた彼女に見えるように舐めてやる。
「っや……っ。意地悪……」
「羽織ちゃんを見てると、意地悪したくなるんだよ」
 ふっと目を細めてから髪を撫でてやると、堪らなくいい顔を見せた。
 そっと口づけをして、香りを与えるように舌を絡める。
「……ふ……」
「わかる?」
「え……?」
 少し瞳を開いて息をつく彼女に、小さく訊ねる。
「キスの味」
「……味?」
「うん。……俺を狂わせる匂い」
「……え……? あ!? ……やっ! もぅ……先生!」
 ちゅ、と指に唇を寄せてやると、さすがにわかったらしい。
 顔を真っ赤にして、睨まれた。
「ごめん。でも、本当のことだよ?」
「っ……もぅ……いじわる」
 眉を寄せて泣き出してしまいそうな彼女の頬に口づけしてから、ゆっくりと手を潤いきった場所に伸ばす。
「! あッ……」
 鋭く反応を見せ、いともたやすく指を飲み込んでいく彼女。
 くちゅくちゅと響く音に誘われるまま、指を増やして深く潜る。
「んッ! はぁっ……あぁ……も、やぁ」
「……ここか」
 ぽつりと漏らしてそこを何度かこするように刺激してやると、ひくひくと身体を震わせて首に腕を絡めてきた。
「あっ、やぁんっ……! そ……んなされたらっ……」
「……されたら?」
「ん……もぅ……意地悪っ……!」
 きゅっと回された腕に力がこもり、軽く首を振られてしまう。
 彼女らしい。
 どうやら、早くも2度目の波が押し寄せているようだった。
 耳元にかかる苦しげな吐息に翻弄されつつも彼女を離し、ベッドの小さな引き出しから小袋を取り出して猛る自身に纏わせる。
 改めて抱きしめると、ぶつかっているからか彼女も反応を見せた。
「……いい?」
「うん……」
 彼女に入るときに、わざと訊ねること。
 これも、一種の癖といえば癖かもしれない。
 困ったように眉を寄せて、うなずく姿を見たいから。
 ゆっくりとあてがって彼女の中へ入っていくと、溶けてしまいそうな熱さで満ちていた。
「んっ……あぁ……」
 しっかりと入り切ると、何もしていないのにすぐにでも果ててしまいそうな感覚に陥る。
 相変わらず、彼女の中は居心地がよすぎてヤバい。
「……すごい……イイ」
 耳元でため息混じりに呟いてから、静かに動き出す。
 途端、落ち着きかかっていた彼女が表情を一変させた。
「あッ! そ……こっ……んっ! やぁあっ……」
 このまま、狂わせてしまいたい。
 そう思わせてくれる表情。
 反応をうかがうためというのもあるが、こうして快感に翻弄されていく彼女の顔を見るのは好きだった。
 自分が与える快感に揺れる彼女は、何よりもきれいで。
 こすり上げるようにして彼女の中で動くと、さらにいい声をあげた。
「はぁっ……も、んんっ……あぁんっ……やっ……!」
 きゅっとしがみつく腕に力がこもり、容赦なく自身を締め付ける。
 そのたびにイってしまいそうになりながら徐々に責めるスピードを速めると、それに応じて彼女もいい声をあげた。
 いつの間にか風の音が止み、室内にはふたりの交わる淫らな水音だけが響く。
 そして、その中でもひときわ耳につくのが――……彼女の声。
「あ、あっ……ん……! ふぁっ……や、ぅ」
「っ……はぁ」
 どくどくと脈打つ自身を感じながら、思わず眉が寄る。
 そろそろ限界かもしれない。
「んっ……も……だめぇっ! あ……んっ!! せんせ、せんせぇ……っ」
「ッ……」
 切なげに俺を呼ぶ彼女の耳元に、そっと唇を寄せる。
 少し姿勢を変えるだけで締まり具合が変わるので、これはこれで結構クル。
「いいよ……羽織。イっても」
「ッ! や……名前なんて、ずる……いっ……! ん、もぉ……ダメぇっ!」
 泣きそうな彼女と目が合った。
 瞬間、強烈な締めつけが襲う。
「ッ……! く……ぅ……」
「んあぁッ! っ……!!!」
 びくびくと何度も締めつけられ、彼女とほぼ同時に胎内へ吐き出していた。
 肩で荒く息をしながら、目元に手をやる彼女を抱きしめる。
「……は……ぁ。……すごいな」
「え……?」
 ちゅ、と舌先で涙を拭ってやりながら呟くと、うっすら瞳を開いて見つめられた。
「求めるたびに、スゴくよくなって……ヤバい」
「……えっち……」
 恥ずかしそうに俯いた彼女に口づけると、彼女もそれに応えてくれた。
 しっかり味わってから唇を離して彼女を見ると、艶っぽく唇を濡らしていて。
 ……イイね。
 たまらなく、イイ顔だ。
「…………」
 ついつい彼女を見ていたら、満足げに自分が笑っているのに気付いた。
 ああ、俺はやっぱり変わったなと心底思う。
 自身を抜いてざっと処理をし、彼女もティッシュで拭ってやる。
 ――……と。
「……羽織ちゃんのせいで、びしょびしょ」
「え……?」
 だるそうに身体を起こした彼女に、濡れてしまったシーツの部分へ手を置きながらわざと意地悪く笑う。
 すると、眉を寄せて上目遣いに見られた。
「っ……だ、だって……。これは、先生がいけないんですよ?」
「俺?」
「……うん」
 少し拗ねたような目でうなずき、頬を染めて小さく呟く。
 ……俺、ね。
「先生が……あんなにするから……」
「どんなにしたかな」
 顔を近づけて囁いてやると、俯いてしまった。
 その頬はしっかりと染まっていて、だからこそかわいさが満ちる。
「冗談」
 彼女の頬に口づけると、もぅ、と彼女も小さく笑った。
「風、やんだんですね」
「みたいだね。明日もこんなふうに穏やかだといいけど」
「……うん」
 小さくうなずいた彼女の顔を、そっと覗きこむ。
「え?」
「……ずいぶん、積極的だったけど。なんで?」
「え?」
 途中から、迫ってきた彼女。
 いつもならば考えられない。
「……だって……」
 ふっと表情を曇らせた彼女が、少しだけうつむいてから――……再度俺を見上げた。
 寂しげで、切なげで。
 目が合った途端、自分も目が丸くなる。
「……明日は……先生がいないんですもん」
 そのセリフに、思わず胸が苦しくなる。
 鷲掴みにされた、まさにそんな感じだ。
「そっか」
 それでも、ぎゅっと抱きしめて髪を撫でてやると、小さく笑みを浮かべた。
「でも……大丈夫。……先生のこと、いっぱい……そばに感じられたから」
「っ……」
 かわって見せてくれた満面の笑みに、思わず喉が鳴った。
 ……あぁ、そうか。
 こんなにも、俺は愛されているんだ。
「……先生?」
「なるべく、早く帰ってくるから」
 腕に力を込め、自分から彼女の頬へ顔を寄せていた。
 あまりにも愛しくて、たまらなく切なくて。
「うんっ」
 嬉しそうにうなずいた声。
 そして、背中に回された手が、温かかった。
 一晩でもこの温もりが隣にないのは、なんとなく不安になる。
 ……だが、それは彼女も同じ。
「孝之に八橋でも買ってくるか」
「あはは。先生、いじわるー」
 ぼそっと呟くと、おかしそうに彼女が声をあげた。
 頬に口づけてから、もう1度唇を塞ぐ。
「……愛してるよ」
 唇を離して笑みを浮かべ、瞳を覗きこむ。
 すると、少し驚いたように瞳を丸くしてから、小さくうなずいてあの笑みを浮かべてくれた。
「私も……愛してます」
 屈託なく笑う彼女。
 俺が帰る場所は、やはり彼女の元でしかないんだと改めて実感した。


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