「……いい?」
「…………ん……」
耳元で呟いてから、一気に彼女の中へ。
「っ……く……」
「あ、あっ……!」
びくびくと奥まで締め付けられ、たまらず息が漏れる。
2週間ぶりの快感。
それはあまりにも大きすぎて、これだけで……ヤバい。
「声……出して」
「っ……でも……」
「……もっと、聞きたい」
「……ぅ……」
「羽織。……声出して」
「っ……ん、ぁ……っん!」
戸惑う彼女に息を吹きかけながら囁くと、とろんとした顔で小さくうなずいた。
……気持ちよさそうな顔して。
相当、いけない顔だ。
「あっ、あ……」
動き出すと、途端に結構な締め付けに襲われる。
……まだ。
彼女をイカせないし、自分だってまだまだ味わいたい。
あまり奥まで突かないように位置をずらしてから、再び責めあげる。
「……ぅ、ぁんっ……はぁっ……祐恭さっ……ん」
瞳を閉じてうっすらと開かれた唇から漏れる、自分を呼ぶ声。
愛しい。
自分だけを感じて自分だけを欲しがる彼女を見下ろしながら笑みを含み、身体を重ねる。
「んっ、ん……ふぁ」
角度が変わったからか、ぴくんと身体を震わせて息を漏らした彼女が、熱い手のひらを首筋に当てた。
……この熱も、俺の仕業か。
ついつい、笑みが浮かぶ。
「1週間……っ……どんな気持ちだったか……わかるか……っ?」
「ん……それはっ……ぁんっ!」
「ずっと、ほったらかしにして……」
「ごめ、なさっ……い……ぁ」
律動に合わせて呟くと、吐息混じりに彼女も返した。
「……ほら、目開けて」
「っ……ん」
つ、と頬に手を伸ばして彼女に触れると、悩ましげな表情で瞳を開いた。
吸い込まれそうな、色。
じわっと潤み、何を言わずとも誘っているような感覚を覚える。
「!! あっ、んっ……はぁっ! っく……ぁんっ」
「っ……」
たまらず彼女を突き上げると、ぞくぞくと背中に快感が走った。
欲しい。
もっと……もっと、だ。
「あ、あっ……! 祐恭さんっ! だめっ……ヤ、や……ぁだっ……!!」
「……これが……っ……欲しかったんだろ……!」
「け……どっ、あぁ、もぅ、い、やっ……! いっちゃ……ぅっ」
「いいよ……気持ちよくっ……なって」
「んっ……んんっ……!」
敏感な部分を敢えて強く擦るように突き上げると、声を大きく上げて快感に身を委ね始める。
ぐいぐいと締め付けられるのを耐えながら律動を早めると、びくっと足を震わせて首に回した手に力がこもった。
「あ、やっ……! い、いっちゃ……ん!! や……あぁんっ!!」
「……くっ……はぁっ」
びくびくと強烈な奥からの締め付け。
たまらず彼女の肩を掴んで、波に流されないように耐える。
……まだ……。
まだだ。
ぞくぞくと上がり来る快感を振り払い、果てたばかりの彼女の中で再び動き出す。
「やっ……あぁっ……!」
「羽織……ッ」
「ううっ……んぁっ……やぁっ!」
はぁはぁとつく彼女の息が耳の届き、こちらも瞳を閉じて彼女だけを感じることにした。
余韻の残る彼女の胎内。
ヤバいくらいの締め付けのあとも、動くたびに締め付けが襲う。
と同時に、溢れる彼女の蜜。
そのせいで、動くたびに淫らな水音が耳に響いた。
「……あ、もっ……ぅ、ダメぇ……っ祐恭さん……祐恭さっ……ぁん!」
「羽織……っ……すごいかわいい」
しがみつくように自分を求め、囁くように名前を呼ぶ彼女。
その細い腰に両手を当て、再び彼女の奥へと這入る。
「っあぁ……! や……っだめ……ぇ!」
「っく……ぁ」
ぎゅっと締め付けられ、たまらず力が抜ける。
もう少しだけ。
……それだけでいい。
「……羽織……っ……ヤバい」
「んっ、も……ダメぇっ……」
ふるふると首を振る彼女を見てから律動を早めると、一気に彼女の中で自身も果てを迎えた。
すべてを注ぎ込むように、荒く息をつく。
「……はぁ……はぁっ、ん!」
彼女を求めるように貪るキスを交わし、華奢な身体を抱きしめる。
すがってくる彼女に何度も口づけを落としてから瞳を合わせ、端に溜まった涙をすくうと、眉尻を下げた。
「……せんせぇ……」
「ん……?」
愛しげに彼女の髪を撫でながら応えると、快感の余韻が残っているであろう震える身体でぎゅっと抱きついてきた。
「……どうした?」
いつもと少しだけ違う反応。
思わず瞳を丸くして顔をのぞくと、瞳を閉じて…………胸元に顔を埋める。
「……やなの……」
「嫌……? 何が?」
「……独りに……しないで」
「っ……」
どくんと胸の奥が鳴る。
切なげに呟かれた言葉。
あまりにも儚くて、たまらず彼女をきつく抱きしめる。
「嫌いにっ……なって……離されたら、やだ……」
「……嫌いって、俺が?」
やっと上げた瞳を真正面に捉えて眉を寄せると、何も言わずに小さくうなずいた。
「なんで俺が嫌いになるんだよ……」
「だ、って……ぇ」
「っ!? ちょ、まっ……! どうしたんだよ。え? 俺何かした?」
「せんせぇ……」
ぽろぽろと涙を流す彼女。
慌てて訊ねるものの、何も言わずにしがみついてくるだけで、まったくわからない。
「やなのっ……独りにしないで……っ。先生に嫌われたら、私……っ」
「いや、だから俺は……」
ときおりしゃくりを上げながら囁き、手の甲で涙を拭う。
そんな彼女をぎゅっと抱きしめて背中を撫でてやるものの、小さく震える身体はあまりにも小さくて、消えてしまいそうだ。
「……どうした? 俺がひとりにするワケないだろ?」
「ふぇ……だって……」
「嫌われるなんて、どうして考えるんだよ……」
「だって……ずっと、怒って……っごめんなさい……謝るからっ」
「……参ったな」
まさか泣かれるとは思ってもなかっただけに、戸惑うしかない。
こんなハズじゃなかったんだが……
「……ごめん」
ものすごい罪悪感にさいなまれつつ彼女を抱きしめ、髪を撫でながら額に唇を寄せる。
俺にできることは何かあるか。
改めて考えるものの、うまいアイディアは浮かばない。
「朝までずっと……こうしてるから。ね?」
「……うん……」
微かにうなずくものの、相変わらず彼女はぎゅっと抱きついたまま。
んー……。
参ったな。
そんなに酷かったのか? 俺は。
涙の跡を残したまま眠りに落ちた彼女を見つめ、跡を拭うしかできない。
……つらそうに寄せられたままの眉。
「…………はー」。
まずったな。
俺の嫉妬も、考え物かもしれない。
などと想いながら、自分も眠りに――……落ちたのは、それから2時間ほど経ったあとだった。
翌朝。
大して眠れずに目を覚ますと、まだ安らかな寝息を立てている彼女が腕の中にあった。
昨夜見たときとは違い、少しだけは穏やかそうな寝顔。
それを見れてほっとしていると、眉を寄せてからうっすらと瞳を開けた。
「……っ!」
――……反射的に目が閉じた。
いや、なんていうか……少し気まずい。
理由はどうあれ、自分が泣かせたわけだし。
などと考えていると、胸の前にあった彼女の手が背中へ回された。
ぬくもり。
……を感じてはいたものの、ぎゅっと抱きついた彼女が小さくため息をついた。
ちょっと待て。なんでため息なんだ――……と不満を口にしようとした、ら。
「先生……?」
……ぎく。
いきなり呼ばれ、内心かなり焦る。
え、もしかしてバレてた?
「もぅ。起きてますよね?」
「………………」
「寝てるなら、どうしてこんなにドキドキしてるんですか……?」
「っ…………夢見が悪くて」
「ほらぁ。起きてるじゃないですか。……もぅ」
「……おはよ」
「おはようございます」
くすくすと小さく笑った彼女を見て、少し力が抜ける。
……よかった。
また昨日みたいにつらそうな顔をされたら……と思っていたので、救われた気分だ。
「……ずっとこうしててくれたんですね」
「当たり前だろ? ……約束したんだから」
「……嬉しい」
えへへ、と彼女らしい笑みを見せると、再び抱きついてきた。
それは本当に嬉しそうで、ついこちらも笑みが漏れる。
「そんな簡単に離してなんかやらないって言っただろ」
「うん」
「……だから、泣かないように」
「ん……わかりました」
穏やかな笑みでうなずくと、瞳をじぃっと合わせてきた。
……なんだ?
まじまじと見られると、考えてることまで見透かされそうだ。
「今度は、マリンより先生のこと優先しますね」
「……何言ってるんだ。もう二度と、マリンには会わせてやらない」
「えぇっ!? そんな……!」
「また俺が妬いてもいいの?」
「っ……それは……困りますけど」
「だろ?」
瞳を細めて呟くと、眉を寄せて小さく唸った。
……半分冗談、半分本気。
まぁ、今度はマリンに対しても少しくらいは余裕があるかもしれないが。
人として、大人として。
「でも、1番好きなのは先生なんですよ?」
「……それでも、嫌なものは嫌なんだよ」
「…………もぅ」
くすくす笑った彼女に、改めて意地悪く笑う。
途端、白い喉を鳴らした。
「今日も、シャツだけね」
「なっ……! だ、だって、もう許してくれたんじゃ――」
「声出したの、誰だっけ?」
「っ……! だって、あれは、先生がいいって……っ……言ったんじゃないですか……」
眉尻を下げ、それはそれは困ったような顔をした彼女に、つい笑いが漏れる。
目ざとく見つけられて『もぅ!』なんて言われたが、これ以上は譲ってやらない。
……とはいえ、これでも反省してるんだ。
俺だって、泣かせたいわけじゃないし……何より、あんなふうに不安がらせるつもりもない。
「ん……っ」
「……かわいいから許す」
「っ……うぅ。なんか……恥ずかしいです」
抱きしめてから耳元で囁くと、くすぐったそうに身をよじった。
この、まどろんだ時間は、やっぱりいい。
彼女が腕の中にあること。
そして、自分が考えていた以上に、彼女が自分を必要としていてくれたこと。
それがわかったから……まぁ、今回は許してあげてもいいよ?
朝からふとそんなことを考えながら、ひとりでにまた笑みが漏れた。
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