時々、不安になる。
私みたいな子が先生の彼女でいいのかな…って。
私にとって先生は、愛しくて…信じられる人で…そして、幸せになってほしい人だから。
…ねぇ、先生? 私といると幸せ?
時々、確認したくなっちゃう。
でも、信じてるの。
私の居場所は、先生の腕の中だって…。
私、先生のそばにいていいんだよね………?
学校帰り、羽織はショッピングセンターの一角にいた。
雑貨屋の花言葉シリーズが置いてある棚の前に。
「これが…そうかなぁ?」
前に絵里と来たお店。
あの時は、結局下着しか見なかったからわからなかったけど…。
結構カワイイ雑貨も置いてある。
ここに来た理由は、先週末に先生からもらったプレゼント。
嬉しくて、コルクボードに飾ったりして眺めてるくらい気にいってる。
そのプレゼントのお礼がしたいという気持ちもあるけど、それよりも…。
「ゼラニウム…何処だろ?」
ゼラニウムの花言葉が知りたかった。
先生ってば、どんなに聞いてもうやむやにしちゃうし。
あれから、何度か聞いてみたけどはぐらかされてばっか。
もしかして、単純に綺麗だったから買ったのかな?
でも、やっぱり意味はあるよね。
だって…。
「こんなにあるんだぁ…」
棚にずらっと並んだ雑貨達。
花にも色々あるように、言葉も色々ある。
いっぱいある中で、ゼラニウムを選んだ理由。
すごく気になる。
パラパラと、棚に置いてあった花言葉ファイルをめくる。
すると………。
「…! あった!」
先生が私にプレゼントしてくれた花。
フクロソウ科と表記されていて、数枚の写真と共に説明文章も記載されている。
やっぱり、カワイイ。
見た目だけで買ったって言われても納得しちゃうくらいカワイイ。
…先生も、そう思って見た目だけで買ったのかな?
どうなんだろ?
指で、ゼラニウムの説明文章をなぞっていく。
知らなかった可憐な花の正体。
そして…。
「………せんせ…」
細い指先…その先にある文章。
『花言葉…君ありて幸福』
目元に涙が滲む。
こんなにも、想いがこもった花なんて思わなかったから。
先生、照れてたのかな?
だから、言わなかったんだね…先生らしいけど。
じゃあ、私も。
私の想いを託す花…先生にプレゼントするね。
目元の涙をそっと指先で拭う。
「どの花に託そうかな?」
めくられていく花言葉ファイル。
そして…黄色の花に瞳を奪われた。
「アヤメ科? ヨーロッパ原産なんだぁ」
棚に目を移すと、その花の雑貨が並んでいた。
メモスタンドなら使ってくれるかな?
絵葉書もいいな…先生の家って殺風景だから、飾ってもいいし。
羽織は、メモスタンドと絵葉書を手に持つ。
「私の想い、先生に届けてね」
そう言って、レジに向かおうとした矢先…。
ゼラニウムの絵葉書が飾られている隣。
ちょっと気になる花言葉…。
「………………」
これも…プレゼントしようかな。
しかし、時、既に遅し。
そう思ったのは、その花の雑貨に手が伸びた後だった…。
お待ちかねの金曜日。
先生の腕の中にいる安らぎの時間。
祐恭は、羽織を腕の中に納めつつラッピングされたプレゼントを袋から取り出すとこだった。
「これ、あの店で買ったの?」
ガサゴソとラッピングを外しながら聞いてくる。
「うん、やっぱりラッピングでわかっちゃうんですね」
「俺を喜ばす為の下着?」
「…! 違います!」
もぉ、先生ってば…。
手触りで布製ではないってわかってるはずなのに…。
「ひょっとして、花言葉シリーズ?」
「メモスタンドは実用的だし、絵葉書は飾れるから…先生にもって思って」
透明なブロック部分に花が内包されているメモスタンド。
私がもらった絵葉書同様、一面にあしらわれた絵葉書。
「イヤ…でした?」
「ううん、嬉しい。ありがと、羽織ちゃん」
私の頬に手を当て、そっと触れるだけのキス。
…だったんだけど。
先生が私の耳元に顔を近づける。
「で、羽織ちゃんが選んでくれた花言葉は?」
そっと耳元で囁かれた言葉。
思わず、ゾクってくる。
「秘密です」
…胸の鼓動が治まらない。
「羽織ちゃん、教えて…」
そう言って、耳を唇ではさんでくる。
そのまま、何度もキスされる。
「……っ…ぁ……ぁあ…」
思わず口からこぼれる声。
もう、どうにかなっちゃいそう。
こんな時に名前だけで呼ばれたら…。
「羽織…」
…KOされちゃうよね。
「黄しょうぶ…って花」
私が話す間も、絶え間なく続く先生の攻撃。
そのうち、服の中にまで手が進入してくる。
「…っ! ……あぅ………」
「で、意味は?」
胸の敏感なトコを触ったまま、意地悪な笑顔で聞いてくる。
…既に私は、心の中で白旗を振っていた。
「………信じる者の幸福」
先生には幸せになってほしいから…。
私がいることで、先生が幸せになれるのなら…。
ずっと、そばにいたい。
先生と離れたくない。
だから、黄しょうぶの花言葉に託したの。
先生と一緒にいたら幸せになれるって信じてるから。
現在も未来も幸せにしてくれるって信じてる。
だから、私の信じてる人…先生も幸せになってほしい…って。
「これ以上、幸せになったらバチ当たりそうだけどな…」
「せんせ………っ! …はぁ…ぁ…」
先生の想いが伝わってくるような激しいキス。
息すらも奪われてしまうくらいの…。
先生の言った言葉の意味を、きちんと認識したいのに、まともに思考が働いてくれない。
もう、考える余裕すら先生は与えてくれなかった。
「ねぇ、羽織ちゃん?」
先生の腕の中で軽くまどろみ始めた時、不意に先生の声が聞こえた。
ベットの上…お互い服も着ないでくっついていた。
余韻で、未だに思考が鈍っている私は、先生の方を見るだけでせいいっぱいだった。
「もう1枚、黄しょうぶじゃなかった絵葉書があったけど…あれの花言葉は?」
「…! …あ、あれは…」
思考が一気に覚醒する。
そう、思わず気になった花言葉。
さずがに、あの花言葉を言うわけにはいかない…。
「は・お・り・ちゃん♪」
「な、なんでしょう?」
天使のような笑顔を浮かべる先生。
普通だったら、見とれてしまうであろう笑顔。
だけど、今日は悪魔の笑みにも見えてしまう…。
「あの花、ごぼうの花でしょ?」
「!!」
ちょ、ちょっと待って。
なんで先生が知ってるの?!
思わず、口をパクパクさせてしまう。
ほとんどの人は認識のない花なのに…何故?!
「でさぁ…花言葉って…」
先生は、ベットに横になってるにも関わらず無意識に後ろに下がっていた私の腰を掴んだ。
そして、先生の胸の中へと引き寄せ逃げれないようにした後に…先生は極上の笑みを浮かべて…。
「アレ…イジめないでって花言葉じゃなかった?」
………何故、先生が意味を知ってたのかなんて、今さら問題じゃない。
ただ、この後に待ち受けるモノが何なのかが一番の問題だったりする…。
そして…それから数時間、羽織が解放されることは無かった…。
END☆
沙羅さんに頂いた、『君ありて幸福』の続編。
ごぼうの花、出たーーーッ!!
見た瞬間、爆笑。
祐恭も、相変わらずしっかりしてますねー。
でも、羽織が祐恭に全く歯向かわずに居るのは、
やっぱり新鮮でいいわぁ。
私じゃこうは行かないです。ええ。(汗
でも、幸せそうで良かった〜。
ありがとうございました^^
そんな、沙羅さんのサイトはこちらから↓
|