羽織と過ごす、時間。
羽織を腕の中に納めて過ごす甘い時間。
羽織と過ごす何げない日常…だけど、今まで生きてきた中で一番幸せで…。
一番生きている実感が湧いている日々。
それは、ある日の昼下がり…。
「さて、帰るかなぁ…」
祐恭は、ショッピングセンターの一角にある本屋で、車の雑誌の立ち読みをしていた。
本来ならば、今日は朝から羽織と会ってイロイロと…。
…のはずが、羽織は用事があるらしく夕方くらいに来ると言っていた。
なので、一人で家にいてもつまんない…というわけで、近くのショッピングセンターに来ていたのだった。
なんか、いい本無いかなぁ…。
2階の本屋で理系の本や車の雑誌を立ち読みして時間を潰す。
そして、買う本を抱えていた腕が辛くなってきた頃…。
腕時計の針は、3時過ぎを示した。
今から車で帰ったら………ちょうどいい時間かな?
俺は小脇に抱えていた数冊の本をレジへと持っていった。
いつもは孝之のトコで借りる事が多いせいか、久しぶりに購入した気がする…。
ずしっと腕にくる重み。
まぁ、自分の好きな本ばっかだからいいけどさ。
おまけに車だし。
さて、家に帰ってお姫様を待つ事にしましょうか…。
そう思いつつ、ジーンズのポケットに入れた車の鍵を握り締める。
………でもなぁ。
なんか、羽織に買うかな?
このまま、俺の物だけを買って帰るのは…なんかもったいない気がする。
せっかく、来たんだしな。
羽織の喜ぶ顔を見たい…というのもあるし。
彼女の為に…なんて、以前の俺には考えられない事だ。
だけど、羽織の笑顔の為なら…俺に砂糖菓子のように甘い微笑をみせてくれるなら。
羽織の為にプレゼントを選ぶ時間すら、俺には幸せな時間だ。
確か、ここは…。
俺の目の前には、雑貨屋。
正確には、雑貨屋の一角に目を奪われていたりする。
多分、ここが絵里ちゃんの言っていた「アレの購入先」だろう。
通常の彼女なら、買わないであろうデザイン。
それを彼女に買わせたという点では、絵里ちゃんに大感謝だ。
イロイロ遊べたし…。
…って、雑貨屋を前にして考えるセリフじゃないよな(汗)。
んー、ここで何か買うかな。
雑貨屋の一角にある下着売り場。
確かに、その売り場には目を奪われるが本来は雑貨屋さんらしく、可愛い小物がディスプレイされていた。
さすがに男が下着買うわけにはいかないよなぁ。
まぁ、無難に雑貨を見るかな。
目の前には、色とりどりの雑貨達。
文房具とかも色々な種類があった。
…おそろいのシャープペン?
………おそろいのハンカチとか?
おそろいのメモ帳…って俺はメモ帳自体あんまし使わないし。
ん〜、悩むよなぁ。
こういう時って、男も女も変わらない気がする。
買い物する時間って、女は長くて男は待たされてばっかっていうけど。
でも、愛する彼女の為なら、時間をかけて選んでいる自分がいる。
…俺、やっぱ変わったな。
こんな事するようなヤツじゃなかったし、昔は。
でも、こんな俺も悪くないかも。
羽織がそばにいてくれるなら…。
彼女を愛してるから。
「これ…」
思わず口に出た言葉。
目の前にあるのは、色々な花があしらわれている絵葉書やノート、小物入れ等の雑貨だった。
なんの変哲もない…まぁ、どこでもありそうな雑貨。
だけど…。
花言葉…ねぇ。
「あなたを一生愛してます」とか、「友情」………「イジめないで」?
ごぼうの花言葉って、「イジめないで」だったのか…。
ってゆーか、そういう意味の雑貨を買う人がいるのか?
…まぁ、いいか。
少なくとも、俺は買わないな。
半分、苦笑交じりにごぼうの花のあしらわれていた絵葉書を元の場所に戻す…。
その場所の隣。可憐な花が一面にあしらわれている雑貨。
………この花言葉…。
ゼラニウムという花。
その花自体…というより、花言葉に惹かれた。
俺の心境にピッタリという感じ。
これにしよう、これにしなきゃいけない。
俺は、そこの棚にあったその花のシリーズで数枚の絵葉書、ハンカチ、そしてノート…。
…といった羽織に使ってもらえそうな物をセレクト。
そのまま、迷いもなくレジにて清算。
プレゼント用にラッピングしてもらい、屋上の駐車場へと急ぐ。
早く、会いたい。
早く会って、渡したい。
渡して…あの笑顔を見たい。
ゼラニウム同様に、可憐な彼女の笑顔に出会いたい。
「先生、どうぞ」
羽織の笑顔と共に渡される飲み物。
いつもながら、俺の好みを把握してるよなぁ。
いつも通り俺の右側に座る羽織。
そして、俺はいつも通り彼女を腕の中に…。
この腕の中に彼女がいるという実感…めっちゃ幸せ。
さて…微笑を見せていただきましょうか。
これで、彼女の笑顔まで見れたら、幸せすぎ。
彼女と共にいる実感が湧き続けて、そのうち洪水起こしたりして…。
ごそごそと隠しておいたプレゼントを取り出す。
「はい、これ」
そういって、先ほど買ったばかりのプレゼントを差し出す。
「え?…いいんですか?」
「うん、だって羽織ちゃんの為に買ったし」
「今日は、何もお祝いする事無かったはず…」
「俺がプレゼントしたかっただけだから、気にしないの。さ、開けてみなよ」
かさかさと紙袋から取り出されるピンク色のラッピング袋。
「………これ…、まさか」
「そ。羽織ちゃん達が買い物した雑貨屋で買った」
袋に刻印された店名。
それで、彼女はわかったみたいだった。
「…なんか、嫌な予感が」
「大丈夫だから。羽織ちゃんとは違って、雑貨の方を買ったから」
そういうと、すぐに顔を赤くしてテレてしまった。
「もぉ…」
「ん〜、何を想像したのかなぁ?」
「…! 別になんでもないです!」
顔を赤くしたまま、丁寧にラッピングを開いていく彼女。
どんな反応するかな…彼女の髪を梳きながら彼女を見つめる。
「わぁ…カワイイ!…これ、全部同じ花ですよね?」
「そう、同じ花だよ」
ずっとカワイイと連呼する彼女。
蕩けそうな甘い笑顔で、買った物を見てはカワイイと連呼している。
でも、まぁ…。
「俺にとっては、羽織ちゃんの方がカワイイけど?」
そういって、彼女の髪にキスする。
「え…あ…」
何もいえない様子でテレる彼女。
なんとゆーか、ねぇ………挑発してるとしか思えないんだよね、その瞳。
…ってゆーか、挑発してる?
すごく綺麗で、俺を見つめてる瞳。
「…んっ…せん………せ」
彼女を深く抱き寄せ…そのまま唇を奪う。
甘く零れる声。
おずおずと俺の背中に触れる手。
そして、肌に感じる羽織の胸の感触。
………立派に挑発してるな…それなら、お言葉に甘えて……♪
そう思い、彼女をそのままベッドへと抱きかかえ、運んでいった。
もちろん、キスをしたまま。
「…ねぇ、先生?」
俺の腕の中で、可愛く首をかしげてみせる羽織。
…だから、そういう仕草が可愛くて挑発してるんだってば。
「どした?」
「…プレゼント。何で、あの花にしたんですか?」
「…嫌だった?」
俺は、腕の中の羽織を見つめる。
お互い裸のままで抱き合う時間もなかなか悪くない。
熱の残る羽織の体…余韻の残る体を抱きしめる度に、先ほどの甘い秘め事は夢じゃなかったと実感できる。
だからこそ、秘め事が終わっても羽織に服を着せる事はあまり無い。
くっついてれば、寒くないしな。
「ううん、カワイイ花だったから嬉しい。絵葉書の裏にゼラニウムって書いてあったから…」
「あぁ、そういう名前の花だよ」
「ゼラニウムを選んだのには、理由があるのかなぁ…って思って」
もちろん。
理由はあるに決まってる。
だけど…。
「秘密」
簡単に教えるわけないでしょ。
「さ、寝よっか♪」
「…! なんか誤魔化してる」
と、言いつつ、体がダルイのか素直に体を預けてくる。
腕の中に羽織を取り込んで眠る幸せ。
…そのうち、静かな寝息を素肌に感じる。
その安心しきった寝顔に思わず笑みが零れる。
…俺ってやっぱ、幸せだなぁ。
腕の中で眠る羽織。
その羽織を見つめながら、心からそう思う。
その白い胸に、幾つもの赤い花。
俺にとっては、羽織が花だから…いつまでも枯れる事の無い俺だけの花。
羽織に会えて良かった。
じゃなかったら、幸せになんてなれなかった。
俺に幸せを運んできたのは羽織だから…だから、俺も幸せにするから。
羽織を…俺の手で、幸せにするから。
「愛してるよ…羽織」
そっと、耳元にささやいて彼女にキスする。
腕の中で眠る愛しい人を抱きしめて、また祐恭も幸せな夢の中へと落ちてゆく…。
彼女に出会えて良かった。
出会えていなければ…どうなっていたかなんて、想像もしたくない。
そして、彼女に愛される幸せ。
彼女を愛することが出来る幸せ。
共に過ごせる幸せ。
『君ありて幸福』
彼女をそばにいるからこそ、俺は色々な幸福に出会えたんだ。
沙羅さんから頂いた、祐恭と羽織のお話です。
物凄く可愛いんですけど!!
というか、祐恭がいい人!!!
そこに着目するなって?すみません(汗
なんかねー、いいわぁ・・・。
人様に頂いた祐恭と羽織の話は初めてなんですが、
凄く嬉しいです!!
二人の味がよく出てるし。
でっ
『ごぼう』の雑貨。
羽織がこっそり祐恭に持たせるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?(笑
読んだ瞬間、羽織から祐恭への贈り物へぴったんこ!!
と思いましたから(笑
素敵なお話誠にありがとうございました☆
そんな、沙羅さんのサイトはこちらから↓
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