…えっ、ちょ、ちょっとっ!うわっ、ま、待ってっ!!
僕が目覚めたとき、僕の横には、………彼女が眠っていた。
しかも、裸で。…僕も、裸だ。そして、確かに、ここは僕のアパート。
な、なんで!?えっ、ど、どういうことっ!?
昨日は、午前中に3年生の模試があった。
午後から残務整理をした後で飲み会に誘われて、若手教師(って言っていいと思うんだけど…)10人程で焼肉屋に行ったんだ。
この日は丁度、瀬尋先生の誕生日だったんだそうで、そのお祝いを兼ねてってことだったらしい。
可愛い彼女がいるのに、一緒に過ごさなくていいの?って思うんだけど、それでも誘われたら断らないところに瀬尋先生の人当たりの良さが出ていると思う。
いざ店内に入ると、そこに僕等の彼女たちがいたので驚いた。
彼女等も、ご飯を食べに来たらしい。なんとなく、気まずそうな顔をしている。
…うわ。なんか、ちょっと…。
僕は、彼女の姿に目を奪われてしまった。
今まで見たことのない、大人っぽい服装。
…なんていうか、肌の露出が多くて、イロっぽい。
おまけに化粧もしているようで、見違えてしまった。
…なんだか、ドキドキする。いつもと違う、大人っぽい彼女。
見るまい、と思っていてもついつい彼女の方を見てしまう。
どうやら、皆瀬さんと瀬那さんに色々と聞かれているらしい。
彼女は、ちょっと恥ずかしそうにしている。
…やっぱり、皆瀬さんってそうなんだなあ。
皆瀬さんは、うちの学校では割と有名だ。
その優秀な成績と、………誰に対しても変わらない、歯に衣着せぬ言動で。
先生方の間でも、なんていうか、扱いに困る生徒の一人として話題に上ることがあった。
いや、別に不良だとか、そういうわけじゃないんだけどね。
なんかこう、ツッコミ役というか、ドキッとして受け答えに困るようなことを言う子なんだ。
…この間、僕も言われてしまったけどね(あの時は、ホントに恥ずかしかったなあ)。
僕が受ける彼女の印象は、女の子に言うのはちょっとおかしいけど「男前」って感じかな。
…田代先生、すごいよなあ。
そんな皆瀬さんと付き合っている田代先生に、尊敬の念を抱いてしまう。
案の定、彼女は皆瀬さんに何かを追及されているようだった。
なんだか、とても恥ずかしそうだ。
そんな彼女を見ているとドキドキしてしまって、なんだか喉が渇いてしょうがない。
気が付いたときには、ロクに食べもせず何杯もジョッキを空け、…すっかり出来上がっていた。
普段の僕は、外ではほとんど飲まない。
外で飲むと、どうも落ち着かないし、お金もかかるじゃない?
同じ金額だったら家に帰って飲む方が気楽だし、好きなものを好きなだけ飲めるもの。
…まあ、ただ単にケチってことなんだと思うけど。
今まで、外で飲んで酔いつぶれたのは、大学1年のときの新歓コンパぐらいだった。
それからは、外ではどんなときでもセーブして飲んでいたのに。
昨日だけは、それが出来なかった。
やっぱり、彼女の姿にベロンベロンに酔っ払ってしまったんだろう。
僕は、自分の口から皆をカラオケに誘う言葉が出たのを他人事のように聞いていた。
それから僕は、………何をしたのか、覚えていない。多分、カラオケボックスに行ったんだとは思うけど…。
うーん、気になる。僕は、何をしたんだろう。
しばらく考えていた僕は、やっと少しだけ思い出した。カラオケボックスから、帰るときのことを………。
僕は、カラオケボックスの中で酔い潰れて寝てしまっていた。
「山中先生、帰りますよ」
「ほら、タクシーきましたよ」
田代先生と瀬尋先生の声がする。
どうやら、酔って寝てしまった僕にタクシーを呼んでくれたらしい。
「ああ、すみません。すっかり酔ってしまって」
そんなことを答える声も、呂律が回っていない。
そんな状態だから、僕の隣に誰かが座ったのなんてわからなかった。
運転手さんに行き先を告げてしばらく揺られているうちに、誰かが隣に乗っているのに気が付いた。
…甘い香り。まるで彼女みたいだ。
僕は、知らないうちに隣の人に寄りかかっていた。
ああ、なんだかホッとする…。
そう思いながら、僕はまた眠りに落ちていた。
どれくらい経っただろう。タクシーが止まった。僕のアパートの前についたらしい。
「大丈夫ですか?もう、しっかりしてください…」
彼女の声が聞こえる。ああ、そうだ。お金を払わなきゃ…。
ぼんやりとメーターを見て、お金を払う。お釣りをもらう元気は、ない。
彼女に支えてもらいながら、階段を上がる。…ううう、みっともないなあ。
どうにか部屋の鍵を開け、中に入った。そのまま、倒れこむ。
「先生、大丈夫ですか?何か飲みます?」
彼女に聞かれて「お茶」と答える。あれ?何で彼女がここにいるの?
ぼんやりした頭で考える。彼女たち、焼肉食べてなかったっけ?
…ああ、僕は夢を見ているのか。夢の中で彼女に世話を焼かれるなんて…。
お茶をもらって飲み干すと、彼女にグラスを返す。
…夢の中だったら、多少強引でも構わないよね?なんせ、実際にはそんなこと出来っこないんだからさ…。
僕は、グラスを取ろうと出した彼女の手を掴み、そのまま引っ張った。
「きゃっっ!」
彼女は、僕の上に倒れこんでくる。僕は、彼女を受け止めてそのまま抱きしめた。
…夢ってずいぶんリアルなんだな。ちゃんとやわらかい…。
そんなことを考えながら、キスをする。
「…ん……ふ…ぅ…」
「詩織、愛してるよ…」
彼女を抱きしめながら、囁く。
普段の僕は「詩織」なんてとても呼べない。
でも、このときは当たり前のようにそう呼んでいた。
「お布団、行こう…」
「…はい………」
彼女を抱きしめたまま布団の上に移動して、そのまま倒れこむ。
思うように動かない手で彼女を下着姿にしてから、自分も下着姿になる。
顔を赤くして、目をそらしている彼女。
その恥ずかしがっている風情にたまらなくなり、そっと抱きしめる。
「詩織…」
彼女の名を呼び、キスをする。唇をついばむようなキス。
そして、首から胸元まで唇でなぞっていく。彼女の口から、甘い吐息が漏れる。
彼女のブラジャーを外すと、可愛い頂点が目に入る。それは、存在を主張するように硬くなっていた。
唇で周りをなぞってから、口に含む。
彼女の吐息が、喘ぎ声に変わる。敏感な反応に、僕は嬉しくなる。
もう一つの頂点も指の間に挟む。優しく、ゆっくりと胸を揉むと、声が大きくなった。
…反応を見せてくれる彼女が、愛しい。
彼女と付き合い始めてから、女の子と話すことが、以前よりも苦痛じゃなくなってきた。
なんていうか、自信を持って話が出来るようになったと思う。
それはやっぱり、彼女が僕の愛撫に応えてくれるから。
彼女が、僕に自信を与えてくれるんだ。
抱き寄せたまま、ショーツを脱がす。彼女の中心を触りながら、耳元で囁いた。
「僕にも、触って…」
彼女は、恥ずかしそうにしながらも、僕自身に手を伸ばす。
…ああ。気持ち、いい。下着の上からただ撫でられているだけなのに、どうしようもないほど高ぶってくる。
恥ずかしそうな彼女の風情が、僕を狂わせるんだ。…だから、つい、色々させちゃったりするんだけどね。
彼女の中心は、もう熱く溶けていた。花弁をなぞり、中心に指を埋める。
「はあっ…んっ」
彼女の声が、大きくなる。僕を触る手の動きが、速くなる。…すごく、いい。
「直接、触って…」
そう、お願いする。彼女の手が、僕の下着にかかる。
…僕も、裸になった。彼女の手が、直接僕自身を包む。…僕も、濡れていた。
彼女を愛撫する僕の動きが激しさを増すと、彼女の手の動きも激しくなる。…二人とも、息が荒い。
もう、僕も限界だ。彼女と一つになりたくて、体を重ねる。
彼女の腕が、僕の背中に回った。僕も、彼女を優しく抱きしめる。
僕自身を彼女の中心にあてがい、ゆっくりと進めていく。
「は、あ…んっ」
「ああっ…うっ…」
…気持ちいい。彼女の中はとても熱くて、きつい。
僕は、しばらくそのまま彼女の感触を楽しむ。
感情が高ぶり、愛しさで一杯になる。
この、一つになったときの彼女の表情は、とても色っぽくてきれいだ。
…この表情を見れるのは、僕だけだ。
そんな、独占欲が湧いてくる。
僕は、そんな表情に見惚れながら動き始めた。
「あっ……あ、んっ…」
彼女の口から漏れる声。僕の気持ちが締め付けられる。
…もう、痛くはないよな。
まだ、経験の浅い彼女。もっとも、僕も人のことは言えないけど。
でも、彼女を思う気持ちは誰にも負けない。
もっと、もっと気持ち良くなって欲しい…!
僕の動きが、だんだん激しくなっていく。それにつれて、彼女の喘ぎ声も高まる。
彼女も限界に近づいているようだ。僕も、もう、限界っ………!!
「詩織、…イ、イクよっ!」
「ああっ…んっ!」
僕は、彼女の中で絶頂に達した。全部吐き出した後、動きを止めて抱き合う。
ああ、幸せだなあ…。
そんなことを思いながら、僕は満ち足りた気分で眠りに落ちていった…。
僕は、すっかり思い出した。
いや、でも、あれって…。ゆ、夢じゃなかったの!?
だ、だって、何で彼女がうちに…?い、いつ来たの?どうやって!?
そんなことを考えて混乱していると、彼女が目を覚ました。…ゆっくりと起き上がる。
「あ……。おはようございます」
「お、おはよう。…どうして、ここにいるの?」
そう尋ねると、彼女は一瞬「は!?」という顔をしてから、おかしそうに笑って言った。
「先生、昨日のこと、覚えてないんですか?」
「ああ、いや、その、夢だと思ってたんだ。…詩織ちゃんが家にいるわけないって思ったし」
彼女は、まだ笑っている。…そんなに笑わないでよ、恥ずかしいんだから。
「じゃあ、どのあたりまで覚えてるんですか?」
「ああ、えーっと、飲み会に行って焼肉を食べて、カラオケに行って…」
そう、そこらへんは覚えている。不覚にも酔って寝てしまったことも。タクシーで帰ってきたことも。
そう話すと、彼女は声を立てて笑った。
「そのカラオケ、私たちもいたんですよ」
な、なんだって?
「ご飯食べた後、私たちもカラオケに行ったんです。
そうしたら、先生が寝ちゃったって聞いたから、一緒にここまで帰ってきたんですよ」
じゃ、じゃあ、タクシーの中で隣に乗っていたのは…。
「ひょっとして、帰りのタクシーから一緒だった?」
「ええ、そうです。それも覚えていないんですか?」
いや、誰かが一緒に乗っていたのは、覚えている。ただ、それが彼女だとは気が付かなかったけど。
僕がそう言うと、彼女は「だいぶ酔ってたみたいだったから…」と笑った。
…うう、恥ずかしいなあ。…ん?待てよ?僕の中で、何かが引っかかった。
あれ、じゃあ、ここに泊まったの?外泊すること、ご両親は知ってるの?
「詩織ちゃん、ご両親に外泊するって言ってあるの?」
「ええ、絵里ちゃんの家に泊まるって電話しましたから」
そうか…。ああ、外泊させちゃったなあ…。
彼女に迷惑をかけないように、と思っていたので、少し気が滅入る。
と、ここで。
非常に重要なことに気が付いた。僕は、真っ青になる。
「ひ、避妊してない………」
ああ、最低だ!!いくら夢だと思っていたとはいえ、避妊もしないで彼女と一つになるなんて…。
「…ごめん。大変なことをしてしまった…」
僕はうなだれた。なんてことだ………。とてもじゃないけど、彼女の顔を見れない。
沈黙が僕たちを包む。しばらくして、彼女が僕の頭を優しく抱きしめた。肌の温もりが心地いい。
「大丈夫ですよ。その…、生理、終わったばかりだから…」
彼女が恥ずかしそうに言った。その言葉で少し安心したけど、自分勝手にしてしまった罪の意識は、簡単には消えない。
「いや、そういう問題じゃないから………。はあ………」
つくづく、彼女の体を考えてあげられなかった自分が情けない。いくら酔っていたとはいえ…。
落ち込んでいると、彼女が不安そうな声で聞いてきた。
「先生、あまり気持ち良くなかったですか?嫌でした?」
そ、そんなわけないじゃないか!!
「嫌なわけないよ!むしろ、詩織ちゃんに直に包まれてすごく気持ち良かった。けど………」
「じゃあ、いいじゃないですか。私も、先生のことを直接感じられて嬉しかったし………」
「気持ち良かったです」小声でそう言われて、思わず彼女の顔を見上げる。
恥ずかしそうに微笑む彼女。…ああ、この笑顔には本当に癒される。
あれ?そういえば、きちんと後始末がしてある…。
「あの、その、きれいにしてくれたんだ…」
そう僕が言った途端、彼女が真っ赤になった。俯いて、頷く。
それを見て、何とも申し訳ない気持ちと、溢れんばかりの愛しさがこみ上げてきて、彼女を抱きしめた。
「ありがとう。…本当にごめん。今度から、気をつけるから…」
僕が言うと、彼女も僕を抱きしめてくる。
「ううん。先生が私のことを大事にしてくれているのがわかって、嬉しかった………」
雨降って地固まる。
僕のみっともないところを見せてしまったけれど、彼女はそれも嬉しかったらしい。
なんだか、僕との距離が近くなったような気がすると言ってくれた。
それは、とても嬉しいことなんだけれど…。
やっぱり、外では飲まないようにしよう。
僕は、そう固く心に誓った。
…ところで。
こんな可愛い彼女を見ていたら、また収まりがつかなくなってしまったんだ。
そのまま彼女をもう一度押し倒してしまった僕は、やっぱりヒドイのかな?
…もちろん、今度はキチンとしたけどね。
この日、僕が迷惑をかけた先生方にお詫びに行った。
皆、笑って許してくれたけれど。
その後しばらく、飲み会には誘われなかった………。
たかボンさんから頂いた、小説です。
定番になってますね、昭と詩織のお話。
今回は、昭が激しく酔っ払った『眠れないのは誰のせい』の場面を頂きました。
昭、しっかりしなさい!!という感じですねぇ(笑
しーちゃん、相変わらず可愛いし、いい子だし。
ありがとうございましたー^^
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