「…………」
「…………」
「…………」
「……ちょっと」
「…何だよ」
「こんなに愛想の無いホストが居るなんて評判になったら、潰れるわよ?」
「………るせーな…」
足を組んだまま彼を見ると、全く身じろぎせずにぽつりと呟いた。
「…ったく」
純也は知らないのかしら。
『ここは舞台。私達は女優』
…って言う、有名な言葉を。
あれはまぁ確かに『お水』の話だけど、でも、ホストだって同じようなモンでしょ?
彼らにとって、このお店は『舞台』であり、彼ら自身は『俳優』で無ければいけないと思う。
ここでの楽しくて気持ちいい時間を買う為に、お客さんはお金を払っているんだから。
「…ったく。おもてなしって言葉知らないの?」
「知らないね」
ソファにふんぞり返ったままで私を全く見ようとしない彼を見たら、大きく……それはもう大きくため息が漏れた。
「だーかーらーー!!」
「うわ!?」
「アンタは私をもてなす主人なんでしょうが、アホ!!」
「…は……はぁ…?」
「私をイイ気分にさせられなきゃ、金払わないわよ!?」
「ぐっ…くるし…!」
ぐいっと胸倉を掴んで引き寄せぐらぐらと揺さぶると、『ロープ』なんて古い言葉を言いながら彼が手首を叩いた。
…ったく。
折角……そりゃあもうかなり折角!
稔さんと雅都さんが『極上ホストが居る店』なんて言うから、めかし込んできたのに!
……絶対、楽しむ。
絶対絶対、普段じゃありえない位の時間を味わってやる。
「…それじゃ、よろしくね?」
私はそう決め、こちらを恨みがましく睨んでいる彼を見ながら、にっこりとした微笑みを向けた。
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