「こんばんは」
案内された席に、促されるまま腰を下ろす。
…そう。
ここは、お店の外見からしても、見紛う事無く『ホストクラブ』に違いなかった。
……って言っても、遊びに行った事なんて無いんだけど。
「未成年が来ていい場所じゃねーぞ?」
「んー…。でもほら、保護者同伴だよ?」
今は見えない、暁さんと音羽さんの姿。
でも、お店の出入り口の方を仰ぐようにすると、小さく肩をすくめた彼がソファへもたれた。
「…まぁ、大目に見てやるか」
「ありがと」
いつもと同じ口調なのに、いつもとは全く違う雰囲気。
…男の人って、こんなにも変わっちゃうんだ。
髪型や服装がいつもと違うだけで……纏う雰囲気がガラっと変わるなんて思わなかった。
絶対に、無いと思ってたのに。
……いくら『ホスト』を演じて居ても、彼はいつもと変わりないって…。
「…ん?」
「……何でもない」
…なんだか、すごく『反則』って感じがする。
……演技だって、分かってる。
この空間全ては、全部作り物なんだって事も。
………だけど。
それでもやっぱり、真っ直ぐに彼の瞳を見る事が出来なかった。
…どきどきして、苦しくて。
「……………」
…どうしよう。
もしかしたら、ゲームだと分かりきっているこの時間から――…抜け出せなくなってしまうかも知れない。
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