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私は、実は病院がすごく嫌いで。
そんでもって、とっても苦手だった。
だから、これまではずっと彩ちゃんの病院にしか行かなかったワケよ。
……でもね。
でも、この病院は違う。
ある意味、目からうろこ。
まさか、こんな先生が居るとは思わなかったんだもん。
カルチャーショックとでも言うのかしら。
新しい発見。
これからはココに通うのが楽しみだわ!!
佐伯優菜……じゃなかった。
ええとええと、せ……芹沢優菜。
これまでイケメン=無愛想って人にしか会ったことがなかったから、これまでの価値観がまるまるっと覆りそうだった。
だって、ちょー優しくて、ちょーにこやかで、超超ちょーーーイイ人なんだもの!!
綜なんかとは、まるで違う。
まさに、ホンモノの笑顔。
ホンモノの言葉。
ああもうああもう!
とにかく、本当にイケメンなのよ!
まさに、そのひとことに尽きてしまうと思う。
きっと、私と同じようにこの先生に出会って『医者嫌い』とか『病院嫌い』っていうのが治ったって人もいるんじゃないかしら。
そりゃそうよね。
まさか、この世の中にこんなカッコイイ上にこんな優しい先生が居るなんて、フツーは思わないもの。
それこそ、何?
ある意味、想像上の存在とでも言うのかしら。
フツーはさ?
医者って言えば、白衣びらびらさせながら人を見下して横柄な態度とか取っちゃう人多いじゃない?
……ま、まぁ?
私がこれまでそーゆー先生の話しか聞いたことがないだけかもしれないけどさ。
でも、中には『ちょっと風邪っぽいんです』なんて言ったが最後、『アンタは医者じゃないだろうこの素人が!』みたいなこと言い出す人いるじゃない!
え? 何? ドラマの見すぎ?
とんでもない!! 事実よ事実! リアル!
そーゆーロクなもんじゃないのが居るから、ものっすごい嫌いだったんだけど……でも、本当に変わったわ。
この人は、まさにアレよ!アレ!
笑顔の似合う名医 ブラック様
に、違いない! 間違いないわ!
絶対よ、絶対!
しかもしかも、報酬はすべて保険適用っていう、懐にも優しいめちゃめちゃ良心的な!
……ああ、ステキ。
まさに、理想的。
「………………」
っは。
どうりで、待合室に若い患者さんが多いと思ったわ!
そりゃそーよね!
だって、この先生とふたりきりで話ができるんだもの!!
…………。
ま……まぁ……?
看護婦さんも一緒に居るから、正確にはふたりきりじゃないんだけど。
っていうか、アレだっけ。
今は、看護婦さんって言わないんだっけ。
そういえば私、小さいころは『かんごくさん』だと思ってたのよね。
なんだソレって話なんだけど……って、それはどーでもよくて!
それにまぁ……あの、うん。
この待合室っていうかこのフロアは産婦人科のフロアなんだし、そりゃー女性の患者さんが多いのは当然なんだけどさ。
しかーし!
しかしよ、しかし!
だってほら、だからと言っても混みすぎだと思わない? ココ!
だって、駅前にあるおじーちゃん先生の病院はガラガラだったわよ?
だもん、探せば産婦人科だってたくさんあるのになー。
なのに、なんでわざわざみんなでココを選ぶかなぁ。
……まぁいいんだけど。
だ、だって、かくいう私もやっぱり評判とかを聞いて、ここに来たから。
ここの総合病院には、ステキーな先生が、やさしーくていねーに見てくれる! って。
「…………」
ごくり。
大して読んでもない雑誌を目の前まで掲げながら、横目でいろいろと観察してみる。
……ふむ。
私の番は、いよいよ次。
次よ、次!!
……あぁあ、長かったわ……。
8時半から順番待ちして、ようやくこぎつけた現在。
産婦人科の先生はもちろんあの先生以外にもいるんだけど、だからこそ……もしかしたらソッチの先生に当たってしまうこともある。
だけど!
さっきほかの診察室には違う患者さんが入っていったから、今度はあの先生の部屋から真っ先に患者さんが出てくるはずよね!?
となると、やっぱり……どう考えても私じゃない!?
よっし!
よし来た!
やっぱり天は私に味方してくれている……!!
ありがとう、神様!
ありがとう、仏様!
そしてそして、ありがとう! 弁天様!
…………。
……ん?
なんか、ちょっと待って。
弁天様って……なんか違うような。
え?
あの人、別に子宝の神様とかじゃなかったわよね?
……あれ?
じゃあ、なんだっけ。
だ……大黒様?
いや、あの人は確か商売がどーたらとか……あれ? 違ったっけ?
じゃあ、あっち?
恵比寿様?
……むむ。
…………んんん?
「芹沢様ー」
「…………」
「芹沢優菜さまー」
「……っは!! はい! はい!?」
考え込んでいたら、危うく順番を飛ばされてしまうところだった。
あ……あぶなっ!
もうちょっとで、いろんなモノをフイにするところだったわ!
「はい! あ……あはは。すみません」
慌てて立ち上がり、受付のお姉さんのところまで向かう。
すると、くすくす笑いながらも、手のひらを……おおおっ!
彼の診察室のほうへと向けてくれた!
「申し訳ないんですが、藤城医師は緊急で手術に入ってしまいまして……。違う先生でもよろしいですか?」
「え」
にこやかに、さらりさらりと。
こうして私の2時間半に渡るバラ色の待合時間すべてが、藻屑となって爽やかに消え失せたのであった。
……と……とほほぉ……っ……。
彼への道は、どうやらまだまだ険しいようである。
ちゃんちゃん。
というわけで、青さんお誕生日おめでとうございます!!
今年はSSというかたちで、勝手にコラボさせていただいてしまいました……どきどき(汗
私も一度、青さんに見てもらいたいわ(*´▽`*)
これからも、お慕い申しております!
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