今日1日で、本当にいろいろなことがあったとは思う。
 ……でも、旅行に来る前からずっと、期待してたのも本当。
 今までも、途中で終わってしまったたびにどこかで残念だと思っていた。
 祐恭先生に触れられるたびどきどきして、それだけでおかしくなりそうだったけど、でも、もっと先をって思ってもいたんだから。
 帯が畳に落ち、浴衣がはだける。
 仰向けにお布団へ倒され、電気を背にした祐恭先生が顔を覗き込んだ。
 明るいのが、恥ずかしい。
 でも、こういうときに消してほしいって言っていいのかがわからなくて、なされるままに何も言えなかった。
 眼鏡を外した彼を、普段の生活の中で見ることはほとんどない。
 すごく近い距離で本を読んでいるとか、お風呂上がりとか……寝るとき、とか。
 特別な彼がすぐここにいることが、どきどきして嬉しくて、たまらないと思った。
「は……ん、ちゅ……」
 口づけられ、いつもよりどきどきしているせいか、自分の声なのにいつもと違って聞こえる。
 ゆっくりと舌を絡み、吸うように交わる。
 ああ、どうしよう。
 すごくどきどきして、苦しくて……身体が変になりそう。
「……ふ……あ」
 離れた唇が首筋にあてがわれ、同時に胸を包まれた。
「っあぁ……んっ!」
 何かを確かめるかのように這う、大きな手のひら。
 ひんやりした冷気のおかげで汗はかいていないけれど、どこもかしこもが触れられると自分の身体じゃないみたいに、気持ちよくて。
 箇所箇所を撫でられるたびに、ひどくえっちな声が漏れて、すごく恥ずかしかった。
 でも……気持ちいい、んだもん。
 これって、どきどきして苦しいせいなのかな。
「……いけない子だな、本当に
「え? ぁ、ああっ……!」
「そんな声聞かされたら、ちゃんと待ってあげられない」
 耳元で囁かれた言葉の意味がわからなくて、聞き返そうとした瞬間、胸の先端を舐められた。
 点から一気に悦が広がって、いつもより高い声が漏れる。
「っ……! あ、んぁっ……はぁっ」
 ゆっくりと舐め上げられ、ぞくぞくと背中が粟立つ。
 濡れた音が響くせいも、きっとあると思う。
 だけどそれ以上に、彼にこうされている特別感と、何よりもぞくぞくする気持ちよさとで声が勝手に漏れる。
「ん、んっ……!」
 ゆっくりとついばむように刺激され、たまらず身体が震えた。
 つ、と彼の長い指が鎖骨を伝い、浴衣のあわせを広げる。
 そのまま、閉じられた太腿に指が這わされ、こくりと喉が鳴った。
「あ、まっ……!」
「嫌?」
「ぅ、嫌じゃない、ですけど……だって、あの、恥ずかしい……」
「じゃあ俺が先に脱ぐよ」
「えっ、あ、まっ……!」
「今日は待てないって言ったよね?」
「う……」
 ショーツに指先が触れた瞬間、つい首を横に振ると、彼が少しだけ身体を離した。
 離れてしまったのが寂しくて、でも、まさかのセリフにこくりと喉が動く。
「……あ……」
「脱がせたいんだけど……ダメ?」
「うぅ……その言い方、ずるいです……」
「そう? ごめん、自覚ないかな」
 くす、と笑った彼が先に浴衣を脱ぎ、下着だけの姿になった。
 もぅ、そんなふうに聞かれたら、私がyesしか言わなくなるって、知ってるはずなのに。
「っ……!」
「嫌ならしない。……けど、ダメじゃないなら、どうしても欲しい」
「せんせ……」
 身体を重ねるように、彼の身体が上にきたことで明かりが遮られ、影が落ちる。
 と同時に彼自身の固さが当たり、喉が鳴った。
 欲しい。
 それはきっと、私も同じ気持ち。
 初めてで、どうすればいいかまったくわからないけれど……でも、いいんだよね。
 触れられることはもちろん、キスだって知らなかった。
 でも……全部、彼に教わったんだから。
「……ん……」
 ゆっくりと口づけられ、声が漏れる。
 自分の声と、彼の息づかいと、そして濡れた音と。
 何もかもがどきどきする対象で、いつしか身体に入っていた力がすぅっと抜けた。
 初めての人。初めての時間。
 何もかもが特別で、でも、ずっとずっと私だって待ってたの。
 そう。きっと、欲しかった。
 知識としてしか持っていなかった“付き合う”その先を、大好きな彼としたいって考えたのは、一度だけじゃなかった。
「嫌じゃ……ない、です」
「いいの?」
「ん。……やめないで……」
「っ……」
 自分でもびっくりした言葉が出たけど、彼のほうがよっぽど驚いたんだろう。
「んっ……」
 一瞬目を丸くしたのが見えたけど、次の瞬間すごく優しく微笑まれて、こくんと喉が鳴った。
 口づけられたまま、彼の手のひらが身体を這う。
 鎖骨を撫で、胸の膨らみを通り……そして、お腹を通って下着のラインをなぞる。
 もしかしなくても、予告ってことなんだろうな。
 次はここ、って。
 ゆっくりと彼の指が下着をずらしたのがわかり、彼に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、鼓動が大きく鳴った。
「ん……っ、あ、んっ……!」
 そっとショーツが下ろされ、太腿の内側を通った彼の指が、普段自分でも触ることのない茂みの奥を探った。
 濡れた音がして、一瞬何が起きたのかわからなかった。
 でも、すごい……すごい、の。
 恥ずかしいのに、ぞくぞくして声が勝手に漏れてしまうほどの気持ちいい感じが、身体いっぱいに広がる。
「すごいよ……ここ」
「や……そんな……っ言わないで……くださ……っ」
 彼が指を動かすたび、くちゅりと濡れた音が響く。
 恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。
 なのになぜか、彼の声は楽しそうに聞こえた。
「っぁ、や……んっ……! は……ぁっ」
 往復するように秘所を撫でられ、同時に胸を含まれた。
 感じたことのない悦に身体が震え、背中が反る。
「んぁっ! や……だめ、ぇ……んっ……」
「……ダメ? どうして」
「だって……ん……変に、なっちゃ……」
「いいよ、変になって。……ちゃんと、ここにいるから」
「っん……あ、や、んんっ……いじわるっ……」
 ひだをなぞるように指が動き、ひくひくと身体が震える。
 もう、目を開けていられない。
 喘ぐせいでか、それともこれまで感じたことのない悦のせいかはわからないけれど、身体に力が入らなかった。
「ん……ふぁ、あぁっ! もぅ……なんか……あ、あぁ……っ!」
「どうした?」
「……あ、あっ……だ、め……! ……ん、そんな……に、したっ……ら……っ! あ、んんっ!!」
 どうなってしまうのかまではわからないけれど、自分がおかしくなりそうなことはわかる。
 息が上がって、勝手に身体が震える。
 秘所がひくつく。
 だって、だって……そんなにされたら、どうにかなってしまいそうなんだもん。
 腰のあたりがぞくぞくして、勝手に声が漏れて。
 抑えようと思っても止められなくて、口元に手を当てるも、自分じゃないような淫らな声があふれて止められなかった。
「あぁあ、あっ、ああっ……! んぁ、あっ……や……あぁあっ」
 泣きそうな高い声が漏れて、なぜか首が横に振れた。
「!? ひゃあんっ! や……あぁっ、ん……! はぁ……! そ、んっ……ん……! ふ……ぁ!」
「は……かわいいよ」
 ぐい、と両手で足を広げられたかと思いきや、彼が身体を割り込ませた。
 触れられることにも躊躇したのに、それ以上のことを……まさかソコを直接舐められるなんて想像もしなくて、悲鳴にも似た声が漏れた。
 濡れた音が一層響き、がくがくと足が震える。
 ああもう、だめ。ほんとうに、もう……!
「んっ、も、う……だめ……変にっ! あ、あっ、なっちゃ――うっ……んんぁああ!!」
 舌先で舐められ、唇で挟まれ、繰り返し与えられ続けた強すぎる悦に、涙がにじむ。
 今の……なに……?
 いつしか抱きしめていた彼をひときわ強く抱きしめ、身体いっぱいに広がった大きな快感に、身体で息をする。
 今のって……ひょっとして……?
 初めて味わう、強すぎる悦。
 言いようのない快感が身体中を駆け抜け、支配される。
 ……初めての、経験。
 知識としてはあった“ソレ”が頭に浮かび、だけど、予想以上にくったりと身体がだるくて息をするのがやっと。
 それが彼にもわかっているのか、顔を覗き込むと口づけてから笑った。
「気持ちよかった?」
「う…………はい」
 もぅ、こういうときどう言えばいいんだろう。
 ほかにどう言えばいいかわからなくて、情けなくも眉尻を下げたまま小さく頷くしかできない。
 すると、優しく笑った彼は触れるだけの口づけをしてから、耳元へ唇を寄せた。

「もっと、気持ちよくしてあげる」

「っえ……!」
 たっぷりと吐息を混ぜて囁かれ、くすぐったさが先にきてしまい、言葉の意味を理解するのにちょっとだけ時間がかかった。
 どういうことなんだろう。
 というか、今だってあの、あのね、すごく……気持ちよかったの。
 なのに、これ以上なんて……きっと耐えられない。
 もっともっと、みっともないような普段の自分とは違う声が出てしまうんじゃないかと、それがすこし恐かった。
「ぁ……」
 ひたり、と彼の大きな手のひらが頬を包む。
 口づけられ、ラインに沿って手のひらが降りるのがわかり、ひくりと身体が震えた。
「んっ! ……ふ、ぁ、あっ……」
 指先で茂みをかきわけるようにしてから、徐々に徐々にナカへと指が沈む。
 なんだか、すごく……変な感じ。
 自分でもしたことのない行為を当たり前のようにされて、自分よりもよほど私の身体を知っているんじゃないかと不思議な気持ちになる。
「あ……っ! ん……んっ」
 ちゅぷ、という淫らな音が耳に届き、また身体が反応するのがわかる。
 うぅ、もしかしたらわざと音を立てられてるのかな。
 彼の指が動くたび、くちゅくちゅと淫らな音が辺りに響いて、かぁと身体全部が熱くなる。
「……すごいな……素直な身体だね」
「やぁっ、せんせ……言わないで……ぇ」
「気持ちいい?」
「う……恥ずかしいです」
「俺は嬉しいけど」
 耳元で囁かれ、情けなくも眉が下がる。
 と、すぐここにいた彼が、身体を起こした。
「……先生……?」
「ん?」
 少し離れた場所にある、彼のバッグに手を伸ばしたのがわかり、離れてしまったのが切なくてか、同じく身体を起こす。
 すると、バッグの中から小さな何かを取り出した彼が、目の前で封を切った。
 ……なんだろ?
「っ……」
 どうしたんだろうと思った瞬間、躊躇なく下着を下ろされ、彼自身が目に入った。
 慌てて顔をそむけ、漏れてしまいそうだった声を抑えるべく口元に手を当てる。
 うぅ、苦しいくらいどきどきしてる。
 そう……だよね。
 知識としては、あったの。もちろん。
 でも、見たことなんてないし、どうやって付けるかも……わかっていたようで、わかってなかったというか。
「さて、と」
「……ぁ」
 肩に手を置いた彼が、ゆっくりと私をお布団へ横たえた。
 心臓はまだ、ばくばくとうるさい。
 でも、彼の柔らかい表情がすぐここにあって、思わず頬に触れようとしてか手が伸びた。
「痛かったら、言ってね」
「う……は、い」
 手のひらをつかんでくれた彼が、そのまま腕を回すように首元へ導く。
 ちゅ、と音を立てて腕に口づけられ、くすぐったさと驚きとで、小さく声が漏れた。
「あ……ぁ、あっ……」
 初めての経験。
 頭ではわかっていたはずだけど、体験したことがないだけに、このあとどうなるのかがわからないのと、ちょっぴり痛いのとで唇を噛む。
「うぁ、あっ……」
「く……」
 押し広げられるように彼自身が身体の中へ入ってきて、ぴりりと秘所が痛む。
 いろんなことをいう子はいた。
 でも、知らなかったの。
 ひとつになることもそうだけれど、その瞬間の彼の顔も。
「っん、んっ……」
「ゆっくり息を吐いて」
「ん……は……っは……ぁ……」
「……っ……そう、上手だ」
 少しだけ掠れた声が聞こえて、彼が近づく。
 少しずつ、少しずつ。
「んっ……!」
「は……」
 ぐい、とナカに彼自身を感じた瞬間、祐恭先生がこちらへもたれた。
 深く息を吐き、腕で身体を支えている。
「先生……?」
 これまでと違う様子に思わず頬へ手を伸ばすと、小さく笑ってから耳元へ唇を寄せた。
「気持ちいい」
「……っ!」
「っく……」
 掠れた声が聞こえただけでも、ぞくりと身体が反応する。
 なのに、そのまま耳たぶを舐められ、小さく声が漏れた。
 うぅ、恥ずかしい。
 でも……でも、ね。
 “ひとつ”になっているから、わかるの。
 どうして彼が、私と同じように反応してくれたのか。
 繋がってるって、こういうことなんだ。
 どきどきして、でも嬉しくて。
 そしてきっと、彼自身も……どきどきしてくれているといいなと思った。
ぴくん、とこちらの行為に対する反応がすぐに返ってきて、愛しさが強くなる。
「……はぁ」
 濡れた音が響いて、ぐ、と彼の腰がさらに近づいた。
「っ……」
「……痛くない?」
「ん……平気です」
 抱きしめるようにされ、瞬間的に痛みが走る。
 でも、痛くない。
 ずっとずっと、彼とこうなることを望んでいた。
「……すごい……羽織ちゃんの中、ヤバい」
「そう……なんですか?」
「うん。……イきそ」
「っ……」
 直接的な言葉が聞こえて、身体がかぁと熱くなった。
 そういうことを今、してる。
 だけど、その……やっぱりどきどきするんだもん。
 と同時に、ああやっぱり男の人にとっては……ううん、年上だから?
 そのあたりはわからないけれど、でも、そういう言葉が当たり前のように出るのは、男の人だからなのかななんてちょっとだけどきどきもした。
「ッ! あ、あぁっ! ん、んっ!」
 今までと全然違う感じが身体を走って、思わず彼の腕をつかむ。
 痛いのもある。でも、変なの。
 身体の内側から、今まで感じたことのないものがあふれている気がして、自分でも恐かった。
「っく……そんなに……されたら……」
「ん、んっ! あ、せんせ……っん……あぁんっ!」
 今まで聞いたことのないような、苦しげな彼の声が聞こえて、それだけでもぞくぞくして。
 なのに、さっき感じたものと似た感じが身体を走るから、みっともないくらい声が漏れる。
 濡れた音が、大きい。
 さっきと比にならない音があふれて、彼の息づかいが近くて……ああ、どうしよう。
「ふぁ、ああっ……ん、せんせ……ぇ、せんせっ……!」
「く……」
 それこそ、頭の中までいっぱいになるほどの快感。
 揺さぶられながら、同じタイミングで濡れた音が響いて、もう、本当に、おかしくなりそう。
「あぁあっ、だめぇっ……そこ、だめっ……!」
「っ……! く……」
「も、もうっ……あぁっ! い、あ……やぁんっ……!!」
「は……ここがいいんだ?」
「あ、あっ! や、だめ……ぇっ」
 彼がさらに身体を密着させた瞬間、秘所の芯がこすられ、悲鳴にも似た声が漏れた。
 なのに、どうしてか彼の声は楽しげで。
 腰を動かしながら、さらに擦りあげられ、ひときわ高い声が上がる。
「うぁ……っ! あ、や……う、せん、せ……!」
「くっ……!」
「やぁっ! ん、んんんっ……あぁああ!!!」
「……羽織……っ!」
 さっきよりも、もっとずっと強い快感が身体を走って、びりびりと肌が震える。
 瞬間、さらに強く腰を密着され、自分の中で彼自身がどくどくと脈打つのもわかった。
 唇を噛み締め、声が漏れてしまわないように手の甲を当てる。
 こうしてないと、本当に……もう、すごい声が出そうなんだもん。
「んっ!」
「平気?」
「……じゃないです……」
 身体が離れたとき、強すぎる悦に思わず首を振っていた。
 痛いくらいの、快感って……大きくて、ちょっと恐い。
 勝手に身体が震えて、すごく疲れて……もう、重たくてたまらない。
「……かわいい」
「っ……もぉ……恥ずかしいです」
「そういう顔も、いいね」
「うぅ……」
 ちゅ、と頬へ口づけられたあと、すぐそばで笑われた。
 優しい顔だけど、なんだかちょっと素直に喜べない気がするのはどうしてだろう。
「ひゃあ!?」
「ごめん、痛かった?」
「そ、じゃなくっ……や、あの、平気っ。自分でできます!」
「そう? 遠慮しなくていいのに」
「んぁ、やっ……平気……っ」
 くたりと身体を横たえていたら、彼がティッシュで拭ってくれようとしたらしく、冷めたはずの身体がまた昂りそうになって、慌てて身体を起こす。
 うぅ、びっくりした。
 でも……なんだろう、すごく疲れた。
 え、えっちするのにも、体力使うのかな。
 だとしたら、ものすごい疲労感すぎて……大変。
「…………」
「ん?」
「えっと……っ、あ」
 何も身につけてなかったのに気づき、手近にあった浴衣を胸元へ引き寄せる。
 今さらだとは思うけれど、でも、あの、やっぱり恥ずかしいし。
 って、そうじゃなくて。
 処理をしたらしい彼も、同じように浴衣を引き寄せたのを見てから改めて見つめると、小さく笑いが漏れた。
「……大好き」
 ぽつりとした言葉は、ひとりごとのようにも聞こえた。
 そうなの。大好きなの。
 そんな彼とひとつになることができて、夢みたいだけど……夢じゃない。
 だから、たまらなく嬉しい。
「俺もだよ」
 柔らかく笑って、大きな手のひらが頬を引き寄せる。
 あったかい手のひら。
 長い指。
 何もかも、躊躇なく私に触れてくれる特別なもの。
「…………」
「え?」
「いや、別に?」
「なんですか?」
「かわいいなと思って」
「……何か隠してません?」
「隠してないよ」
 まじまじと身体を見つめられ、不思議というよりはなんだろうという疑問だったのに、彼はにっこり笑って首を振るだけ。
 ……気になる。
 でも、これ以上聞いたところで教えてはもらえないはず。
「……はあ……」
「疲れたでしょ」
「はい……」
 腕で引き寄せられ、素肌が触れる。
 あったかくて、すべすべしてて気持ちいい。
 肌で触れることなんて、きっと小さいころ以来なんじゃないかな。
 スキンシップ、まさにそれ。
 ああ、こんなに特別な気持ちになるんだ。
「おやすみ」
「ん……」
 彼の腕に抱かれたまま、もうほとんど目が開かなかった。
 だって、気持ちいいんだもん。
 ただ、頬へ口づけられたときだけは、重たいまぶたを開くことができた。
 すぐ目の前で優しく笑う彼がいて、もう、本当に嬉しくて、浮かべた笑顔は子どもみたいだったんじゃないかなって思う。


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