「……じゃあ、俺が寝かせてあげるよ」
「ん……」
 ぎゅっと彼の首に手を回し、求めるように小さくうなずく。
 離してほしくない。
 ……ずっと。
 もう、ずっと長い間こうして触れてほしかった。
「……ぁ」
 パジャマの上から胸に触れられ、同時に首筋へ唇が寄る。
 それだけで、ぞくぞくと快感が走った。
「っ……んっ!」
「……なんで、もうこんなになってるの?」
「やぁ……だっ。いじわる……」
「ひとりでいろいろ考えてたんでしょ。……やらしいな」
「……だって、先生が意地悪するから……!」
「俺は何もしてないよ? あれは、羽織ちゃんが見たがったんでしょ?」
「そんな……ぁっ。んっ、んっ……」
 声だけで私の反応を感じ取ったのか、彼が躊躇なく下着の中へと手を滑り込ませた。
 秘所に感じる、指先。
 撫でるように触れられ、びくびくと身体が震える。
「……ぁ、あっ……んっ」
 わずかに触れられた場所から、新しい快感が生まれる。
 彼の言葉で、身体がすぐに反応する。
 ……もぅ、なんだか変。
 今の自分は、自分じゃない別の人みたいだ。
「ずいぶん、敏感だね。いつもよりもずっと、スゴい」
「だって……なんか……。変なんだもん……っ」
「へぇ。羽織ちゃんもアレを見て感じてた証拠だね」
「やぁっ……! そんな……ことっ」
「あるでしょ? ほら……」
「っ……ぁあん!」
 つ、と彼が敏感な場所に指を滑らすと同時に、たまらず身がよじれた。
 だけど、それ以上に快感があって。
 言葉とは裏腹に、身体はどんどん要求していく。
 恥ずかしい。でも、やめてほしくない。
 彼に触れられるたびに身体がどんどん敏感になっているようで、そう思うといっそう悦が広がる気がする。
 ……もぅ、先生のせいなんだから。
 片手で簡単にボタンを外されて胸が露わになると、少しだけひんやりした空気に晒されて、ぞくりと背中が震えた。
「んっ……! ふぁっ……あ……」
 じかに肌へ触れられた途端。
 いつもより高く、声があがった。
「……あ……ぁあっ、ん……!」
 いつもは、こんなことないのに。
 胸を揉まれながら舌を這わされ、ぞくぞくと身体が悦のせいで火照り始める。
 だけど、彼が唇を離したことで、濡れた場所が夜の空気に触れて、ひんやりとした妙な快感を覚えた。
「ゃあん……!」
 胸の先端を舐め上げられ、ぞくぞくと快感が走る。
 何度も繰り返すように、含まれて。
 そのたびに、あたりへ響く、濡れた音。
 ……そして、自分の声。
 それだけでもう、おかしくなってしまいそうだった。
「んっ! や……ぁ」
 目をぎゅっと閉じていると、彼が器用にズボンと下着を一緒に脱がせた。
 慌てて押さえるべく両手を出すも、両手首を簡単に片手でまとめられ、頭の上へやられてしまう。
 ――……と。
「っ!? な、なんでっ……!」
「見えないでしょ? 真っ暗じゃ」
「やっ……消してください!」
 いきなり、彼が間接照明をつけた。
 ぼんやりとしたオレンジの淡い光に、彼の姿が浮かぶ。
 それだけじゃない。
 当然、露わになっている自分の素肌もばっちりと目に入った。
「……いじわるっ……」
 恥ずかしさのあまり涙が滲み、唇を少しだけ噛んでから眉を寄せると、満足げに微笑んだ彼が手を這わせた。
「きれいだよ」
「っ……」
 すごく恥ずかしかった。
 だけど、思いとは裏腹に身体は反応してしまう。
 もぅ……やだぁ。
「あっ……! んぁっ」
 先ほどと同じように、彼がもう1度胸に舌を這わせた。
 器用に、片手で両手首を掴んだままで。
 空いた手は太腿を優しく通って、濡れきっているそこへ。
 音が耳から入り、与えられる快感に翻弄される。
 ……あまりにも気持ちよくて、どうにかなってしまいそうだった。
 ゆるゆると指先だけを沈められ、もどかしい気持ちでいっぱいになる。
 私の反応を見ながら、彼がわざとしていることは、わかるけれど……。
「ん……いじわる……」
「……どうして?」
「っ……もぅ」
 また言わせる気なのかな、やっぱり。
 あの言葉を――……私に。
 だけど、今はもう躊躇っている余裕がなくて。
 それくらい、身体も思いもいっぱいいっぱいで。
「ちゃんと……して……」
 ぽつりと呟くと、満足そうに微笑んでから軽く瞳を細めた。
「っ! あぁっ……!!」
 途端に、指が奥へと差し込まれ、そのまま敏感な場所を探り当てて何度もそこを刺激する。
「あっ、やっ……、やぁっ……!」
 身体から力が抜け、彼にされるがままになりながらも、軽く首を振って意思を示す。
 だけど、そんなことはまったく考慮されることなく、何度も刺激を送り込まれた。
「っふ……ぁっ……んん!」
 恥ずかしさと快感とで、身体がどんどんある方向に向かい始める。
 あの、押し寄せてくる……強い快感の波に向って。
「んっ、も……だめぇっ!!」
 ふっと力が抜けると同時に、彼の指を飲み込んだままで身体が奥から震えた。
 強い、快感。
 恐いくらいの波が押し寄せてくる。
「あっ、やっ……ひゃんっ」
 きゅ、と足を閉じようとするが、彼の腕が邪魔をした。
 しばらく経ってゆっくりと息が落ち着き始めたころ、彼が指を抜き取る。
「……すごいな」
 つ、と指先から落ちるしずく。
 わざと目の前で指を動かし、見えるようにされる。
「やぁっ! もぉ……やだぁ」
 懇願するように彼を見ると、意地悪な笑みをしてそれを舐めた。
「っ……」
 私から視線を外さないままで。
 ……意地悪。
 勝手に動いてそう呟いた唇を見逃さなかった彼が、すぅっと瞳を細める。
「っん!」
 両手が自由になったかと思うと、彼がそのまま膝を割るようにして手を添えた。
 彼が何をしようとしているのか。
 それがわかったから、必死に抵抗する――……けれど。
「やぁんっ!!」
 彼の力に敵うはずもなく、あっさりと舌で含まれた。
 軽くついばまれ、歯で甘噛みされ、そのたびにびくびくと自分の意思に反して足が震える。
 絶頂を迎えたばかりのそこはあまりにも敏感で、彼の刺激が痛いくらいだった。
「やっ、あ……んっ、んっ……!」
 花芽を舐めた舌が、わずかに下がる。
 ……な……。や、だっ!
「やぁっ……!!」
 彼の舌が、中に入ってきた。
 今までなかっただけに、身体が余計に反応する。
 柔らかな感触。
 指とは違って、あまりにも優しくて。柔らかくて。
「はぁっ……も……やだぁ……」
「……すごい。熱くて……溶けそう」
 ナカから感触が消えると、瞳を細めた彼が私を見ているのに気付いた。
 濡れた唇を舐め上げる姿に、ぞくりと背中が粟立つ。
 ぐいっと親指で口角を拭った彼は、にやりとした笑みを浮かべた。
「DVDなんかより、ずっとだろ?」
「っ……な……。み、見てなかったんじゃ……!」
「見ないわけないだろ。目の前で流れてるんだから」
「でもっ! あのとき、先生……本読んで……」
「ああでもしないと、あのまま襲いそうだったからね。……ときには我慢も必要なんだよ」
 くすっと笑った彼が、ベッドの引き出しから小さな袋を取り出す。
「……さて。同じようにしてあげようか?」
「なっ……!」
 にやにやと笑いながらこちらにくると、彼が口づけた。
 熱い、舌。
 優しくて、とろけてしまいそうな口づけ。
 溢れそうな唾液が、より絡んでくる。
 何度も繰り返されたあとで小さく息をついた彼は、躊躇なく私の両足を手にした。
 途端、瞳が丸くなる。
「ほ……んとに……!?」
「せっかく、絵里ちゃんから誕生日プレゼントにもらったんだしね」
「やっ……! だって、もう誕生日は過ぎて――」
「じゃあ、復習」
「だってっ!! っきゃ……!」
 言い終わる前に彼が両足を肩にかけると、そのまま顔を近づけた。
 ……あぁもう、すごい格好……。
 恥ずかしさのあまり、彼から顔を背ける。
 すると、耳元に舌を這わせた。
「ふぁ……」
 途端に身体から力が抜ける。
 ――……と。
「やぁんっ!」
 彼がいきなり入ってきた。
 いつもと全然違う……。
 ……知らないっ、こんなの。
「あっ、んっ、……んっ!」
 いつもよりずっと奥まで。
 そして、1番敏感な場所をしっかりと擦りながら。
「はぁっ、は……ん……! もぉ……やだぁ」
「くっ……すご……」
 苦しそうな顔を見せて動くたびに、新たな快感が迫ってくる。
「はぁ……んんっ」
 ぞくりと快感が背中を走るたび、目の前の彼が眉をしかめた。
 その表情はあまりにも艶っぽくて。
 表情にすら、ぞくぞくと甘い痺れを感じる。
「っく……」
「あっ、やっ……んぁっ……!!」
 途端に動きが早くなり、ぐいぐいと奥まで刺激される。
 と同時にふたりの交じる音が淫らに部屋へ響いた。
 ベッドのきしむ音、ふたりの荒い呼吸……そして、身体がぶつかる音。
 ……私の声。
「やっ、も……んっ、……はあっ、あんっ!」
「……っ……そんな締め付けたらッ」
「あっ、あっ……! んっ、も……イっちゃう……っ」
 ぎゅっと彼にしがみつくように手を回すと、さらに呼吸が荒くなる。
 耳元に響く彼の苦しそうな声と、荒い吐息。
 それだけで、もう……おかしくなりそう。
「んっ、あっ……はぁっ、うぁ……んっ、あぁぁ……ん!!」
「く……羽織……!」
 彼の甘い声で呼ばれた名前。
 達する直前に聞くことができて、幸せだと思った。
「あぁあっ……!!」
 中に感じる、新たな熱。
 自分の意思に反してびくびくと痙攣するそこが、すごくイヤラシくて。
 しばらく彼の顔を見れないでいた。
「……はぁ。……相変わらず、すごいな」
「……もぅ……! 先生っ……いじわる」
「どうして?」
「だって……あんな格好させて……」
「……気持ちよかったでしょ?」
「っ……!」
 にやっとした笑みを向けられ、思わず頬が赤くなる。
 そ、それは……。
「……ぅん」
 視線を外して小さく小さくうなずくと、彼が微笑んでから頬に口づた。
「……たまには、羽織ちゃんにあのDVDを見せるのもいいかもね」
「なっ……! そ、そんなのやだっ!」
「貰っちゃえば?」
「返しますっ!」
 いたずらっぽい笑みを浮かべた彼に慌てて首を振ると、前髪をかき上げるようにして額に触れてきた。
「……すごく、かわいかった」
「っ……そんなこと……ないもん」
 眉を寄せて睨むようにするものの、彼は楽しそうに笑ったまま。
 ……恥ずかしい。
 でも、その笑顔が私だけに向けられていると思うと、胸の奥がじんとなる。
「これでもう寝れるでしょ?」
「……うん」
「はは。よかったね」
 あっさりうなずいた私を笑うと、彼がぎゅっと抱きしめてくれた。
 伝わってくる、温かさ。
 そして、少し早い鼓動。
「……おやすみ」
「ん……。おやすみなさい」
 ……。
 …………。
 ……はっ。
 おやすみはいいけど……あの、結局、裸のままで寝ることになっちゃった……んですけど。
 でも、まぁ……いいかな。
 先ほどとは打って変わって、ものすごくだるくて……眠たくて。
 いつの間にか、彼に抱きしめられたままで眠ってしまっていた。
 ――……明日の朝、どうしようなんてことも考えずに。
 でも、あのビデオはちゃんと絵里に返すんだから!
 持ってても困るし。
 また、こうやって先生にいじめられても困るから。
 ……それが1番の理由だったんだけどね。


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