「んんっ……! ぁ……やぁ」
 茂みをかきわけ、さぐりあてた敏感な部分に指を往復し始める。
 途端に、ぞくりとした快感が広がり、たまらず声が漏れた。
 泡とは違うぬめり。
 妙にまとわりついて、離れてくれない。
「……相変わらず、敏感だね」
「っ……だっ……て、ぇ」
 耳元で楽しそうに笑う彼を軽く睨むように眉を寄せるも、秘部を撫でられて情けない声が漏れる。
「ひぁっ……ん」
「……よっぽどこっちのほうが濡れてるじゃないか。やらしいな」
「せ、んっ……せいが……やらしいんだもんっ」
「羽織ちゃんがそうさせるんだよ」
「……くぅっ……ん」
 途端、指の動きを変え、明らかにそこを刺激し始める。
 たまらず彼の首に腕を絡めて首を振ると、楽しそうに囁いた。
「羽織ちゃんの『やだ』っていうのは、信用できないってことがよくわかったから」
「……なっ! ん、んんっ……! あ、も……っ……んぅ」
 驚いて彼を見ると、かなり意地悪い顔をしていた。
 それだけじゃない。
 なぜかとても楽しそうで、私を見下ろして薄く笑う。
「あ、あっ……!」
 びくびくと、無意識に足が震える。
 強い刺激にたまらず瞳を閉じると、彼が耳元へ唇を寄せた。
「あ、や……ぁっ」
「『いや』ってのは『いい』ってことだろ……? もっと正直になりなさい」
「ちがぅっ……ん……ぁ、や、も、っ……んぁああぁっ!!」
 身体に力がこもると同時に迎える、快感の絶頂。
 小さく声を漏らしながら彼にしがみつくと、ゆっくりそこを愛撫し始めた。
「やぁんっ、も……っだめぇ……」
 達したばかりのそこはあまりにも敏感になりすぎていて、優しく触れられただけでも痛いくらいの刺激が伝わってきた。
 びくびくと、自分の意思とは無関係に反応する身体。
 それを満足そうに眺めると、彼がシャワーを手にして泡を流し始めた。
 ぬるいシャワーが、火照った身体に心地いい。
 瞳を閉じてそれを甘んじていると、キュッという音とともにやむ。
「さて、と」
「ひゃぁっ……!」
 彼がゆっくりと秘部をなぞり、指を沈める。
 途端に、シャワーの水音とは違う淫らな音が響いた。
「ん、ん……っ」
 すぐそこで聞こえる音にたまらず顔を逸らすと、彼が指を増やしてナカを責め始めた。
「あ、あ、やぁっ……ん」
「こんなに濡らすから悪いんだろ? ……自分の身体に責任持ちなさい」
「だっ……てぇ……っくぁっ、やっ……!」
 くちゅくちゅとわざと音を立てるように指を動かしながら、敏感な部分を指で撫でる。
 いちいち反応してしまう私を彼が見逃してくれるはずもなく、そのまま責めるように指をかき動かされた。
「やっ、あぁっ……ん……も、やだぁ」
「やだ、じゃなくてイイんだろ? ……正直に言って」
「……う……気持ちいいっ、けどっ……」
「けど?」
「……も……ぅ、はぁっ、や……だぁっ」
「……しょうがないなぁ」
 小さくいやいやをしてみせると、彼がそっと指を抜き取って舐めた。
 ……なんていう顔をしてるんですか。
 あまりにも意地悪く笑われて彼を睨むと、小さく笑ってから私を組み敷くようにして、顔を寄せた。
「……じゃあ、行こうか」
「…………ん……」
 この瞬間の彼は、いつもすごく楽しそうなんだよね。
 私の反応を見るように、いつもわざと聞いてくる。
 そして、毎回のように……こうして彼は顔が見える位置にいた。
「! んぁっ、ぅ……!」
「……っは……」
 一気に彼がナカへ入ってきて、たまらず声が漏れた。
 どくどくと脈打つのがわかるのは、確かに嬉しくもある。
 だけど、彼が動き出すとすぐに翻弄されてしまうから、すごく悔しい。
「あっ……んっん……!」
 ゆっくりと彼が動き出し、最奥まで突かれた。
 角度を時おり変えながら刺激され、肘を折って顔を近づけた彼へすがるように腕を回す。
「……! んっ、も……ぅっ……!」
「……いいよ……気持ちよくなって」
「んっ、んっ……あ、や、やぁ……っんんん!」
 彼の声で達したというのも、あると思う。
 びくびくと彼を自身が飲み込み、ひくつく。
 ……うぅ、やらしい。
 我ながら、この瞬間は何度経験しても慣れない。
 彼によって得た快感で、彼に悦の表情をさせる。
 ……それはまぁ……嫌いじゃないんだけど。
「ふぁっ……!」
 少し経って呼吸を落ち着けると、再び彼が動き出した。
 思考がうまく働かない。
 2度も味わった強い快感によって、身体が溶けてしまいそうだった。
 力が入らない状態で与えられる、さらなる快感。
 がくがくと震える足に彼の身体が当たり、少し違う感じを覚える。
「……はぁっん!」
「すごいな……。いつにも増して……」
「先生もっ……気持ちよくなって……」
「……もう十分。ヤバいくらい」
 薄く笑みを浮かべ、眉を寄せて苦しげな表情を見せる彼。
 この顔は普段じゃ絶対見れないから、今の自分はかなり幸せだと思えた。
 でも、笑みを浮かべられる余裕なんてあるはずもなく、意識を失わないように必死に耐えるだけ。
 これでもう1回なんてなったら……困るっ。
 だけど――……。
「えっ……!?」
 くるん、と体勢を変えられ、後ろ向きに彼から責められる格好になった。
「あ、や、やぁっ……!」
 両手両足をついて、彼に後ろからぐいぐいと押さえつけられる格好。
 体勢が変わったせいかまた奥まで届き、ぎゅうっと胎内が彼を締めつけるのがわかる。
「やぁっん……! も、ぅっ!」
「はぁ……っ」
 苦しげに息を漏らしながら背中に唇を這わせ、胸を揉みしだかれる。
 ……こんな格好って……!
 少し身体の角度が変わった瞬間、彼が弱い部分を撫で上げるように指で責め、また――……ぞくぞくと身体の中で悦が高まるのを感じた。
「んっん……! も……っやぁあぁああ!!」
「……く……羽織ッ……!」
 強く彼が突いた瞬間、3度目の快感を得ることになった。
 背中に温かい感触が走り、それと同時に秘部がひくつく。
 力が入らずそのまま座り込むと、顔を横に向かせて彼が唇を落とした。
「ん……ん……ぅ」
 溢れそうな唾液。
 熱い、口内。
 舌で吸い取られるようにされる口づけは、すぐにとろけてしまいそうで。
 ふわふわとハッキリしない頭でそんなことを考えていたら、彼がシャワーのコックをひねって背中を流してくれながら苦笑を漏らした。
「……大丈夫?」
「…………あんまり……」
 ぽつりと呟いた自分の声が、かすれていた。
 ……うぅ。まさかの展開に、頭がついていけない。
 ぺたん、と座ったまま彼にシャワーで身体を流してもらう間、ずっと動けなかった。
「……っひゃ!?」
 いきなりビニールマットから抱え上げられ、そのまま湯船に浸かる。
 広めの丸い湯船。
 彼に抱きかかえられたままの形でも、十分入ることができる。
 ……でも、身体に力が入らなくて……彼から、離れられないんだけど。
「……羽織ちゃんがかわいく誘うから」
「…………誘ってないもん」
 くすくす笑いながら抱きしめられ、自然と瞼が閉じそうになる。
 ……なんだかもう、身体全部がだるくて。
 かなり、いっぱいいっぱい。
「……あんな格好するし」
「っ……! あれは、先生が……!」
 いきなり聞こえた声で、閉じかけた瞼がもう1度開く。
 もーー!
 恥ずかしくて、すごく困る。
 いったい、どういう顔をすればいいんだろう。
 眉を寄せてから、せめて顔だけでも逸らそうと首をひねると、小さく笑って、ちゅ、と頬に唇を寄せられた。
「……かわいかったんだから、しょーがないだろ?」
「……でも……」
 やっぱり恥ずかしい。
 …………。
 ……って、もしかして。
 あの服を着たから、これだけいじめられた……の?
「……あの服着たから……あんな格好させたんですか?」
「あんな格好?」
 聞き返した彼に小さくうなずくと、しばらくしてから笑い声が聞こえた。
 ……うぅ。
 楽しそうな顔して。
 私は、とっても恥ずかしかったのに。
「イヤだった?」
「だ、だって! あんな……なんか……犬みたい」
「あれはあれで、結構いい眺めなんだけど」
 背中を手で撫でながら、彼がまんざらでもない顔で笑った。
 ……私はちっともよくないのに。
「でも、やだ……」
「だけど、してくれたじゃない」
「……だって……」
 やっぱり、彼が望むことにはこたえたいという気持ちがある。
 だからこそ、つい強くは出れないわけで。
「なんていうか、こー……無性に」
「……無性に?」
「うん。まぁ、羽織ちゃんが言う通り、あのナース服のせいかもしれないけど」
「えぇ……?」
 満足げに笑われ、思わず口が開いた。
 ……もぉ。
 私はどんな反応すればいいんですか。
「……でも、先生。どうしてああいう服を着せたがるんですか?」
「ん? だって、部屋にあったし」
「だ、だけどっ! ほら、前の……エプロンもそうだし……」
 小さく俯いて続けると、彼がにやっと笑った。
 ……うう。
 ぼ、墓穴を掘った気がするのはどうしてだろう。
「あー、あれね。またやってもらおうか」
「っ! や、やですよっ!」
 ぶんぶんと首を振ると、おかしそうに笑われてまた唇が尖った。
 うー。
 冗談なのか本気なのか、区別がつかないから困るのに。
「かわいい、って想像がつくから」
「……え……?」
 ぽつりと彼が漏らした言葉に、瞳が丸くなった。
「だから。これを羽織ちゃんが着たらかわいいだろうなーって思うから、着てほしくなるの」
「……そんなぁ」
「何? その答えじゃ満足できないわけ?」
「だ、だって……」
 いたずらっぽく笑った彼が、髪を撫でた。
 でも、恥ずかしいんです。ああいう格好は。
 だって、いわゆる……コスプレ、なんだもん。
「しょうがないだろ? 照れて、困った顔を見るのが楽しいんだから」
「……いじわる」
「誰かさんが、かわいすぎるから」
 ちゅ、と頬にキスをしながら抱きしめられ、思わず口をつぐむ。
 ……うー、こうされたら何も言えなくなるの知ってるはずなのに。
 でも、やっぱり嬉しい……から、顔は緩みっぱなしなんだけど。
 だって、表情とは裏腹に、彼がものすごく優しい目をしてたから。
「何? 俺に、そういう趣味があるとでも思った?」
「……ぅ……」
 思わず小さく呻くと、彼が瞳を細めて顔を覗きこんだ。
 漏れた本音をそのまま受け取ったらしく、冷や汗がたらりと背中を伝った気がする。
「ふぅん。……そうなんだ。俺が、ね。へぇー。そんなふうに考えてたワケ?」
「ち、ちがっ……ぅ」
「いいよ? 別に。なんて思われようと。それじゃあ、今度は何着てもらおうかな」
「や、やだぁっ! 違うのっ! そんなこと思ってません!!」
「じゃあ、何? 今ここでもう1回食べられたいなー、ってアピール?」
「っ……! も、もう無理っ!」
 慌てて首と手を振ると、おかしそうに笑ってから髪を撫でた。
 こういうふうに笑う顔はすごく優しいのに、どうしてあんなに意地悪な顔をするんだろう。
 やっぱり、不思議だ。
「じゃ、そろそろ出るか」
「……うん」
 抱き上げられる形で立たせてもらい、掛けておいたタオルをまとってから、ドアに向かう。
 ……なんか、ラブホって感じだなぁ。
 ドアを開けるとすぐ鏡があって、結構やらしい。
 上気した頬、濡れたままの髪、まだ震えの残る身体。
 思わず鏡から視線を逸らしてから、身体を拭いて服を着る。
「あれ? もうナースは着ないの?」
「着ません!」
 すると、同じように髪を拭いていた彼がいたずらっぽく笑って鏡越しに瞳を合わせてきた。
 そんな彼を軽く睨む――……も、おかしそうに笑われてしまう。
「なんだ、残念。もう1回イケるくらいの時間は余ってるんだけど」
「っ……えっち!」
「冗談だよ」
 くすっと笑った彼を見てから部屋に戻り、ソファにもたれる。
 ……うー。
 やっぱり彼が言う『冗談』は、イマイチどこまでが本気なのかわからない。
 ……だから、危ないんだけどね。
 ――……結局、ソファにもたれたまま少しの時間うとうとしてしまったらしく、起こされたときはそれから2時間ほど経ってからだった。
 ラブホ初体験のこの日。
 『どうせなら泊まってく?』と彼がいたずらっぽく囁いたのは、言うまでもない。


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