じきにわかる。
 そう自分で思ったのは、多分、そうなるとわかっていたからなんだろう。
「…………」
 空いている手を、自分の枕へ伸ばす。
 冬の空気にさらされっぱなしのソレは、あたたかな彼女とは大違い。
 指先で少し触れただけですぐに、冷たさでなんとも言えなくなる。
 だが、そんな枕の下へと手を入れると……なんとなく落ち着くのはなぜだろうか。
 ある種のクセみたいなモンだが、こうしてると――……不思議に心地いい。
 ぴったりとした密着感がそうさせるのか、はたまた……この材質なのか。
 理由はわからないが……まぁいいか。
 …………今は、そんなことが目的じゃないんだから。
「…………」
 枕の下に入れた手で、あるモノを探る。
 ……そういや、よく映画とかだと……銃が出てくるんだよな。こういう場所から。
 ありえないことながらも、ふと頭に浮かぶ。
 ――……と。
 指先に当たった感触で、思わず瞳が閉じた。
「…………」
 無言のままそれをつまみ、音を立てないように引っ張り出す。
 ……もちろん、コレが何かなんてことは当然わかっていて。
 だからこそ――……自分に呆れるため息しか出てこないんだよ。
「…………はー……」
 ぴっ、という小さな音とともにそれを取り出し、ベッドへ仰向けになる。
 ……情けない。
 いや、それ以上に――……馬鹿としか言えないかもな。
 それをつまんだまま腕を伸ばして、ゆっくりと瞳を開ける。
「……はー……ぁ」
 すると、瞳に入った瞬間やっぱりため息が漏れた。

「……慣れないこと、するもんじゃないな」

 自嘲気味に呟いた言葉とは裏腹に、顔には苦笑が浮かぶ。
 俺が取り出した、それ。……というのは……――かわいい彼女が微笑んでいる、1枚の写真だった。
「……はぁああ……」
 こつ、と写真を掴んだまま額に手の甲を当てると、それはそれは深い大きなため息が漏れた。
 ……だけど、これは当然の反応だろう。
 自分がやった、馬鹿なこと。
 そのせいで、自分が苦しんだんだから。
 言うなれば『自業自得』か。
 …………でもな。
 誰だって、まさかこんなことになるなんて思わないだろうから、俺だって被害者だと思うんだけど。
「……よかった」
 写真を棚に置いてから隣を見ると、彼女がまだ安らかな寝息を立てていた。
 かわいい顔の、彼女。
 愛しくてたまらない、彼女。

 夢。
 今の今まで俺が向き合っていた彼女は、まさに。

 そうはっきりと決着がついたにもかかわらず、コレほど晴れない気分なのは――……まぁ、単純な理由で。
 ……ああ。
 いったいどうしてこんなことになったんだろうか。


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