きっと、今、とても怒ってるんだろうな。

凄く、嫉妬してる。

いろいろなことに。彼女を巻き込む、すべてのことに。

 

昨夜、自嘲気味に笑んだ俺が気付いたのは彼女への思慕。

 

この俺が、一人の高校生に振り回されることだけでも不愉快極まりないっていうのに、こいつは俺を振り回すだけ振り回して、他の男を作ってたんだ。

誰が怒らないでいられるか。

 

「…立って」

 

怒ってるヤツに対して、立って、と命令する真姫の神経が信じられないので、立たなかった。

 

「いーから立って!」

「……」

 

それでもなお強気な真姫は、俺の手を取って立つように促してきた。

はっきり言って言う事なんてききたくなかった、ききたくなかったが、…しょうがなく立つことにする。

 

「…なっ!」

 

ぎゅぅっと抱きしめられた。

と、いうか、身長差があるため、抱きつかれた、という表現の方が合うかもしれない。

真正面から抱きつかれて、真姫は俺の胸に顔を埋めてる。

白い首筋が、ちろりと見えると心臓が高鳴り、「ヤツ」が体の奧で蠢いているのが解った。

 

「……離せよ」

「やだ」

「離せって」

「…いーーやーーだーー」

「おまえは子供か」

「うるさい!」

「…俺を怒らせる前に、離れろ」

「絶対に、離れない!!」

 

ぷち。

きたね、こーりゃもう完全に。

悪いけど、優しくする配慮なんて、ないからな?

 

「───じゃ、なにがあっても文句言うなよ」

 

狂気が顔を覗かせる。

獲物を腕の中に閉じこめた「獣」が、嬉しそうに舌なめずりをしながら強引に彼女の顔を上に上げ、唇を奪った。

 

「…ん、んぅっ…!!」

 

いきなりのキスに驚いたのか、彼女は手足をばたばたさせながら抵抗を試みるが、しばらく俺のキスを大人しく受けていた後、力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。

 

「はぁ…」

「…悪いけど、俺を弄んだ罪は重いぜ?」

 

座り込んだ真姫の耳元に唇を寄せると、彼女の返答を聞かずに抱き上げた。

それから診察台の上に寝かせる。

 

「稔、さん…?」

「今更怯えた羊になるわけ?」

「…え?」

「悪いけど、優しくする余裕なんてないから覚悟しとけよ」

「ま、待っ───」

「待たねぇ」

 

押さえつけるように唇を合わせ、無理矢理口をこじ開けさせると、舌をねじ込んだ。

甘い唾液に溶け込むように舌を絡ませてやると、真姫の体が気持ち良いと反応する。可愛くない本人よりも、しっかり体に聞いてやった方が良かったらしい。

何度も何度も角度を変えてキスをして、可愛くない言葉を舐め取ってやった。

 

「…っはぁ…、ん、…」

「……」

 

上から見下ろしても、艶っぽい瞳に引き込まれそうになっていた。

ここ最近本気で女を抱いたことがないから、余計に興奮するというか、今すぐにでも犯してやりたい衝動が渦巻いている。

 

「みの、る…?」

 

狂気にかられて、酷い衝動を抱えている俺の下で、真姫は「もっと」と強請るような顔をする。

 

「…おまえ、俺の名前なんてどうでも良いから、少しは抵抗したらどうなの?」

「……いやじゃ、ない…」

「嫌じゃないったって、彼氏いるんだろ?」

「いない、もん…っ」

 

ふに、と発育の良い胸をゆっくりと揉みし抱くと、彼女の体がビクビクと震えた。

 

「へー。嘘付くんだ、真姫は」

「嘘、じゃ…」

「ない、なんて言わせない」

 

今度は、胸を揉みながら片手で湿ったショーツに手をかけた。

今日は都合のいいことに彼女の私服がスカートだから、今すぐにでも犯れるだろうな。

 

「……ひゃ、あ、ああっ!!」

 

つぷつぷ、と水音を立てて指を突き立てると体が大きく弓なった。

その姿を見ると、もっと啼かせたくなる。

 

「なに、おまえ、こうやって彼氏に抱かれてんだ?」

「ち、ちが…っ」

 

間髪入れずに指を出し入れすると、真姫の体が波のように体を震わせた。

入れると大きく弓なり、抜こうとすると小さく震える。その光景が、背徳的で俺の興奮を誘った。

 

「………おねが、い…。信じてぇ…っ」

「…へぇ、じゃぁ、このまま俺に抱かれても良いっていうのか?」

「う、ん…」

「…………」

 

泣きそうになりながら俺を乞う姿が意地らしくて、先ほどまであった「狂気」が一瞬にして収まった。

 

「……」

 

我慢しながら、快感の海を漂っている真姫が心の底から愛しい。

瞳をうるうるさせながら俺を待つ姿。

良いところを愛撫されて、弓なったときの恍惚な表情。

全てが愛しかった。

 

「……くっそ」

 

一人悪態を付きながら、猛り狂ってる自分自身に避妊具を装着させると、真姫を抱え込みながら一気に貫いた。

 

「…っ、ぁあああああっ!!!!」

「ま、きぃ…っ」

 

きつく締め上げられて、すぐにでも達してしまいそうなのをしっかりと押さえる。

自然に背中に回された真姫の手が、俺にしがみついてくる。

なにが起きているのか、俺も考えることが出来ない。今までは違う「衝動」に駆られるまま、愛しさを心に抱いたまま、声音が優しくなっていた。

 

「……真姫…」

「ん、ぅ…っ」

「動く、ぞ」

「……ん」

 

ゆっくりと、注挿する。

その度に背中に食い込む爪の力も強くなった。

 

「…ま、き…っ、くぁっ……、俺に、しろ、よ」

「…ひゃ、あ、あ、あ」

「彼氏、なんかやめ、て…、俺に…、っく、……しろ、よ…」

 

まるで自分が真姫に縋ってるような台詞なんて、言ったことがない。

女に縋るなんてそんな格好悪いこと出きるか、と思って生きてきた。だから、自分がこんなにまでも彼女を欲していて、彼女に必要とされていたいと思っていたなんて、彼女を抱くまで気付かなかった。

 

「……みの、る…ぅ…」

「っぁあ…、……やべ、出る…っ」

「んっ」

 

きゅ、っとしがみついてきた真姫の行動を「肯定」と受け取り、俺は思いきり腰を打ち付けた。

擦り合う内部に快感が混ざり合って、きつい彼女の中で早く果てたいと感情が高ぶる。

 

「あ、ま、ま、まき…っ」

「みのる、…みのるぅ…!!」

 

今まで感じなかった「愛しい」という気持ちを全部吐露するように、自分の中に渦巻いていた「狂気」を白濁と一緒に吐きだした。

 

すっきりとした視界の中、もう狂気に狂った俺はいない。

 

うっすらと診察台に残った血痕を見つけて、ごめん、と同時にキスを落とした。

 

 

 

「───稔、私、お買い得だと思うけど」

 

 

 

ピロートークって言葉を知らないのか、と突っ込んだ後につっこみを入れたくなったが、とりあえず強気な発言で乱れた服をどうにかしようと頑張っている真姫は、可愛かった。

 

「どこのバーゲンだよ」

 

ズボンのベルトをはめ、乱れた白衣もぴしりと伸ばしながら答える。

 

「今だけの限定品です」

「へぇ?」

「今じゃなきゃ、間に合わないよ?」

 

強気にえっへん、とボタンを掛け違ってる胸を張る。

 

「ほぉ」

「……私じゃ…、駄目?」

 

こいつ、俺がおまえ抱いてるときに言った言葉完全覚えてないだろ。

と、言いたかったが、やめた。

あえて相手に弱みを握らせるようなことはしたくなかったし。

 

「……ま、イイっちゃぁイイけど」

「あ、今、なに考えた? えっちなことでしょ!」

「それが男だからな」

 

そう言うと、頬を膨らませながら俯いた真姫に近付いた。

 

「…お買い得…」

 

もう一度呟くように言った彼女があまりにも可愛かったんで、しょうがなく、顎を掬ってキスをする。

 

「…俺をキスで落とせるようになったら、考えてやっても良いぜ」

「……」

 

診察台の上できょとんとした顔をした真姫に、ニヤリと笑いながら言うと、真姫はなにを思ったか、俺の両頬を両手で挟んで口付けた。

 

「ん…っ!?」

 

口の中に入ってきた舌に、突然絡まれる。

荒削りではあるが、なかなかさっきした俺の舌遣いに似ていて、気持ちは良かった。

 

 

ま、及第点だけどな。

 

 

「…ん…。……どうだ」

「…どうだってなんだよ、どうだって…」

 

くっくっく、と喉で笑うともっと頬を膨らます。

 

「あー、はいはい。参った」

「え?」

「もらってやるよ、真姫のお買い得品」

 

嬉しそうに笑顔を覗かせたが、なにを逡巡したのか、真姫は「しょうがないなぁ」と強気にもう一度胸を張った。

可愛いようで、可愛くなかったので、とりあえずこの後はキスの特訓でもしようかな。

 

「覚悟しろよ?」

 

人間の出会いって、偶然のようで必然なんだなー…なんて、ガラにもなく思いつつ。

今、ようやっと手にしたと思う「幸せ」を、ゆっくり大事にしていきたいな…、なんて、隠居したじじいのようなこと考えてるけど、そう思えるのも真姫がいるから。

穏やかに時を過ごすってのも、良いもんかも。

 

……って、やっぱりガラじゃない。

 

とりあえず、これからの二人の道が、…出来れば、長く続いて欲しい。

手放す気は、さらさらないが。



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