クリスマスだ、と世の連中は浮かれてるが、そんなにいいものか。
第一、日本は昔から言われているように無宗教民族。
キリストを信じる者たちからすれば、異教徒でしかない。
なのに、都合いいところだけあたかも仲間だとでもいわんばかりの顔で、謳歌し始める。
周りの国を見習うかの如く。
日本に帰ってきて、久しぶりに嗅いだそんな胡散臭さのせいか、テンションが上がるはずなく普通に俺は今日という日を迎えた。
昔から、神なんて信じちゃいない。
当然だ。
信じる者が救われるのであれば、一時の都合いい神頼みですら聞き入れられているはずだろう?
たとえ一瞬でも、その神を信じようとするんだから。
だが、そんな話が通用しないのが世の中。
だからこそ、面白いと思うんだがな。
だいたい、日本が無駄に盛り上がりすぎだろう。
クリスマスだの、なんだのって。
一丁前に飾り付けして、祝いごとだけやって。
俺に言わせてもらえばそれらはどれも、子どもの『ままごと』のようにしか思えなかった。
「…………」
テレビに映っている、いかにもクリスマスな雰囲気に飲まれている街並みを見ていたら、自然と視線が逸れた。
どいつもこいつも、呑気なもんだな。
これだから……って、ここにもいたか。
忙しいという言葉がまったく当てはまろうとしない、呑気なヤツが。
「じんぐーべー、じんぐーべー、すっずっがーなるー」
ものすごく機嫌がいいのは、はたから見ていてもわかる。
……しかし、これだけ調子っ外れの歌を朝から聞かされ続けることは、ある意味拷問に近いんじゃないか。
「優菜」
「んー? なにー?」
「その歌はなんだ」
ソファにもたれたまま瞳を細めると、きょとんとした顔を見せてからおかしそうに笑い始めた。
「やだー! 綜、忘れちゃったの? 外国で暮らしてたなら、知ってて当然でしょ! ジングルベルだよ?」
「名前を聞いたんじゃない。その音程はなんだ。……あと、ついでに歌詞らしきもの」
「らしき、じゃないわよ! 失礼ね。これは、れっきとしたクリスマスソング!」
「どのへんがクリスマスソングなんだか、最初から歌ってみろ」
「はぁ!? だから! ずっと歌ってるでしょうが! ていうか、なんでそんなにリラックスしてるのよ! 今日は、クリスマスなのよ! いい!? わかってる!?」
「……うるさい」
ぎゃーぎゃーとまくしたてながら歩み寄ってきた優菜に眉を寄せると、それはそれはおもしろくなさそうな顔を見せた。
なんだ?
俺が悪いとでも言いたそうな顔だな。
そんな優菜を見ていると、軽く睨んでから両手を出した。
「……おい」
「ふーんだ。かわいくない人には、ケーキあげなーい」
「悔しくもなんともないな」
「うわ、かわいくない!」
両手で人の頬をつまんでから立ち上がった優菜は、そのままキッチンへと向かった。
……今どき、ケーキがどうので怒るヤツいたんだな。
相変わらず昔と何ひとつ変わっていない姿を見て、ため息と同時に小さな笑みが漏れた。
やっぱり、歳をいくらとっても昔と同じらしい。
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