「んー、いい匂い!」
「だね。食べよう」
「はぁい」
 家に帰ってから、早速食べ始めた例のチキン。
 空腹というのもあったのだが、やはりこの手の匂いは食欲を刺激されるワケで。
 ……そういや、この前のピザでも同じことを言った気がするけど。
 でも、ジャンクフードにはジャンクフードにしかないよさがあるんだよ。
「ありがとうございます」
 ソファに座ってから、ナプキンでくるんだそれを彼女に渡す。
 嬉しそうに早速ひと口食べた彼女は、やっぱり幸せそうだった。
「んー、おいしい」
 満足げな彼女を見てからひと口食べると、懐かしいような、あの独特の風味が広がる。
「うん。うまい」
 骨をとりながら丁寧に食べていくと、次々手が進み、結局あっという間になくなった。
 うまいモノは、そんなものだ。
「…………」
 ――……と、指についた油を舐め取る彼女に視線が向く。
 無意識の癖なんだろうが、どうしても誘っているとしか思えない。
「え?」
 そっと彼女に顔を近づけると、テレビから俺へ視線を向けた。
「んっ……!」
 そのまま、舌を挿し込んで彼女を味わう。
 ほんの少し。
 だが、つい離れてからぺろりと唇を舐める。
「……なんか、うまいな」
「もぉ……ごはん食べたばっかりなのに」
「あぁ、それでか」
 苦笑を浮べてから、もう一度その唇を塞ぐ。
「っ……せんせっ……」
「味が濃いものを食べたあとは、甘いモノが欲しくなるんだよ」
 耳元で呟き、そのまま耳たぶを舐める。
 こうなると……なかなか歯止めが利かないワケで。
「ん……ん……」
 瞳をしっかり閉じてしがみつくように抱きついてくる彼女が、たまらなく欲しかった。
 ……昨日、数え切れないくらいもらったはずなんだけどな。
 やっぱり、自分は我侭なんだと実感する。
「ぁ、あ……ん」
 Tシャツの上から胸に触れ、そのままゆっくり揉んでいく。
 耳から首筋へ唇を落とし、軽く吸うようにしてついばむ――……と、軽く首を振った。
「っ……付けちゃ……やだぁ」
「どうして? ……誰に見られるわけじゃないのに」
「んもぉ……模試があるでしょ!」
「……ああ、そうか」
 すっかり忘れてた。
 そういえば、明日はそんな予定があったな。
「じゃあ、首はやめとく」
 それだけ囁いてからTシャツを首までまくり、そのまま脱がせる。
「んっ、先生っ!」
「ここなら……平気でしょ?」
「っ……あ」
 鎖骨に手を這わせながらホックを外すと、上半身裸になった。
 天気が悪いとはいえまだ明るいせいか、肌がやけにキレイに見える。
「……ふぁ……」
 つ、と胸の間を指でなぞってから手のひらで包むと、反応を見せてくれた。
 しばらく弄るように揉みながら、鎖骨の下に唇を当てる。
 何度か舐めてから軽く吸ってやると、すぐに赤い跡が残った。
「もぅ……」
「……いい格好」
 そこを満足げに指で触れてから唇を逆の胸に寄せ、ついばむようにして舐め上げる。
「やぁっ……! あ、んっ……ん!」
 そのたびに細かく身体を震わせ、ぎゅっとしがみついてきた。
 が、当然のように片手をスカートの中へ忍び込ませる。
「あっ! んっ……んぁっ」
 下着の縁から指を差し入れると、とろりとした感触に思わず笑みがこぼれた。
「……なんだ。羽織ちゃんも待ってたの?」
「ち、がうっ……! 先生がっ……」
「なんでもかんでも、俺のせいにしない。……2週間、羽織ちゃんはなんともなかったの?」
「……え……?」
 潤んだ瞳を向けながら、彼女が薄っすらと唇を開いた。
 ……やらしい顔だな。
 我ながら、よく理性が保つようになったもんだ。
 こんな顔されたら、そうそう我慢なんてできないというのに。
「……俺と離れてて……こうしてキスしたいとか、抱かれたいとか……なかったの?」
「そっ……それは……」
 まじまじ見つめていたら、頬を染めて視線を逸らされた。
「んぁっ!」
「……ちゃんと見る」
 濡れた指で花芽を触ると、鋭く反応を返す。
 頬に手を当てて目を合わせたこともあってか、今度は視線を逸らすようなことはなかった。
「……寂しかったです」
「それだけ?」
「…………ずっと……抱きしめてほしかったし……」
「……ほしかったし?」
「っ……こうして、愛してほしかったの……」
「……ん。いい子」
「っ……!」
 まさに、上出来。
 微笑んでから――……体勢を変えて、今度は直接花芽を舌でなぞる。
 鼻先に香る彼女の香りに、ぞくりと身体が反応を示すのもわかった。
「あっ! あ、ぁ……っ……!! ん、やぁっ……」
 ときおり軽くついばむように吸ってやると、そのたびにびくびくと足を震わせた。
 声の高さも変わり、きゅうっと押さえ込まれるような音に、“もっと”と欲が芽を出す。
「やっ、あっ、もぅ……もっ……だめぇっ……!」
 こたえる代わりにより刺激してやると、彼女が肩に手を当てた。
 ぎゅっと握り締められる両手。
 この快感に耐えるように、ときおり小さく震える。
「っはぁ、はぁっ……っ! も……やぁっ」
 そっと唇を離して彼女を見ると、瞳の端に涙を溜めていた。
 涙。
 それは、いつでも目にするたび焦る。
「……痛かった?」
「う、ううん……」
「じゃあ、どうして……?」
 そっと顔を近づけてやると、彼女が首に腕を絡めて耳元で囁いた。
 ……聞こえた、一言。
 だが、途端に身体を離して彼女の顔を見たくなる。
 驚いたように目を丸くしてすぐ、慌てたようにうつむく。
 ……たまんないね。
 いい女。まさに、ソレ。

 『気持ちよかったの』

 小さな声だが、確かに彼女はそう言った。
 笑みというよりはほくそ笑むというほうが、正しいかもしれない。
 しっとりとやや汗ばんだ身体を舐めるように手で撫でてから、潤いきった彼女のソコに、自らを埋める。
「っぁ……あぁっ」
「……っ……く」
 あまりにも気持ちがよすぎた。
 ……まずい。
 やっぱり、直接触れるのは危険だ。
 なんてことを考えながらも、1度この快感を味わってしまうとなかなかあとには引けない。
 ……人間って、やっぱ我侭だな。
 どくどくと脈打つのを感じながらこすりつけるように動き始めると、彼女もそれに合わせて腰を揺らした。
「……はぁっ……あ、ああっ……」
 すぐに、快感の波が押し寄せてくる。
 ……まだだ。
 まだ、味わっていたい。
「っ!?」
 動きを止め、そっと彼女を抱き起こす。
 自分の上にまたがって座るような格好。
 そのまま、彼女を突き上げる。
「っぁ! あっ……んっ……!! ふぁ……っ」
 彼女が両手をソファの縁について身体を支え、なんとも悩ましげな表情を見せてくれた。
 振動を与えるごとに彼女の胸が大きく揺れ、視覚的にかなりそそられる。
 ……だが、何より。
 見あげれば、しっかりと見える彼女の艶かしい表情に、たまらなくゾクゾクした。
「……ん……ふ」
 その格好のまま、彼女の唇を求める。
 位置的には彼女のほうが上。
 いつもと違って、見下ろされるかたちだ。
 そのまま口づけを続けると、しっかりと応えてくる。
 ――……が、少し角度を変えてやるたびに、敏感に自身を締めつけた。
「……は、ぁっ……あ、あ……んぁ」
 格好が格好だけに奥まで刺激しているのか、いつもよりもいい声を耳元で漏らす。
 ……っ。
 そんなにされたら、すぐにでもイきそうだ。
 最奥まで届くように彼女を揺らしながら、奥歯を噛みしめる。
「ん……んっ……」
 こうして彼女の切ない顔を見上げるってのも、イイな。かなり。
 などと考えていると、彼女がさらに息を荒げながら両腕に力を込めた。
「あっ、あっ……! んっ……! も……あぁっ、やあんっ! 祐恭さんっ、も、だめ……ぇっ」
「っく……ダメじゃ……ないだろ!」
 切ない声で名前を呼ばれ、脳髄が甘く痺れる。
 ――……と、急激な締めつけが襲った。
「くっ……ぁ」
 寸前で抜き取ると、腹部から鎖骨にかけて白く跡が残った。
 ……危ない。
 いろいろな意味で、やっぱり……俺はダメかもしれない。
「はぁ……はっ……あ」
 荒く息をつきながら彼女を見ると、幸いスカートには付いていないようだった。
 ……よかった。
 ――……と思ったのも束の間。
 次の瞬間、信じられないものを見た。
「……ぺろ」
「!!!?」
 なんと、彼女が身体に付いたそれを、指ですくって舐めたのだ。
「うわっ! 何!? そんなもの、舐めるな!!」
「……だって……」
「だっても何もあるかッ!! ほらっ、早く出せって!!」
 慌ててティッシュと一緒に手のひらを差し出すも、首を振って口を開こうとしない。
 なんで、こういうときに限って頑固かな!
「こらっ! 言うこと聞けってば!!」
「……こくんっ」
「うわっ!? ……っ何をしてるんだ、いったい!」
 こちらの慌てようにまったく動じずに、結局それを飲み込んでしまった。
 なんでそんなことを急に考えたんだ、この子は!
 たまらず、ぐんにゃりと力が抜ける。
「……はー……」
 ……アレか?
 あの、AVのせいなのか?
 ……いや、でもあのときは少なくともそんなシーンなかったし……。
 …………って、冷静にしてる場合か!
 慌ててティッシュを取って彼女の身体についたそれを拭き取り、乱暴にゴミ箱に投げ入れる。
「こら!!」
「わっ!?」
 Tシャツを着ようとしていた彼女に叫ぶと、びっくりしたように半分ほど腕を下ろしたところで肩を揺らした。
「なんで、あんなことしたんだよ!」
「……ダメ……でした?」
「いや、ダメって言うか……そもそも、そういう問題じゃなくて――」
「……だって……いつも先生ばっかり、私のこといじめるから。たまにはいいかな、って」
「ちょっと待て。別に、いじめてないだろ? ……もー、びっくりさせないでくれよ」
「どうしてダメなんですか?」
「っ……」
 きょとんとした彼女に、堪らずため息が漏れた。
 なんていうか、純粋すぎるのも困りものだぞ。これは。
「……だから。あれは飲むモノじゃないの」
「でも……したかったの」
「…………こら。そういうことを言うんじゃない」
 眉をひそめて彼女を見るが、若干頬が染まるのがわかった。
 ……ああもう。
 罪作りだな、この子は。
「だって……先生は、いつも私のこと……ああやってするけど……私は、まだしてないし」
「だから、そういうのは――」
「……先生のこと、好きなんですもん」
「っ……」
「だから……私も、同じこと……したいの」
 上目遣いで見られたら、そりゃ、何も言えるはずがない。
 ……降参。
 わかったよ。
 だからそんな目で見るな。
 …………あぁもぅ。
 参ったな。
「……はぁ。もう2度としないって、約束する?」
「……うん」
「よし」
 こくん、とうなずくのを見てから頭を撫で、そのまま抱きしめる。
 ……たまらん。
 絶対、今ので寿命が数年縮んだはずだ。
「せ、先生っ。もぅ、服が着れない……」
「いいんだよ。今日の、羽織ちゃんの席はここだって言ったろ?」
「あっ……」
 言ってから彼女を抱き上げ、胡坐をかいた足の上に座らせる。
 ……この眺めは結構いいな。
 両手を掴んでいるために、Tシャツを着れず、ブラだけのうしろ姿。
 まじまじと見たことがなかったせいか、結構楽しい。
 などと考えていたからか、ついつい手が伸びていた。
「っ……! もぅ、やっ!」
「……そう言わないの。羽織ちゃんがあんなことしたから、ワンペナルティね」
「えぇ!? 先生はないのに、私にだけなんて……ずるい!」
「ずるいとか言わない。はい、ふたつ目ー」
「っ! ……もぉ」
「5つたまったら、ご褒美あげる」
「……ご褒美じゃないんでしょ?」
「当然。俺にとってのご褒美だもん」
「……はぁ」
 にっこり笑ってうなずくと、少し肩をすくめてため息を見せた。
 そのうなじに唇を寄せてから、改めて味わうことにしたのは――……夕食にうなぎを食べたあとのこと、だった。


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