「ん……」
彼女の両手を首に絡めさせてから、白い首筋へ唇を落とす。
空いている手を浴衣のあわせから差し入れ、しとやかな肌を伝って胸を責め始めると、わずかに指先が触れただけで彼女の腕に力がこもった。
いつもとは、少し違う反応。
……場所が場所だけに、ある意味何か感じるものがあるのか。
などと考えてから浴衣のあわせを少し開いて、舌を這わせる。
「っ……!」
途端、ぴくんと反応を見せて、そのまま髪へと手で触れてきた。
何かを我慢するように、時おり震える手のひら。
そっと舌で先端を舐めあげてやると、硬く尖らせる。
それこそが、感じている証拠。
……とはいえ、何かいつもと違って物足りないような気がするのは、どうしてだ。
「っは……ぁ」
何度か含んでやってから唇を離し、彼女の視線に高さを戻す。
だが、目が合った途端、ふっとそらして瞳を閉じてしまった。
…………?
なんだ?
スリットが入ったように覗いている太ももへ触れながら辿るように撫でると、きゅっと閉じた瞳が切なそうに震えた。
その頬を掌で包みながら、ショーツに手をかける。
指先だけで簡単に脱がせてやると、そこは彼女の言葉とは裏腹に、すでに待ち望んでいるようなしっかりとした潤みがあった。
わざと耳元に唇を寄せてから甘噛みをし、ふっと笑いかける。
「……ずいぶん正直だな」
「っ……!」
何度か指の腹を往復させてからそのまま花芽に触れると、彼女が首に手を回して何かを耐えるように首を振った。
途端、髪が揺れて微かに甘い香りがする。
「……何?」
「やっ……だめ……ぇ」
「嫌? ここは嫌がってないみたいだけど」
「っ……! ん、やぁ」
ぎゅっとしがみつく格好でこちらにもたれると、荒くつく息が耳元にかかる。
吐息が熱くて、結構……クルな。これ。
指を増やして転がすようにしてやると、すっかり力が抜けたように身体を預けてきた。
それはそうだろう。
ベッドの上でさえ腰砕けになる彼女が、立ったままでいられるはずがない。
「……っんや……は、ぁ」
きゅっとつまむようにしてやると、さすがにツラそうに小さく声を上げた。
そんな彼女にある問いが浮かび、ふと……笑みが消える。
「……泰兄の手と、どっちが気持ちいい?」
「っな……!?」
みるみるうちに頬が赤く染まる。
困ったように眉を寄せて首を強く振る彼女に、指を動かしながらもう1度。
もちろん、まっすぐ彼女を見据えて。
「どっち?」
「………いじわる……っ」
「気持ちいいなんて言うからだろ」
「だっ……てぇ……」
ぎゅっと腕にしがみついてくる彼女の首筋に何度か唇を這わせてやると、そのたびにぞくぞくと小さな震えを見せた。
「……どっちがいい?」
「…………せ、んせ……のほうが、気持ちいっ……」
「ん。よくできました」
我ながら、意地が悪いと思う。
だが、こうして彼女に敢えて口に出させることで、結構満ち足りもするんだよな。
……で。
先ほどから感じていた、いつもと違う点。
それが、今やっとわかった。
「声は?」
「えっ?」
一瞬、びくっと肩を震わせた彼女が視線を合わせた。
その目はまるで、『見つかった』とでも言いたげだ。
「声が聞こえないんだけど?」
「な……出て、ますよ?」
「……ふぅん」
「っ! んっ……!!」
すっ、と指で花弁をなぞってやると、堪らず表情を崩す。
だが――……。
「いつもみたいに、声出して?」
「だ、してますってばぁ」
「……へぇ。そういうこと言うんだ。……じゃあ、少し意地悪しようか」
「え……っ!? あっ、や……だぁっ!!」
ゆっくりしゃがんでから浴衣を肌蹴させ、顔をうずめる。
舌先で弄るように音を立てて舐め上げると、さすがに反応を見せた。
「っん! あ、や……だっ」
「ダメ」
「あ、ああっ……ひゃっ……! だ、めぇ……っ」
がくがくと足を震えさせながら、彼女が口元を押さえるのが見えた。
……なるほど。
そうやって声を出さないようにしてたのか。
だったら、こちらにも手があるというわけで。
「ん……! あっ、やっ……はぁんっ」
いつもより少し強めに刺激してやると、たまらず彼女が声を上げた。
同時に濡れた音が大きくなったのは、恐らく気のせいじゃない。
……イイ声。
やっぱり、人間は視覚と聴覚でかなり刺激されるイキモノらしい。
「はぁっ……は、ぁ……」
顔を離して彼女を見上げると、少し怒ったように眉を寄せながら肩で息をしていた。
そんな姿を見てにっこりと微笑んでから立ち上がり、柱にもたれた彼女へいたずらっぽく笑いかけると、まるで何かを察したかのように、あとずさった。
心なしか、表情も固く見える。
……いいね。
どうやら俺は、そーゆー顔を見るのが、たまらなく好きらしい。
「そういう声が聞きたいんだけど。できれば、たくさん」
「っ……そんな。だって、外だし……!」
「平気だよ。虫の声でそんなに響かないから」
「で、でもっ……! んぁっ」
彼女が言い終わる前に腰を引き寄せ、片手で濡れきったソコを刺激してやる。
途端、崩れそうに彼女が身体を曲げたが、反射的に空いた手が動いた。
「っと……」
「……はぁ、も……だめ……ぇ」
膝を折った彼女を抱きとめ、ゆっくり立ち上がらせる。
「……少し意地悪が過ぎたかな」
「も……えっちぃ……」
目の端に涙を少し浮かべながら、彼女が囁いたた。
そんな姿を見てからそっと財布を取り出し、中から小袋を取り出す。
すると、それを見た彼女が、驚いたように目を丸くした。
「な……! どうしてっ……!?」
「いや、こういうこともあるかなと思って」
「最初からっ……そのつもりだったんですか……!?」
「まさか。でもま、万が一に備えて……っていうのは、あったけど」
「うぅ……っ」
にっこりと笑ってから自身に纏わせ、彼女に手を伸ばす。
ぬかりないよ? 男として。
……とはいえ、数ヶ月前までの俺からは考えられない行動だが。
「んっ……」
彼女に軽く口づけてから、足の間に身体を割り込ませ、壁にもたれさせて片足を抱えるように上げる。
「っあ……! んっ……く……」
「……くっ」
立ったままってのは、結構キツいもので。
強引に這入ったつもりはなかったのだが、それでも予想以上の締め付けが待っていた。
だが、コレはコレで結構奥までいく……か。
どくどくと脈打つ彼女の中と、それにぴったりと包まれる自身。
……たまらん。
短く息を吐くと、つい目が閉じた。
「……は……ぁ」
根元まで沈めきったところで、再度たまらず息が漏れた。
だが、それ以上に切なそうなのは彼女。
しっかりと収まったのを感じて動き始めると、唇から艶っぽい声が漏れた。
「あ、っ……んっ……! はぁ、ふ……ぁ」
快感にこらえ切れずに腕にしがみついてくる姿は、結構いいモノで。
……まさか自分が外で、しかも立ったままコトに及ぶとは考えもしなかっただけに、ある意味いつもと違う興奮とでもいうか。
「っ……ぁ、んっ! も……やぁん」
「……ん? 何が、嫌っ……?」
「はぁっ……すごい……奥まで……」
「……気持ちイイでしょ?」
「……ん……っ」
耳元で囁くようにしてやると、困ったように瞳を揺らした。
思わず口角だけを上げて笑ってから、瞳を閉じて彼女を抱きしめる。
「……はぁ。……もう持たない」
「っん……!」
呟いてからそっと唇を求めると、彼女もすんなりとそれに従った。
柔らかい唇。
そして、溶けてしまいそうな熱い口内。
絡む舌に伴って、水の音がいやらしく耳に響く。
そのたびに彼女に締め付けられ、今にも果ててしまいそうだった。
「ッ……」
「あっ、や……んんっ……! せ、んせっ……」
「……も……ダメかも」
「ん、んあっ……はぁ、はっ……! あ、やぁんっ……! うきょ、さ……っ」
「っ……く……! 羽織……ダメだ、イク……!」
ぐいぐいと突き上げながら、たまらず抱きしめる腕に力を込める。
途端、彼女の中ですべて吐き出していた。
強烈な締め付けが襲い、荒く息が漏れる。
「っく……!」
「……はぁっ……んっ。……んん……!」
ぞくぞくと背中を快感が走り、気付くと彼女の唇を貪るようにキスしていた。
果てたばかり彼女は、ある意味新しくて。
ゆっくり唇を離すと、つ……と光る糸ができる。
彼女の唇を舌で拭ってやってから頬に口づけすると、少し照れたように俺を見た。
「……もぅ……こんな、ところで……」
「我慢できなかったんだよ。……いろいろと」
「…………えっち」
「……羽織ちゃんもね」
ちゅ、とわざと音を立ててもう1度口づけしてから、手早く処理する。
さすがに立っていられなかったらしく、腕を離すと彼女がベンチへ崩れるように両手をついた。
「……大丈夫?」
簡単に浴衣を直してから彼女を支えると、だるそうにしなだれかかってきた。
……そりゃそうだ。
「はぁ……」
小さくため息をついた彼女を抱き上げて、そのままベンチに腰かける。
格好としては、彼女が膝の上に座っているかたち。
「…………」
「は……ふ」
首に腕を回してもたれたまま呼吸をする彼女に、若干の申し訳なさも生まれる。
「……ごめん」
つい、口からそんな言葉が漏れた。
「……もぅ。だったら……離してくれればいいじゃないですか」
「それは無理」
首を振って彼女を見ると、眉を寄せたものの小さく笑ってくれた。
衝動が抑えられなくなったのは、彼女と付き合い始めてからだと思う。
これまで、どこでもいつでも、というようなことはなかったし、それらを実行したがる友人を冷ややかな目で見ていたのに。
見ていると手が出る。
……喉から。
そんな感じは、彼女が初めてだ。
だから、自然にアレを携帯するようになり始めたというか……なんというか。
いや、さすがに学校には…………持って行ってないときもある。
…………。
こんなこと言ったら、本気で怒られるかもな。
少し乱れてしまった髪の彼女を見ると、ふいに視線が合った。
その瞳はどこか儚げで、潤んでいて……エロい。
「そんな目をされたら、これだけじゃ済まなくなるよ?」
「…………だって……」
ぽつりと呟いた唇も、困ったように寄せた眉も……少し赤らめた頬も。
すべてが愛しくて、すべてがどうしようもなく欲しかった。
「……もぅ。どんな顔して帰ればいいんですか?」
「ん? こんな顔で帰ればいいじゃない」
へにょん、と頬をつまんでやると、やっぱり睨まれた。
くすくす笑いながら『ダメ?』とお伺いを立ててみるものの、許してくれるワケもなく。
「……だめ?」
「ダメですよ!」
「しょうがないな。……あ、いちご飴買ってあげるから」
「もぅ! 話をすり替えないでください!」
「でも、欲しいんでしょ?」
「……そっ、それは小さいころの話で……」
「ふぅん。じゃあ、買わなくていいんだ」
「え、あっ……」
わざとそっけない顔をすると、一瞬眉を寄せて俯いてから、上目遣いで俺を見上げた。
「……欲しい」
「ほら。やっぱ欲しいんじゃない」
「だって、懐かしいし……」
「じゃあ、それ買って帰ろう」
「はぁい」
ぽんぽんと頭を撫でてやってから立ち上がらせると、自然と足元へ目が行った。
暗くてきちんとは見えないが、当然気にはなる箇所。
「平気?」
「はい。……休めなかったですけれど」
「はは。それは失礼」
肩を抱くようにして東屋をあとにし、きた道をゆっくりと戻り始める。
東屋へきたときから結構時間が経っていたものの、祭りの明かりはまだ消えそうになかった。
――……その、実家への帰り道。
いちご飴を手にして微笑む彼女はやっぱり嬉しそうで、まだまだ幼い部分もあるんだなと実感した。
……まぁ、彼女の場合はおばあちゃんになってもずっとこんな感じの気がするけど。
小さく苦笑を浮かべてその手を取り、家までの帰路を歩き始める。
……ひょっとしたら、あの密事も誰かしらには気付かれてるかもな。
…………。
まぁいいか。それはそれ。
というか――……やってしまったことは、もう何をしても取り戻せないから、仕方ない。
だが、開き直っていつまでもここに留まることはできず、実家へ戻ると、早々には挨拶をして冬瀬の自宅へと帰るべく車を走らせていたが。
「…………」
恐らく、祭りの時期になるたびに思い出すんだろうな。
……あの東屋、昼間でも今後しばらくは行ってもらえないかも。
助手席で眠たそうにあくびをひとつ見せた彼女を目の端で捉えながら、思わず苦笑が漏れた。
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