「……私……ね?」
「うん」
心なしか、楽しそうなのは気のせいだろうか。
……って、気のせいなはずはないよね。
だって、先生ってば満面の笑みで言い出したんだから。
「……私は、祐恭さんが考えてる、その何倍もいやらしくて……不真面目で……イメージ通りじゃないんですよ?」
……我ながら、すごいセリフを口にしてるなぁと焦りはする。
で、でもっ!
これは、私が言ったんじゃないんだよ?
私が言ったんじゃなくて、これは、あの……ど、ドラマの主人公が言ったというかなんというか。
恥ずかしくて、せめてもの言い訳。
「……っ……」
ふっと瞳を細めてから口角を上げた彼を見たら、たまらず視線が落ちた。
……えっちな顔。
と思える私は、もっと……えっちなのかもしれない。
ちょっと、反省。
「……それで?」
「あ……」
催促されて顔を上げると、小さく笑ってから頬に手を伸ばしてきた。
撫でるように往復され、思わず喉が鳴る。
「……それで……あの……。……でも、それでもいい、って……あなたなら構わないって……言ってもらえませんか?」
おずおずと彼に瞳をあわせてから、軽く頬に唇を寄せた――……途端。
ぐいっと顎を掴まれて、そのまま唇を塞がれた。
「んっ! ……ふ……」
舐め取るようにキスをされたまま、あっさりと体勢を変えられた。
ベッドへ組み敷かれるようにされ、丹念に口づけられる。
いつもよりも、やけに絡んでくる舌。
……それを意識するだけで、身体が熱くなる。
「ん……ぁ……っ」
唇を塞いだままで胸元を探り、そのまま柔らかく揉みしだかれた。
彼の手つきが妙にいやらしい気がして、より悦を感じてしまう。
「っ……!! んっ……!」
すると、急に茂みを分けて彼が秘部へと指を這わせた。
突然の刺激に身体が跳ね、抵抗を防ぐかのように彼がより激しい口づけを落とす。
……とけちゃいそう。
朦朧とする意識の中でそんなことを考えると、やっと唇が解放された。
「……は……っぁ……」
射るような瞳。
というか……すごく色っぽいっていうか……逆にこっちが誘われてるんじゃないかと思うような彼の瞳が、そこにあった。
離してもらえないような、強い眼差し。
見ているだけで、どうにかなってしまいそう。
「……え……?」
「羽織ちゃんなら、大歓迎」
「……っ」
「いいよ。むしろ、俺の前では淫らに誘って」
「あ……やぁっん!」
唇に指を当ててから笑った彼が、言い終わると同時に指を秘部に沿わせて花芽へと移動させた。
濡れた刺激に声を漏らすと、満足げに小さく笑ってから円を描くように刺激される。
そのたびに足がひくつき、本当にいやらしくて……もぅ、すごく恥ずかしい。
「……ん……はぁっ……」
「あんなふうに誘ってくれるとは、思わなかったよ」
「え……?」
「どこで覚えたんだ?」
「……っ!」
ちゅぷ、と小さく音を響かせて彼が指を埋めると、壁に這わせるように奥まで探った。
彼の胸元に手を当てると、滑らかな素肌に手が当たる。
上半身裸で、こうして見下ろされると……やっぱり、なんか……やらしぃ。
「……ペナルティはこうして活用しないとね」
「や……んっ」
「……気持ちいい?」
「……んっ……気持ちいい……」
こういうときの、彼の吐息混じりの声がたまらなくえっちで、ぞくぞくする。
こくこくと瞳を閉じてうなずくと、頬に手を当ててから再びキスをくれた。
指で中を探られ、彼の指を無意識のうちに自身が締め付ける。
それがわかるから、余計に感じて……さらに締めてしまうという悪循環になるのに、彼はとても満足げだった。
「あ、あっ………や……」
くちゅくちゅと水音を響かせるように指を動かしているかと思えば、ゆっくりと抜いてそれを花芽へあてがう。
繰り返されるうちに、どうしても果てが近づいてしまうのに、彼は指を止めなかった。
彼に触れられて、キスをされるだけでも危ういのに、こんなふうに責められたら……。
ぎゅっと彼の肩を掴むように手を握ると、首筋から胸元にかけて舌を這わせてきた。
「はぁっ……ん!」
わざと音を響かせながら胸の先を含み、舐めあげるようにされる。
そんな、いつもと違う刺激に声を漏らすと、彼が濡れた指で花芽を撫でた。
「やぁんっ……もぉ……やだぁ」
「……ヤじゃないだろ? そういうときは……どう言えっていつも言ってる?」
「っ…………はぁ……すご、く……いいっ……」
「上出来」
唇を離して顔を覗きこんだ彼が、頬に唇を寄せた。
丹念に口づけを落としながら唇を舐められ、思わず私のほうからキスをせがむ。
……頬がいやとかってことじゃないんだけど、どうしても唇にキスが欲しい。
ねだるように彼を見ると、満足げに笑ってから口付けてくれた。
果てが近いせいか、やけに心地よくて――……。
「っ! はぁっ……あ、んっ!」
急に指でつまむように花芽を刺激され、思わず声があがった。
と同時に、身体が軽くひくつく。
「……敏感すぎ」
「だ……って……ぇ」
ぞくぞくとした軽い悦に眉を寄せると、彼がベッドの棚に手を伸ばしてから避妊具を取り出した。
そして、わざと見えるように目の前で封を切――……ったら、すぐに彼が何も言わず這入ってきた。
「っ! ……ん……ふぁ……っ」
いつもは彼が声をかけるからこそ、こうして急に這入られと……ぞくぞくする。
いつもと、違う彼。
どこか苦しげに眉を寄せ、抱きしめるようにして耳元に唇を寄せる姿。
……なんか……えっちぃ。
「ちょっと……ヤバい」
「……え……?」
「あんなふうに誘うから……ッ……く」
「あ、やっ……ぁん!」
擦り上げるように彼が動き出し、痺れていた快感を感じる神経が呼び起こされたような気がした。
すがるように彼の首へ両腕を絡めると、角度を変えてさらに責め立てる。
「んっ、ン……ぁ……っくぅ……ん!」
「……随分色っぽく……誘うもんだな」
「そ、んなこと言われてもっ……ひぁ……」
「こうしてっ……早く抱きたかったよ」
「んっ……! あ、ぅっ……ん」
掠れた声を耳元で聞かせながら、ぐいぐいと奥まで刺激する。
あまりに深くて……もぅっ……息が、うまく吸えない。
「あ、も、……ダメっ……――!?」
ひくひくと秘所がうずき始めて、すぐ。
彼が動きを止めてしまった。
驚いて目を開けると、肩で息をつきながら彼が首を横に振る。
「……まだ」
「だ、ってぇ……」
「……そんな顔しても、ダメなんだよ。……もっと……欲しい」
「ぁっ……ん!」
ぐいっと抱き起こされて体勢を変えられ、彼の上にまたがる格好になった。
……うぅ。なんか、恥かしい。
「っ……!」
でも、思わず俯いてしまって後悔。
ばっちりと、彼との繋がりが目に入って身体が熱くなる。
「やっ……!」
慌てて視線を逸ら――……そうとした途端。
彼が、頬に手を当てて視線を戻した。
「……ちゃんと見る」
「だって……! ……恥ずかしい……」
「恥ずかしくないだろ? ……んな、初めてみたいなこと言って……」
「……けど……ちゃんと見たこと、ないもん……」
「じゃあ、なおさら。……ほら、羽織」
「っ……」
……ズルい。こんなときに、呼び捨てで呼ぶなんて。
彼にこうして呼び捨てされるだけで、ぞくっとした快感が背中を走る。
そのせいで、自分の意識とは別に彼を締め付けてしまうから、すごくやらしくて、恥ずかしい。
こう、なんていうか……自分と彼の……そこが目に入るわけで。
「……うぅ……もぉ、やぁん」
「ヤダとか言わない。……もう抱かれたくないの?」
「え……!? や……それは……やだっ」
「だろ?」
「……うん」
こくり、とうなずくとなぜか彼はひどく満足げに口角を上げた。
一瞬、その顔がとても意地悪そうに見えたんだけど、どうしてかはわからない。
「っんぁ!?」
いきなり下から突き上げられ、たまらず彼へたれるように抱きつくと、胸元に舌を這わせながら律動を早められた。
「……っく……! 羽織……」
「も……っあん! や、も……ダメっ……なの……!」
泣きそうな声で囁くと、彼が背中に腕を回して身体を密着させた。
それだけで角度が変わり、弱い部分をさらに刺激してくる。
「んんっ……!」
「すごい……気持ちいい……」
「はあ……んっ……! う……きょうさんっ……」
いつもより少し高い彼の囁きに身体を震わせると、同時に幾度かの締めつけ。
……もぅ……ダメ。
先ほどの軽く昇りつめただけの快感では、もう満足できない身体になっていた。
いつから、これほど淫らに彼を求めるようになったのだろう。
でも、それでも……いいと思った。
彼、だけだから。
彼が私を求めてくれるように、私も同じように求めたいと思う。
好きだから。
……どうしても……彼じゃなきゃ、もうダメなんだもん……。
きっと、彼ほどに私を満足させてくれる人なんて、もう現れないに違いない。
最初で最後の人。
そう思うことができたからこそ……もっと……欲しい。
彼に、もっと求めてほしかった。
もっと、愛してほしかった。
……いっぱい、乱されてもかまわない。
そんなふうに、どこかで考えているんだと思う。
だから、どれほど彼に意地悪なことを言われても、無理矢理な要求をされても、応えてしまう。
それによって彼が私に与えてくれものが大きいから。
「あ、あっ……! ん、もぅっ……い、っちゃう!」
「……く……ッいいよ……先にっ」
「ん、ん、んぁっ……あ、あ……ぅんっ、い、あぁっ……!!」
ぎゅっと彼にしがみつくと、大きな波が身体を襲う。
先ほどの比にもならない快感。
中途半端に達したせいか、やけにぞくぞくと身体の奥まで震えた。
「……ッ……」
律動が早まったあと、胎内に熱い彼を感じる。
つらそうに眉を寄せて抱きしめてくれる姿は、やっぱり何度見てもたまらなくて。
……すごく……なんていうんだろう。
嬉しい……んだもん。
「ん、ん……っ」
息をついてから唇を重ねると、何度かついばむように口づけをくれてから、しっかりとしたキスをくれた。
互いに果てたばかりの身体は、まだ相手を欲しがっているような……そんな気にもなる。
「……え?」
ちゅ、と音を立てて彼が顔を離したかと思いきや、そのままもたれてきた。
「っ……せ、んせ……!?」
彼の体重を支えられずにベッドに倒れると、おかしそうに彼が小さく笑う。
……うぅ。どうして笑うんですか。
「ちゃんと支えてよ」
「……だってぇ……」
急に全体重かけるんだもん。
さすがに、私じゃ支えられない。
「……ふふ」
「はは」
顔を合わせて再び笑うと、ふたり一緒にしばらく余韻に浸っていた。
……幸せ。
彼の笑顔を見ていると、本当にそう思う。
……えへへ。
へにょんと顔を緩ませて彼に抱きつくと、背中を撫でてから抱きしめてくれた。
独り占め。
いまこの状況が、たまらなく嬉しくて、すごく自慢。
いつまでも、こうしていたい。
……彼との幸せが、長く続きますように。
「…………えへへ」
きっと、初詣に行ったらそれをまず願うんだろうなぁ。
彼も……そうでありますように。
なんてことが、改めて強く思い浮かんだ。
→おまけ
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