「っ……!」
「ありがとう。……すごい救われた」
いつもと逆だな、これじゃ。
彼女へしがみつくように抱きつくと、こちらも笑みが漏れた。
そんな彼女に再び髪を撫でられ――……ると同時に、頬に温かな感触。
「……え……」
「あっ。……見ちゃダメですよ」
すぐそこにある、彼女の顔。
やたら照れて困ったように眉を寄せ、こちらに視線を合わせている。
……キス……?
軽いものだったが、紛れもなく今頬に触れたのは、彼女の唇だろう。
……ちょっと驚き。
ていうか……そんな……。
「いつも先生には私が助けてもらってばかりだから……ちょっとでも恩返しできればいいなぁって」
「……十分すぎるほどだよ。それに、恩返しって言葉は違う」
「え?」
彼女の頬に手のひらを這わせ、つい撫でてしまう。
滑らかな感触。
そして、愛しげな眼差し。
……そう。
「俺は、いつでも救われてる……」
「……んっ」
独り言のように呟くと、そのまま口づけを求めていた。
重なる唇から、温かさが広がる。
何度でも欲しくなる、彼女。
手を伸ばせば、優しさが、愛おしさが嬉しいほど伝わってきて、心底幸せになれる。
「……ふ……」
歯列を舌でなぞってから、舌を絡め取る。
そのたびに濡れた音が響き、どうしたって……次が欲しくなってしまう。
「っ……ん!」
唇を塞いだままで、外したボタンから直に胸をやんわりと揉みしだくと、吐息交じりに声が聞こえ出した。
身体の向きを変えて彼女をソファに倒すが、口づけは無論やめたりしない。
そのまま自分もスーツを脱ぎ、ネクタイを外す。
……片手で解けるってのは、相変わらず便利だ。
「ん、んっ……ぁ……ふ」
喉から漏れる、甘い声。
それが口内にくぐもって響き……相変わらず刺激される。
我慢しているわけでもなく、単に響きがないだけという甘い声。
これは、やっぱり……凶器だな。
……それでも、声は声できっちり聞きたい。
ずっとキスで塞いでいた唇をようやく解放してやると、大きく息をついてからいろっぽく喉を鳴らした。
「……は……っぁん」
すでに硬くしこった胸の先端を指先で撫でると、切なげに眉を寄せて吐息交じりに声を漏らす。
……もっと。
もっと、聞きたい。
そして、もっと自分の快感で溺れてほしい。
愛し尽くしたいというのが、今1番大きな欲望だ。
スカートの下に手を這わせ、太腿の内側をなぞってショーツへと上げ進める。
と同時に、開いたシャツの胸元に唇を寄せ、軽く吸っては舐めてやると、わずかに身体を震わせた。
「ん、ん……」
我慢するように唇を閉じて囁く声を聞いてから、焦らすように胸の先を掠める。
そのたびにじわじわと迫りくる快感を感じてか、足も緩く震えた。
「っんぅ……ん……ぁあっ」
ねっとりと絡めるように舌で撫でると同時に、口内に胸の頂を迎える。
転がすように舌で舐めてやると、いつしか首元へと彼女が腕を伸ばしていた。
「あ、あっ……ん」
こちらの動きに合わせて漏れる声。
……はぁ。
やっぱり、イイ。
胸元を責めながらショーツに手をあてがうと、しっとりと濡れた感じがあった。
こうなると、中がどうしたって容易に想像できるわけで。
「っやぁ……ん!」
指先で下ろすと同時に指を這わせると、案の定潤いきった秘部に指が沈んだ。
熱く、濡れた感覚に思わず喉が鳴る。
わざと音を響かせて蜜を指ですくい、ひだに沿って撫で上げる。
そのたびに腕へ力がこもり、あげる声がより一層淫らに届いた。
「う……ぁん……ふあ……」
「……どうした?」
「も……そんな…」
「言うこと、なんでも聞いてくれるんじゃないの?」
緩く首を振ったのが目に入って耳元で囁くと、うっすらと開けた瞳が見えてつい笑みが漏れた。
「……えっちぃ……」
「男はみんなそうだって、言ってるだろ?」
「け……どっ……っひぁ!」
ちゅくんっと飲み込まれた指を動かしながら耳を軽く舐めると、首を振りながら声を漏らす。
「んー……? どっち?」
「……や……だぁっ……」
「じゃあ、やめてもいいの?」
「っ……それは……やぁ……」
「どっちだよ……」
くすくす笑いながら甘噛みし、指を奥へと沈める。
「んんっ……ん、あ、あっ……」
途端に声が変わり、きゅっと中で締め付けが襲う。
「イヤじゃないんでしょ?」
「……ん……んっ」
ぎゅっと瞳を閉じたままで首を縦に振ったのを見て頬に口づけを落とし、1度指を抜き取る。
「っぁ……」
つ……と伸びた濡れた糸を瞳の端に捉えてから、ベルトを緩めて自身の準備を済ませる。
……しかし……。
「……いい?」
「う……ん」
髪を撫でてから覆いかぶさるように顔を近づけて囁くと、頬を染めて小さくうなずいた。
「んっ……ん! ……っくぅ」
「……っは……ぁ」
相変わらずイイ締まり具合。
そして、溶けてしまいそうな熱さ。
ぎゅうっと抱きしめながら息を漏らし、暫く自身を慣らす。
「……なんか……」
「え……?」
先ほど思ったことを口に出そうとして……やめた。
「っあん!」
「……すごい……気持ちい……っ」
ゆるゆると動き出すと、途端に息が荒くなる。
下手をすれば、すぐにイきそうな胎内。
……毎度のことながら、やっぱりヤバい。
彼女を組み敷いて眼下に収めるというのは、なんとも言えない支配感でいっぱいになる。
自分だけの、女。
それが……何よりの独占欲。
「ぅあ……あんっ」
「……気持ちいい……?」
身体を折って耳元で囁くと、息をつきながらうなずいた。
……うん。満足。
「…………どれくらい?」
「ふえ……?」
「どれくらい、気持ちいい?」
「……どれくらいって……言われてっ……も!」
心底困ったような瞳で呟かれ、それもそうかと思い直す。
が。
……どうしたって引きずってしまう……朝の夢。
この反応が演技じゃないのはわかるのだが、口に出してほしかった。
「……すごく……」
「すごく……?」
「んっ……うんっ……すごい……気持ちいいの……」
荒い息をついて瞳を閉じ、ぞくぞくとソソられるいい顔を見せながら彼女が呟いた。
……へぇ。
「あ、やっ……!」
「そんなに気持ちいい?」
「んっ、ん……!! 気持ちいっ……」
「……そっか」
「っ!? っあ……ふぁあっ……」
ぐいっと突き上げると同時に律動を送ると、今にも達してしまいそうな極上の顔を見せて甘く声を聞かせた。
「……俺も……っ気持ちいいよ」
「う……んっ……、ん、あぁ、やっ……」
「っく……」
彼女の高まりが近い証拠に締め付けられる自身。
腰に手を当てて動きを速めると、揺さぶられながら唇を噛む。
……いろっぽいな。
つーか、ヤバいだろ……。
自分によって覚えた、艶っぽい女の顔。
それが、今になって自分を苦しめるような気がした。
いや、無論いい意味でだが。
「あ、あ、んっ……! ダメっ……いっちゃ……あぁ」
「……気持ちいいんだろ……? いいよ、イって……」
「でもっ……ん、んんっ……ふぁ、あ、あぅっん」
「でも……?」
こちらとて、余裕綽々なワケじゃない。
むしろ、ギリギリ。
だが、ぎゅっと抱きつかれると、そんな状況でもより快感を与えてやりたくなる。
「先生もっ……気持ちよくなって……」
「……すごい気持ちいいよ」
ちゅ、と首筋に唇を寄せたまま呟くと、腕に力を込めてから……声が変わった。
同時に、自身の締め付けも強くなる。
「ん、んっ……! あ、ダ……メぇっ……! もぅっ……んっんっ!!」
ぞくぞくっと足を震わせると同時に、強烈な締め付けが幾度となく襲った。
「っく……ぅ」
同時にこちらも律動を早め、そのまま彼女の中で同じく絶頂を迎える。
……相変わらず、気持ちよすぎ。
大きく息をついてから抱き寄せ、力の入らない身体を腕に収める。
「……えっちぃ……」
「羽織ちゃんにだけね」
潤んだ声に笑みで応えると、小さく声をあげてから震える手で抱きしめてくれた。
こういうところは、何度味わっても……かわいくて仕方がない。
「……夢でよかった……」
「え……?」
「いや、なんでもない」
心底ほっとして漏れた言葉。
……安心した。いろんな意味で。
やっぱり、彼女にはコレくらい感じてもらえないと困る。
……むしろ、俺をさらに感じてもらえるのは大歓迎。
「んっ!」
ちょっと身体に触れると返してくれる、イイ反応。
……よかった。
まじまじと彼女を見てから処理を済ませ、ブラウスを閉じてやろうとした手が……つい止まる。
「……先生?」
ソファにもたれたままでこちらを見る、彼女。
リボンをつけたままで。
服を着たままで。
……だけど、しっかりと乱れた跡が残る。
…………んー……。
「……やらしい」
「っ……! そ、そんなっ……私が悪いわけじゃ……」
「いや、そうなんだけどさ」
慌てて胸元を閉じた彼女に苦笑を漏らすも、若干拗ねたように視線を逸らされた。
でも、そういう反応もやっぱりかわいいんだけど。
「……いい子いい子」
「もぅ! 私は子どもじゃないですっ!」
「子ども扱いしてないよ?」
「けど……!」
「はいはい」
頬を染めながら制服を直した彼女を腕に納めると、すんなり身体を預けてきた。
……素直だな。
つい漏れる笑みを噛み締めながら髪を撫でると、自分とは違うシャンプーの香りが広がった。
「まず、風呂入るか」
「え?」
「一緒に」
「…………う、ん……」
……へぇ。珍しい。
1度ですんなりうなずいてくれるなんて。
アレか? ひょっとして、『言うことをなんでも聞く』というのがまだ効力を発揮してくれているのかもしれない。
「……でも……」
「ん?」
おずおずと上げた眼差しをとらえると、1度視線をそらしてから再び合わせた。
「……えっちなことしないでくださいね?」
「えっちなことって?」
「っ……」
思わず、口角が上がる。
それを見た途端、彼女が頬を染めてぷいっと視線を逸らすものの、やっぱり止まらない。
「どういうこと?」
「もう、いいですっ!」
「そうなの? じゃあ、手を出してもいいってことか」
「だ、だからっ! それが、えっちな――」
「はいはい。さー、風呂風呂」
「もぅ! 先生っ!」
背中を押して浴室に向かうと、こちらを見てから呆れたように小さく笑った。
何気ないやりとりだが、やっぱり俺にとっては重要で。
……彼女がいなければ、落ち着かないし、何よりも不安定になる。
俺にとっての重要な要素。
今回は、いつにも増してものすごく運が悪かったような気がするのだが、まぁ……立ち直れたからいいとしよう。
……でも、この年でオジさん呼ばわりされるとは思わなかった。
…………くそ。
あれはもしかすると……この先も、結構引きずるかもしれない。
対処法も思い浮かばないし、こればっかりはな……。
「……先生?」
「ん? ……いや、なんでもない」
不思議そうに俺を見た彼女に首を振るも、ついため息が漏れた。
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