「……ん」
耳に当てていた指をそのまま首筋に下ろしてやると、ぴくっと反応を見せて小さく声を漏らした。
相変わらず敏感なのだが、これがツボによるものかどうかは……微妙に判断できない。
……そう。
先ほどまで押していた、あのツボ。
実は、あそこを押すことによって感度が増すらしいのだ。
いや、実際に試したことなんてないし、聞いたのも初めて。
……しかも、その話の出所と言うのが彼女の従兄弟である優人からとなると、一気に信頼度は低くなるんだが……まぁそんな話を聞けばどうしたって1度くらいは試してみたいもので。
普段から敏感な彼女ではあるのだが、やっぱり試してみたい。
これ以上求めるというワケではないが、見たい気持ちもあるし。
手を前に回してボタンを外しにかかると、慌てたように彼女がこちらを向いた。
「ん?」
「……先生……。ダメですよ……」
「なんで?」
「っ……ん……だ、だって……」
耳元で囁くように吐息を掛けると、くすぐったそうに身をよじる。
そのまま軽く舌を這わせながらボタンを外しきり、そっと素肌に手を伸ばすと身体を小さく震わせた。
「……あ、んっ……」
力なくもたれてくる、彼女。
滑らかな肌は、相変わらず吸い付くように心地よく手のひらへ納まる。
耳から首筋を伝うように舐めていくと、瞳を閉じながらうっすらと開いた唇から声を漏らした。
そのまま手を胸元に滑らせ、両手のひらで捉える……と。
「……うん。やっぱり、前よりずっと……」
「……や……ぁっ、えっち……」
「俺のお陰だな」
「ん……」
舌を這わせながら軽く揉みしだくと、そのたびに甘く声を漏らす。
柔らかく、心地いい感触。
指先で堅くしこった部分を撫でてやると、さらに身体から力を抜いた。
「あ……ん、っ……ん」
「……どうした?」
「や……えっち……」
「そればっかりだな。……でも、えっちなのは羽織ちゃんのほうだろ?」
「んっ……」
耳元で囁きながら軽く弾くと、ぴくんと身体を震わせる。
胸と首筋を責めるのをやめずに徐々に手のひらを下に滑らせてから、ズボン越しに秘部へ触れる。
「やっ……ん」
ぎゅっと閉じられた太腿の間に指を割り入れると、しっとりとした感触が布越しに伝わってきた。
……ふぅん。
「……ずいぶん、敏感だね」
「そ……んな……ぁ、や……だ」
声が、いつもと違う。
いつもより、ずっと甘いような……。
というか。
これだけの愛撫にも関わらず、相当濡れてるような気さえしてくるわけで。
「! んっ、せ、んせっ……」
するりとショーツごとズボンを下ろし、じかに指を伸ばす。
――……その途端、すでに満ちきっているんじゃないかとさえ思える蜜の量が、そこにはあった。
わずかに指を動かすだけでも、ぬるりと指を含んでくれる。
これは……アタリだな。
思わずそんなことが浮かび、口元が緩む。
「……すごい濡れてるけど……?」
「やっ……そんな……こと、ないもんっ……」
「あるだろ? ……ほら」
「っ……ぁ」
ちゅく、と蜜をかき分けてナカに這入ると、熱く潤っているお陰で難なく進めた。
「やだぁ……っ……んんっ……せんせ……」
耐えられずにもたれてくる姿は、いつもよりもずっと淑やかながらも……淫ら。
ツボの効果は満点らしい。
それが、楽しい。
……ものすごく。
「んぁっ……! やっ……」
撫で上げるように中の弱い部分を探ると、きゅっと締め付けが襲った。
いつもと同じはずなのだが、それすらも違うように見える。
……ヤバい。
腕の中でこれだけ快感に翻弄される姿を見ていると……我慢も限界に……。
なんてことを考えていると、彼女が手首を掴んだ。
「ん?」
彼女らしからぬ行動に瞳を丸くすると、そのまま腕にすがりつくように身体を寄せた。
「……せんせ……ぇ……」
熱い吐息がかかる。
潤んだ瞳をこちらに向けたままで、彼女が一層儚げな表情を見せた。
思わず……喉が鳴ると同時に、チェストへ手を伸ばす。
「んっ……ふ……」
片手で抱き寄せながら、口づけをする。
いつしか貪るように彼女を求め、もっと深く……と身体が要求していた。
響く、キスの音。
それが、より一層淫らな音となって耳に届く。
テーブルに手をつかせてから、昂ぶりを帯びた自身にまとわせ、指を抜いてソコにあてがう。
それだけでぴくんと反応を見せた彼女から唇を離すことなく、そのまま這入るべく突き上げる。
「んっ……ん……!」
途端に声が変わり、同時に緩く締め付けられる。
どちらのものともわからぬ吐息交じりの声と、交わりの音。
そのままキスを続けていると、先に彼女が離れた。
「……ん?」
「ん……ぁ、せんせ……」
崩れてしまいそうな表情で呼ばれると、余計にどうにかしてやりたくなる。
もっと、この顔を乱してみたい。
もっと、甘い声で誘ってほしい。
そんなどうしようもない欲求だけが、ただただ溢れるように身体を支配していく。
「や、ぅあっ……ん!」
後ろから抱きしめるようにすると、テーブルにもたれながら手を握った。
その手に重ねるように手のひらで胸を包んでやると、彼女がぎゅうっと力を込める。
「……反応よすぎ……」
「っ……ぁん! ……だって……ぇ」
幾度となく襲う締め付けで背中にもたれると、滑らかな肌が当たった。
「っん……ん……」
片方の手で胸元を弄りながら、背中に唇を這わせる。
軽く吸ってやりながら首筋に向かうと、ところどころに赤く跡が残った。
……うん。満足。
なかなかこうして彼女の背中をまじまじと見ることもないせいか、余計に満足感が湧いてくる。
たまには、後ろもいいな。
きゅうきゅうと締め付けてくる反応もそうだが、いかにも責めてるという雰囲気は決して悪くない。
「んんっ……ぁ……ふ」
ぴくんと背中を反らせると同時に、自身が締め付けられる。
漏れる息をそのままに耳元に寄せると、切なげな声が聞けた。
「……や……ぁ、だめ……なのっ……もぉ」
「もう? ……もう……なんだよ……」
「いじわるっ……ん! あ、ぅっ……ん」
弱い部分を擦り上げるたびに、ぞくぞくとした悦が溢れる。
……ヤバい。
ここで下手に動くと、先に果ててしまいそうだ。
少し体勢を変えて奥まで当たるようにすると、彼女が力なくテーブルに崩れた。
「……気持ちいい?」
「ひゃ……ぅあ」
軽く耳を甘噛みしてやりながら囁くと、何かを耐えるように首を縦に振る。
……声も出せないほど、ね。
ずいぶんと予想以上の効力を発揮してくれた、耳ツボマッサージ。
これは、今後も使えるかもしれない。
本当の目的を知らない彼女だから、間違っても俺に使ってくることはないだろうし。
まぁ、彼女がこうして2割増しに感じてさえくれれば、こちらとて快感は得られるんだが。
「ふ……ぁ……ん、んっ……く」
こちらの動きに対して漏れる、吐息交じりの声。
身近で聞けば聞くほどにイイものだが、一歩間違うと危うくもある。
ただでさえ、我慢できずに這入ったのに……こうなると……。
「……そろそろ、限界……」
「あっ……」
動きを止めてからそう呟くと、うっすらと彼女が瞳を開けた。
テーブルにもたれたままで顔を横に向けたその瞳に、若干涙が見える。
……悦による。
それが見えた途端、つい自制が利かなくなった。
「あ、あぅっん……! や、せんせっ……んん、だ……めっぇ」
「……羽織……すごい気持ちいい」
「う……ぅんっ……私もっ……あぁ、ダメっなの……!」
ぎゅっと抱きしめたまま律動を早めると、それに合わせて声を漏らした。
部屋に響く、交わりの音。
そして、彼女の喘ぎ声。
これは、ものすごくヤラシイ。
……なんて悠長なことを考えるだけの理性が残っているはずもなく、彼女を自分で満たすことだけ感じながら、首筋に舌を這わせていた。
「やぅんっ……! だ、めっ……そんな……されたらっ……ぁ」
「……されたら? どうなる?」
「ん……やぁ、いっちゃ……ぅっ……」
「……いいよ……ッ……乱れて」
「ぁ、やぁんっ……あぁ……もぉっ、も……だ、めぇっ!!」
「……っく!」
一際大きく声があがると同時に、奥からの強烈な締め付けが自身を襲った。
纏わり付く、胎内。
相変わらず極上で、狂いそうなほどの快感。
つーか、むしろ狂いっぱなしなんだけど。
「ん、んんっ……! や……ぅんっ」
ぞくぞくと粟立つ背中を撫でながら大きく突くと同時に、自身も彼女の中で昇り詰めた。
「……やらしー」
「先生が……えっちなんだもん……」
しばらく余韻を味わってから離れると、彼女が崩れるようにその場へ座り込んだ。
……ちょっと責めすぎたか。
かったるそうな後ろ姿を見ていると、今さら罪悪感というものが湧いてきたりする。
「でも、気持ちよかったろ?」
「……ぅ……」
処理を済ませてから前を向かせ、笑みを見せる。
すると、1度視線を逸らしてから瞳を合わせてきた。
「……ん?」
つい、意地悪く笑みが漏れる。
――……だが。
眉を寄せたままだった彼女も、小さくだがはっきりうなずいた。
「っえ……!?」
「……もう1回しようか……」
「なっ……! だ、めっ! えっち!!」
「……ンな顔するから悪いんだろ? ……欲しい」
「や……ぁ、えっち……ぃ」
その途端、彼女を押し倒すように顔を近づけていた。
耳元に唇を寄せ、軽くいやいやをする彼女に吐息をかける。
……今回、俺は悪くない。
だって、そうだろ?
真正面からまじまじと見られて、なおかつかわいくうなずかれたら……な。
普通の男だったら、たまらなく欲しくなる。
……俺自身もちろん普通の男なワケで。
「……ダメ?」
「だ……って……こんな場所で……。それに、あの格好っ!」
「じゃあ、ベッドで」
「わっ!? そ、そういう問題じゃ――」
ひょいと抱き上げてから寝室に向かうと、激しく抵抗をされた。
これは予想外。
というか、若干傷つく。
「なんだよ。そんなに後ろ向きはイヤなの?」
「そ……そうじゃなくてぇ……」
「じゃあ、いいだろ。明日、休みだし」
「それは関係ないのっ!」
「今度は普通にするから」
ベッドに座らせながら顔を近づけると、一瞬言葉を飲み込んでから上目遣いにこちらを見上げてきた。
……んー?
「……だ、だから……」
「今、考えたろ」
「かっ、考えてません!!」
「なんだ、羽織ちゃんもする気あるんじゃないか。……じゃあ、いいよな?」
「……よくないのにぃ……」
とはいえ。
そのまま軽く押し倒してやると、見せるのは緩い抵抗。
……うん。
このままもう1回イケそう。
そんな判断を下しながら手を這わせると、ぞくりとするほどイイ顔を見せた。
「……んっ、せ……んせっ……」
「ダメ。もう無理。待てないから」
「だ、だって! 今――」
「……関係ない……」
「ぁ……んっ」
囁くように耳たぶへ舌を這わせると、次第にその抵抗も薄れていく。
……あ、そうそう。
「んっ」
ぱく、と耳たぶを甘噛みしてやり、例のツボを舌で探る。
「ん……っ……ぁふ」
甘く漏れる声。
……うん。
もう1回と言わず、くれるだけもらおう。
いつしか生まれたそんな考えを抑えながら、再び彼女に口づけを落とす。
Trick or Treat
俺の場合は、そんなモノ関係ない。
どっちにしろ、彼女を手に入れることはできる。
褒美をくれなきゃ、責めてやるだけ。
責められてもいいと言われれば、褒美としてもらうだけ。
……うん。
我ながら、結構イイ考えだな。
今年のハロウィン、いい日になったかも。
再び見せてくれた甘い顔を覗きながら、自然に笑みが漏れた。
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