「ぁあっ……ん」
押さえようと努力はしたんだろう。
手の甲を口元へ当てたのは見えたが、秘所をなぞるように指先を沈めると、たちまち甘い声が漏れた。
「あ、あっ……ぁ」
ゆっくりとひだをなぞり、十分に濡らしている蜜を絡める。
すでにぷっくりと主張してる花芽を撫でると、息を継ぎながら足を震わせた。
「すげぇ濡れてる。シたかったんだろ？」
「っ……ち、が……ぁ、あっ……」
「素直になっとけ。身体が十分反応してンだから」
「も……たーくん、声が……えっち」
「それはお前だろ」
反応もよければ、声も十分艶があって。
眉を寄せて近い距離で見られれば、当然反応する。
ま、素直に言うとは思えねぇけど。
指を増やしてナカを探り、親指の腹でソコを撫でると、Ｔシャツを握った手に力がこもった。
「は、ぁ、あっ……んぁ」
首筋から鎖骨、そして胸元。
辿るように口づけるたびに、ひくりと身体を震わせて。
期待してンだろ。それこそ。
つんと上を向いた胸の頂を舌先でかすめると、押さえるように手の甲はあるもののしどけなく声は溢れた。
「あぁ、あっ……ふ、ぁ……っ……たぁく……っ」
「気持ちいいンだろ？」
「そ……ぁ、やぁ……っ」
舌を絡めるように舐めると、どちらでも濡れた音が響く。
前のときよりも、反応が柔らかい。
……ナカもな。
ぐちゅりと蜜の音は大きく響き、自身も多少息が上がる。
「んんっ……、ん……ぅ」
胸の先をいじりながら口づけ、より深くまで指を這わせると、肩へ置いた手がさまようように動いた。
角度を変えてさらにキスを落とし、花芽を撫でるように刺激すれば当然声は変わって。
……は。いい声出すな。
煽られるのはもちろんだが、無意識のうちに『もっと』と言われている気にもなるから……行為はやまない。
「あ、あぁっ、ん……っ……たーくんっ……た、くっ……」
切羽詰ったように名前を呼ばれ、むさぼるように口づける。
果ては近いンだろ。
思う存分喘いでくれていいんだが、這入りたい気持ちも大きい。
……つか、欲しがってくれてもいいんだけど。
ありえない展開ながらも、もしかしたらレベルでは想像する。
「んっ……！」
指を抜き取り、身体を離す。
大きく息を吸ったのがわかったが、けだるそうに俺を見つめた葉月は、それはそれはしどけなく唇を開いてから喉を動かした。
「……えろい」
「もう……たーくん、そればかりじゃない？」
「前も言ったろ。正直な感想だって」
軽く口づけてからベッドを離れ、探すのは……アレ。
この間買ったのでもいいが、どっちかってぇと処分の名目で使っておきたいところ。
「……たーくん……？」
「まぁ、ちょっと待て」
どこへやったか、正直覚えちゃいない。
……そりゃそうだ。
当時は、使うアテがなかったからな。
まさか、こんな急に機会が来るなんて誰も予想してなかったし。
……俺も、コイツも。
そして優人も、もしかしたらそうかもな。
「……？」
「いーから。……あんま気にすんな」
机に置いた本の下に埋もれてた箱を手に、ベッドへ半分胡坐をかく。
チョコ、ね。
某有名メーカーのチョコクッキーの最下部にあったのは、香りつきのブツ。
……にしても、このテのヤツに匂いが果たして必要なのか、と見るたび思うんだがどーなんだ。コレ。
まぁ、別になんでもいいんだけど。
ちゃんと使えれば、な。
「……チョコレート？」
「優人にもらった」
今からちょうど１ヶ月前。
まだ葉月を抱いてなかったときに受け取ったこれを、寝かせたわけじゃないがここで使うとはな。
家でシなきゃ思い出さないシロモノ。
わずかに封を切って葉月の鼻先に当てると、ぱちぱちまばたいた。
「……あ……」
自身へまとわせ、膝を持ち上げるように手のひらを当てる。
そのとき、ちょうどわき腹のラインが見えてか、つい片手はそっちを触れていた。
「ん……くすぐったい……」
「ここ。普段見ねぇからな」
風呂へ一緒に入りでもしなければ、今の時期は目につかないところ。
夏になれば多少目に入るだろうが、普段はまずありえない。
ふくよかな胸元から……わき腹。
辿るように指先で触れると、感じてるのとほぼ同義の声を漏らす。
「俺にはねぇ部位だからな。なかなかいい眺めだ」
「っ……」
男女で肋骨の位置が違うとかなんとかいう説が一般的らしいが、こういうときでもなければまず見ないくびれのライン。
くすぐったそうではあるが、手のひらを往復させるとわずかに違う反応も見せる。
「ぁ……」
「……やっとだ」
ぼそりと漏れたのは、反芻か。単なる感想か。
先端をあてがい腰を寄せると、たちまち葉月の声が変わる。
「んぁっ……あ、ああっ……」
「……は……」
熱くまとわりつく胎内は、指でわかっていたが、より柔らかく感じた。
どくどくと脈打つ自身を包みこむように、吸いつく。
……気持ちいい。
キツさも、熱さも、声も。
わずかに動くと見せる表情も、ぞくりと背中を粟立たせる。
「は……ぁ、あっ……ん、ぁ」
「……えっろ」
「も……あぁ、ふ、あ、たーくん……っ……そこ、やぁ……」
「嫌ってンだよ。喜べ」
「だって、だっ……あぁ、ん、んっ……」
聞きようによっては、泣きそうな声にも取れる。
耳へ届く蜜の音と、吐息と……声と。
ゆっくり律動を送れば、胸元へ当てている手が服を握る。
「く……」
「っきゃ……ぅ、あ、あっ……ん……！」
角度を変えてさらに腰を密着させると、一層濡れた音が響いた。
はー……えっろい。
ベッドが軋み、ヘタしたら下にも伝わってる気がしなくはないが、そこは大人だろ。
相手が葉月だってわかってンだから、暗黙を貫こうぜ。お互いな。
どくどくと脈打つ自身を打ちつけるようにより深く穿つと、背中がぶるりと震えた。
「……あー……イク」
「んんっ……ん、あ、あぁっ……！」
ぞわりと背中が粟立ち、律動が速まる。
揺さぶるたびに胸が揺れ、視覚的には十分。
「ひゃ、ぁああっ……そこっ……そこ、やぁっ……ん！」
「気持ちいいクセに」
「だめっ……ぇ……ああ、たぁくっ……たぁくんっ……！」
胸の先を弄り、腰の角度を変えてより擦るように密着させると、たちまち声が変わった。
ナカでイっとけ。
どうせなら、一回ずつ覚えてったほうがよくねぇか？
おもしろいじゃん。それこそ。
世の中すべて、楽しんだモン勝ちなんだから。
「だめぇ、そこっ……あ、あっ……あぁぁあっ、んんっ……！！」
「……っく」
ふるふる首を振った葉月が、シャツではなく俺の腕をつかんだ。
びくびくと震え、高い声が上がる。
柔らかかった胎内がすべて持ってく勢いでうねり、からみつく。
はー……最高。
イク瞬間のぞわぞわした感じが残って、鳥肌が立った。
「は……ぁ、あ……んぁっ」
「……あー……くっそ気持ちよかった」
「もう……たーくん……」
「お前、今回１回も呼び捨てしなかったな」
「え……？」
「そう呼ぶなつったろ、前回」
ナカに入ったまま肘を折ると、鼻先がついたところで葉月が唇を噛んだ。
無意識だろうが秘所がひくつき、ぞわりとする。
俺がこんなってことは、お前はよっぽどだろうよ。
惚けたような眼差しで笑うと、一度視線を逸らしてから頬に触れる。
「……孝之……？」
「ンで疑問系なんだよ」
「だって……もう。どうして呼ばせたがるの？」
「呼ばせたいんじゃなくて、いつもみてぇに呼ぶなつってんだよ」
くすくす笑われ、違った意味でくすぐったい。
日常じゃありえないことシテんだから、よくね？
クセになったわけじゃないが、聞きたい気持ちは少しある。
そう呼ぶことで、より反応がよくなる気がするから。
……スパイスみてぇなもんだな。
うまくなるなら、当然そっち選ぶだろ。
「ん……」
散々味わったからか、角度を変えるだけで、ちゅと音が立つ。
うっすら目を開いたとき、まつげの感触がくすぐったくもあったが、まるで引き寄せるかのように葉月は俺の耳元へそれぞれ両手を伸ばした。
「これなら眠れンだろ」
「……もう。朝起きられないかもしれないでしょう？」
「日曜くらい寝とけって」
時間的には、だいぶいい時間。
普段のコイツならまずありえない時間だけに、きっと告げないほうが身のためか。
惜しい気はするが離れて拭い、脱がせたパジャマを拾ってやる。
律儀にもベッドへ座りなおした葉月は、まじまじそれを見ると胸元へ引き寄せてから……俺に手を伸ばした。
「っ……」
「……くすぐったかった？」
「うるせぇな」
指先が触れた瞬間、ぞくりと反応して小さく身体が震えたのがおかしかったらしく、意外そうな顔をしてくすくす笑う。
……悪かったな。らしくなくて。
「ぁ……」
舌打ちの代わりに片手で引き寄せ、口づける。
明日の予定は今のところない。
日が変わって憑きものも落ちたし、平和だろ。きっとな。
妙な来訪者が訪れないことを強く願い、そっと唇を離す。
だが、どこか名残惜しげに顎を上げたのが見え、漏れた笑いとともにもう一度口づけていた。
