「先生のこと、好きなんだもん」
「……それは――」
「後悔しないから。……だから……抱いてよ」
「っ……」
 1番、聴きたくなかった言葉だ。
 ……俺を試してるのか、と迷いもする。
「……っ……あ」
 思わず彼女を抱きしめると、自分が考えていたよりもずっと華奢だとわかった。
 制服を着ているときにはわからなかった、素の身体。
「…………」
「平気。訴えたりしないから。……なんなら、念書のひとつくらい書いてもいいけど?」
「お前な……」
 薄いTシャツ越しに感じる彼女の温もりで一瞬喉を鳴らすと、すぐここで絵里が小さく笑った。
 どこまでが本気でどこからが冗談なのか、さっぱりわからない。
 それでも、どうやら鼻で笑い飛ばせるだけの理性は残ってなかったらしく、どくどくと身体が脈打つ。
「……途中で止めてやれるだけの余裕なんてないからな」
「最初からわかってるし、そのつもり。……ちゃんと、最後までして」
「……ったく」
 瞳を閉じて彼女の言葉を噛み締めるようにしてから、唇を寄せる。
 女として意識した以上、どうしたってこうなるわけで。
「っ……」
 髪をなぞってやってから頬に手を伸ばし、再び口づけを落とす。
 唇を舌でなぞってから、そのまま滑り込ませる。
 おずおずと応える舌に絡めながら軽くついばむように口づけると、次第に彼女自身も変わっていった。
「……せんせ……」
「ったく、色気ねぇな。名前で呼べよ」
「…………純也……」
「……っ」
 久しぶりに味わう、甘美な痺れ。
 囁くように自分の名前を呼ばれ、身体の奥から欲求が湧き始める。
「絵里」
「っ……」
 彼女に応えるように、こちらも名前を呼ぶ。
 一瞬見せた、はにかむような嬉しそうな顔。
 ……お前、そういう顔もできるのか。
 普段見せている強気の表情とうってかわって、それはそれはかわいらしく笑った顔を見た瞬間、自分も笑みが浮かんだ。
「っ……」
 ちゅ、と頬に唇を寄せてからTシャツ越しに胸元へ手を伸ばすと、小さく身体を震わせた。
 ダイレクトな刺激。
 もしかして……初めて、ってヤツか。
「……怖いか?」
「…………平気」
 こういうときは、強がるのかお前は。
 さっきと違って、唇を尖らせて俺を睨みつけてる姿は少しだけ笑える。
「かわいいトコ、あるじゃないか」
「なっ……!」
「優しくする……ってほどできる自信はない。だから、あんま期待すんなよ?」
「……ん」
 こくん、とうなずいた彼女に再び口づけながら、シャツの上からやんわりと胸に手を伸ばす。
 見た目同様意外とあるな……なんて馬鹿な考えを浮かべながら舌で口内を撫でると、小さく声を響かせた。
「んっ……!」
 Tシャツをたくしあげて直に触れると、滑らかな肌が心地いい。
 切なげに眉を寄せて何かを耐えるような仕草すらも、そそられてしまう要因に変わる。
「あ、やっ……んっ」
 指先でなぞるように先端へ触れると、首へ回した腕に力を込めた。
「……絵里」
「っ……は、ぁんっ」
 名前を呼ぶたびに、身体から力が抜けていく。
 それがわかったからあえて彼女の耳元で囁くと、悦を受けている表情がまざまざと見えた。
 ……ヤバい。
 もう、何度目だ。
 触れるたびに、もっと欲しくなる。
 …………ヤバいよな、俺。
 堕ちるところまで堕ちる覚悟はできていたものの、予想以上。
 シャツを脱がせてしまってから鎖骨を舌でなぞると、そのたびに彼女の腕が震えた。
 多少なりとも感じている証拠を確信しながら舌を胸元に寄せる。
「んっ! ……んっ……はぁっ」
 ぎりぎりのラインで舌を止め、反応を伺う。
 だが、しっかりと閉じられた瞳からは、イマイチ計り知れない。
 ……まぁ、今さら抵抗されても困るんだが。
「あ、やっ! ……んっ」
 舌先で撫でるように先端を掠めると、途端に甘い声が響いた。
 背をそらせ、ぞくりとしたいい表情を見せる。
「っく……や、っあんっ」
 足りないほどの欲情。

『お前なんかに欲情するかよ』

 先ほどの自分の言葉が、頭に響く。
 ああでも言わなければ。
 ああ言って彼女を遠ざけなければ。
 ――……確実に、あの場で押し倒していただろう。
 1度耳にすれば取れなくなる甘い声。
 もっと聞きたいと思った。
 自分によってもたらされる快感での、彼女の甘い声が、崩れそうな表情が……心底、欲しい。
「んっ……純也、ぁ」
「……どうした?」
「や……恥かしいっ……から」
 ハーフパンツの裾から手を這わせると、途端に足を閉じた。
 彼女らしくない、か弱そうな反応が少し嬉しかったりして。
 普段強がってるクセして、結局はまだまだ女の子ってことか。
「……途中でやめないって言っただろ」
「けどっ……んっ、ん、や……」
「1度言ったことには、責任持つ主義なんだよ」
「! っ……あ、んっ」
 滑らせるように手を奥に忍ばせると、着替えがなかったことが功を奏してか、あっけなく素肌に当たった。
 しっとりと濡れた感触に指を動かすと、いやいやをしながらしがみつくように抱きついてくる。
「だめっ……てば、ぁ」
「……なんだよ。ここにきてダメとか言い出すなよな」
「だって……!」
「……絵里」
「っ……なんか……意地悪くない? そんな……名前呼ばれたら――」
「絵里。……嫌なのか? ホントに……」
「……馬鹿……嫌なワケないでしょ」
「だろ? それじゃ、大人しく従えよ」
「んっあ……!」
 するりとハーフパンツごと下着を脱がせると、恥かしそうに足を閉じた。
 ……ったく。
「色気ねーな」
「なんでよっ」
「……男物の下着脱がせることほど萎えるモンはないぞ、お前」
「しょうがないでしょ!」
 わざとらしくため息をつくと、眉を寄せて軽く睨まれた。
 ……まぁ、しょうがないんだけどな。
「…………やる気なくした?」
「何が?」
「だからっ! ……続きの」
 少し拗ねたような顔を見せた彼女に瞳を丸くしてから、自然に笑いが漏れた。
 そのまま耳元に唇を当て、わざと息をかけて囁く。
「まさか。ンなことくらいで、諦めるかよ」
「……ん……っあぁっ!」
 くすぐったそうに身体をよじる彼女をしっかりと捕まえてやってから指で秘部をなぞると、途端に高い声があがった。
「……ずいぶんと――」
「やっ、だ……!純也の馬鹿っ」
「馬鹿はないだろ、お前。 ……そういうこと言ってるとな」
「……? ちょ、えっ!?」
 ぐいっと足の間に身体を割り入れて太ももに口づけてやってから、そのまま花芽を舐める。
 すると、案の定背をそらせて手に力を込めた。
「やっ、やぁんっ! ん、んっ……はぁっ」
 わざと音を響かせるように舌で舐めると、びくびくと身体を震わせる。
 そのままで指を中にうずめると、きゅっとしっかり締め付けられた。
「はぁっん……! んっ、もぉ……やだぁ……」
「……嫌ならやめるけど?」
「っ……そんな気っ、ないくせに!」
「俺のことよくわかってるじゃねぇか」
 顔を上げて見えるように唇を舐めると、ぷいっと顔を逸らした。
 ……意外と、反応がかわいいのはなんでだ。
 なんつーか、うぶとでも言えばいいのか。
 まあ、初めてなのに手馴れてたらそれはそれで嫌だけど。
「っあ……あっ、ん!」
 指を増やしながら割り開くように進めると、さすがに拒まれが強くなる。
 もちろん、すぐにでも這入ってしまいたい。
 だが、そんなことをすれば痛いに決まってるしな。
 ……もう少し、がんばれ俺。
「は、ぁ……はぁっ……ん」
 目の前で喘ぐ彼女を見ながら自己暗示をかけ、徐々に慣らしていく。
 もう少し、あと少し。
 そうすれば、一緒に気持ちよくなれる。
「っ! やっ、あんっ」
 指を進めるうちに声が変わった。
 ……ふぅん。
「ここか」
「っ純也……や、めっ……んん!」
 辛そうに眉を寄せながらも、声がかなり悦を帯びて色っぽくなった。
 なおかつ、この表情。
 反応すべてが、ここが弱いとしっかり示している。
 ……間違いないな。
 わざとそこを責めるように指を進めると、力ない手が徐々に震えた。
 そろそろ、か。
 イキそうなのを察知し、中にうずめた指はそのままで再び花芽を口に含む。
「っ!? やぁっん!! 純也っ、やめっ……てぇ!」
 甘く濡れた声に多少残っていた理性がグラつくものの、ここまできて『じゃあやめる』とはいかないのが男ってもの。
 音を立てて彼女自身の蜜と混ぜるように舐めあげると、暫くしてぎゅっと肩に当てられた手に力がこもった。
「あ、やっんっ……いっ、イっちゃう、イっちゃ……あぁあああっ!」
 囁くように漏れた声に構わず舌をねっとりと絡めるようにしてやると、がくがくと身体を震わせて爪を肩に立てた。
「んんっ、あぁっ! やっ、んっ……ンっ! ……はぁ、は……っ」
 どっと溢れるように蜜が指を濡らし、それと同時に何度もきつく締めつける。
 鼻先に香る、新しい蜜の濃い香り。
 ……えろいだろ、お前は。
「やだぁ……もぉっ……」
 泣きそうな声ですがりつく絵里から指を引き抜き、しゃぶるように舐める。
 すると、うっすらと涙を溜めた瞳で、しっかり睨まれた。
「もぉやだぁ」
「なんで?」
「だって……! あんな……の、って……」
「なんだよ。すげー気持ちよかったろ?」
「っ! 馬鹿っ!!」
 ぺしっと肩を叩かれて苦笑を見せると、肩で荒く息をしながら瞳を閉じた。
 そんな彼女を見てベッドの棚に手を伸ばし、引き出しから小袋を手にする。
 家で使うなんてこと、これまでなかったからな。
 まさか、自分よりずっと年下の女子高生で、未経験の相手に使うことになるとは。
「…………」
 自分の理想とは大きくかけ離れたものの、今現在夢中にさせられているのは確か。
 昂ぶった自身にまとわせるように身につけてから、そっと押し広げるように当てる。
「……いいか?」
「う……ん」
 少し不安げに揺れる瞳の彼女に軽く笑みを見せてから、そっと……中へと這入る。
「っ……」
 さすがに、あの程度の刺激でそう簡単に迎えてくれるはずはなく。
 どちらかというと、こちらが先に果ててしまいそうだった。
 ……負けるかっての。
 我ながら少し馬鹿だと思うが、絵里をしっかりと愉しませるためにも、そんなワケにはいかない訳で。
「んっ……ぅ」
「痛いか……?」
「……平気っ……」
 彼女が素直に『うん』と言うはずないことは、わかってる。
 だが、確かにものすごい痛みに耐えている、という感じでもなかった。
「……無理しなくていいぞ。それこそ、別にここまででも――」
「それはやだ!」
 すがるように瞳を合わせて首を振る絵里に瞳を丸くすると、息をついてから唇を開いた。
「……途中でやめないって言ったの……純也でしょ……」
「そう……だな」
「だから、ちゃんと……最後までして」
 少し拗ねたような目をする彼女に笑って口づけると、嬉しそうに笑みを見せた。
 ……あーもー、なんだよお前。
 すげーかわいいじゃないか。
「息、できるな?」
「……うん……」
 瞳を合わせて彼女に告げると、素直にうなずいた。
 髪を撫でながら、ゆるゆると自身を進めていく。
「ん……はぁ…っ」
 徐々に飲み込まれていくものの、それと同時に襲うキツい締め付け。
 ……たまらん。
 だが、何度か動きを止めて荒く息をついてから這入る、を繰り返しているうちに、しっかりと根元まで這入りきることができた。
「……はぁ……」
 どくどくと胎内で脈打つ自身。
 思わず目を閉じて大きく息を吐くと、絵里が頬に手のひらを当てる。
「平気……?」
「……それはこっちのセリフだよ」
「私は平気……だもん」
「……それはそれは」
 大きく息をついてから、彼女に口づけをする。
「ッ……んっ」
 角度がキツくなったせいか、絵里が声をあげた。
 ……あー……動きたいかも。
 落ち着いた自身を感じてそんなことを考えると、つい口づけが深くなってしまう。
 それをしっかりと受け止めて応える絵里も、やけに愛しかった。
「んぁっ……やっ……ん」
 ゆるゆると動き出すと、彼女自身の弱い部分をしっかりと撫で上げているらしく、甘い声を漏らした。
 初めてということもあって、えらく締め上げてくれる胎内。
 奥まで届くように彼女の足を軽く上げてやると、案の定声が変わった。
「やっ! あん、だ、めっ……!」
「……ダメじゃないだろ……」
「だって……! また、ヘンにっ……やぁっ、あん!」
「ッく……絵里っ……」
「純也ぁっ……ダメ、なのっ……! もぉ……イっちゃう……!!」
 彼女の果てを感じて律動を早めると、それに伴って揺れる胸が目に入る。
 制服だとさすがにそこまでわからなかったが、結構……こう……イイ感じにあるわけで。
 自分の動きに合わせて揺れるバストが、やたらとえろいのはどうしてくれる。
「あ、あっ! ん……やだ……もぉっ!!」
「……っく、ぅ」
 ぎゅっという、激しい締め付け。
 ……に耐えられるだけの余力もなく、自身もあっさりと彼女の前に屈した。
「……! ……んっ!」
 貪るように唇を求めて舌を割り入れると、2度果てただけあって深く絡むキスだった。
 そんな彼女から、ちゅ、と小さく音を立てて唇を離すものの、目の前にあるのは名残惜しそうな顔。
 ……名残惜しい、か。
 そう思ってるのは俺のほうだ。
 久々の感情に小さく笑うものの、うっすらと潤んだ瞳で見つめられていると、こう……。
「んっ……!」
「絵里」
「……何?」
 ぎゅっと抱きしめると、彼女の鼓動がダイレクトに伝わってくる。
 どくどくと激しく響く、鼓動。
「……お前、かわいいよな」
「っな……なっ!?」
 ぽつりと漏らすと、驚いたように絵里が瞳を丸くした。
「そんなっ……思ってもない言葉は――」
「俺はそんなに器用じゃねぇよ」
「……もぉ……何よ、やめてよね」
 恥かしそうに顔を胸にうずめてくる彼女は、やっぱりかわいいわけで。
 ……こんな顔もするんだな、なんて改めて感じたりした。
 ――……そう。
 このとき初めて、ガラにもなく『コイツだけは護ろう』と思ったことを今でも覚えている。


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