「んんっ……!」
 柔らかくて、温かくて。
 ……やっぱり、彼女は俺にとっての特別なんだと実感する。
「ぁ……や、っん……」
 ぴく、と震えた腕を撫でながら手を組むように手のひらを重ねると、愛撫のたびに緩く握られた。
 それが、どうしてもかわいいと思えて。
 ……だからこそ、もっといろいろしてやりたくもなる。
「ん……っ……」
 指で弄っていた胸の先端を口内へ迎えると、ひときわ高い声があがった。
 丹念に口づけてから舌で撫で、彼女の顔を伺う。
 ……相変わらず、何かを耐えるように軽く噛まれた唇と、ぎゅっと閉じられた瞳。
 そして赤く染まっている頬が、なんともいえない位の色香を漂わせている。
「……ひぁっ……!」
 軽く歯を当ててから離れ、そのまま下腹部へ向かう。
 もう片方の胸に触れていた手を先にスカートの中へ忍ばせると、わずかに湿った感じが指先に当たった。
「……そんなにイイ?」
「っ……や……だ……」
「嫌じゃないだろ? ……誰の身体だと思ってるの?」
「……いじわる……っ……」
 はぁ、と息をつきながら眉を寄せた彼女に、瞳が細くなる。
 ……相変わらず笑みが浮かぶのは、もう、今さらどうしようもないな。
 彼女に対しては、やっぱり手加減とかそういう言葉は見当たらない。
「っやぁ……!」
 ショーツの上から撫でていた秘所へと、直に指を進める。
 ――……と。
「……やっぱり、羽織ちゃんのほうがえっちじゃないか」
「そ……んなこと……っ」
「あるだろ? ……こんな濡らして」
「っ……やぁ……!」
 にや、と自分でもわかるくらいの笑みを見せると、一瞬瞳を丸くした彼女が、顔を逸らしてしまった。
 ……ちょっと、意地悪がすぎたかもしれない。
 でも、自分でもどうしようもないんだから仕方ないだろう。
 ……クセみたいなモンだ。
 きっと。
「ぁ……っ……あ……!」
「……すごい濡れてる」
「も……やぁ……」
 わずかに指を動かすだけで、くちゅと濡れた音が耳まで届く。
 それだけじゃなくて、当然指先はなんの摩擦もないかのように、ゆるゆると動かせるわけで。
 ……イイ反応。
 ときおり漏れる彼女の甘い吐息に、一層自身が刺激された。
「あっ……んん!」
 つつ、と指を進めると、ぷっくり自己を主張しているかのような突起に当たった。
 軽く触れるだけでも、これほど甘い声を聞かせてくれる場所。
 ……相変わらず、何度聞いても飽き足らないイイ声と、イイ反応。
 だからこそ、やめられない。
「はぁっ……あ……んんっ……せんせ……や……」
「……嫌じゃないだろ? ここがいいクセに」
「だっ、て……っ……ぅ、んっ……!」
 ぎゅっとシャツを握りながら、震える身体をよじる彼女。
 しかしながら、そのたびにも当然……濡れた音は響くワケで。
「っんゃ……!?」
「……すご……熱い」
「や、だめっ……! せんせ……ぇっ……やだぁ……!」
 親指の腹でソコを撫でたまま、中へと指を含ませた途端正直な感想が漏れた。
 ……いつも以上に、満ちていて熱い胎内。
 これは――……ヤバい。
「っ!? ……ふあ……!」
 ある意味、タガが外れた。
 彼女の足を開いて身体を割り込ませ、指を入れたまま唇を寄せる。
「やっ……やだっ! 先生、そんっ――……っやぁ!!」
 舌先で触れるだけの余裕もなく、花芽を吸い付くように含んだ途端、泣きそうな彼女の声が聞こえた。
 ……だけど。
 内心は、俺だって正直いっぱいいっぱいで。
 むしろ――……このまま這入りたい。
 今、この状況を直に味わいつくしたい。
 それが、正直な気持ちだった。
「やぁんっ……先生、やっ……そんな……や、だめ……ぇ」
 ひときわ荒くなった息を感じながら、舌先で責めあげる。
 充血して、たっぷり蜜が絡んだソコは、いつも以上に彼女へ快感を与えてくれているようで。
 ……甘いというよりは、甘美な香りと味。
 これだけでもソソられるのに、絶え間なく惜しげなく彼女の声が聞こえているんだから――……。

「……たまらないね」

 唇を離すと同時に、吐息が漏れた。
「羽織ちゃん」
「……ふ、ぇ……?」
 瞳の端に、若干涙を溜めた彼女。
 ……どうやら、いつもよりずっと刺激が強かったのか、声も濡れていた。
「……イイ?」
「え……?」
「這入っても」
「っ……そ、れは……」
 まっすぐに瞳を見つめて、彼女の反応を伺う。
 今日だけは、どうしてもこうしたかった。
 最初から最後まで、彼女を愛している間はずっと。
 ……ずっと、こうして彼女にひとつひとつ訊ねて返事をもらいたかった。
「……ぅん……」
 期待通りの表情と待ち望んでいた言葉で、彼女が許してくれる返事を……ずっと。
「っ……ん……」
 ゆっくりと顔を近づけてから、唇を塞ぐ。
 丹念に何度か離れては落とし、そのたびに唇を味わうようにキスをする。
 唇の感触が、やっぱり好きで。
 だけど、口内もいつもよりずっと深く味わいたくて。
「……ん……んっ……」
 ……珍しいな。
 彼女と繋がる前に、こんなキスを自分から求めるのは。
「はぁ……ふ……」
 ちゅ、と音を立てて唇を離すと、彼女が惚けた顔でようやく瞳を開けた。
「……うまそうな顔」
「…………えっちぃ……」
「まぁね」
 とろんとしたその顔を見ていると、またすぐにキスをしたくなる。
 ――……が。
 珍しく、彼女から両頬へと手を伸ばしてきた。
「……先生……なんか、いつもと違う……」
「え?」
「なんか……すごく……すごい……」
「なんだそれ」
 なでなで、といつも俺がするように彼女が頬を撫で、ぽつりと囁いた。
「……すごく……好きなの」
「好き……? 何が?」
「……先生のこと」
「っ……」

「今してくれたキス……すごく嬉しかった」

 ――……壊してしまうかもしれない。
「っん!? っや、……あ……!」
「……羽織」
「せ……んせっ……! ああっ! ま……って、んん……!」
 そう、思ったのはしばらく経ってからで。
 ……このときはもう、咄嗟のことで詳細までよく覚えていない。
「んん、ん……っぁ……せんせ……せん……っ……せぇ……!」
「羽織……すっげぇかわいい。ヤバい……っ……すごいイイ」
 直に感じる彼女ほど、危なくて、だけどひどく欲しくなるモノはない。
 ハイリスク、ハイリターン。
 その言葉は、まさにこのことなんじゃないだろうか。
「あ、あっ……ん、や……っはぁあ、ん……!」
「……気持ちいい?」
「ん、んっ……すごく……っ……いいの……」
「……そっか」
 こくこく、と小さくうなずく彼女が目に入るたびに、心底嬉しい気持ちが身体を巡る。
 愛しくて、たまらなくて。
 ……欲しくて、どうしようもなくて。
「……羽織……っ……」
「んっ……祐恭さ……ん」
 彼女に『先生』と呼ばれるのは、もちろん嫌いじゃない。
 だけど、こうして数少ない機会の中で彼女に名前を呼んでもらえるとき、決まって必ず『この名前でよかった』と思う。
 ……自分の名前が、これほどイイものだったんだと思えるくらい、どうしようもなく嬉しくなるから。
「はぁっ……ぁ、も……っもぉ、だめ……っ……!」
「……っく……イイよ……イっても……」
 互いに荒く息をつきながら、身体を求めて手を伸ばす。
 すぐに触れる、彼女の柔らかな身体。
 掻き抱くように抱きしめると、安心感からか瞳が閉じた。
 ……ぎゅっと背中に回してくれた彼女の腕が、離れないように。
 この先どんなことがあっても、お互いが迷ったりせずにいられるように。
 ――……どうか。
 どうかこの願い、俺の生涯の幸運と引き換えに叶えてもらうことはできないだろうか。
「……愛してる」
「っ……嬉しい…………私も……愛してます……」
 このときばかりは、他力本願で心底否定的だった“祈り”というモノを神に捧げてもいいとさえ思った。


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