「あぁっ……!」
「ッ……」
キャミソールをたくしあげて胸を正視した途端、今までにないほど身体が反応した。
自分の下で、目を閉じて口元に握った手を当てている穂澄は、いつもより小さく見えて。
……おかしくなりそうだ。
ごくりと喉を鳴らせてからおずおず手を伸ばすと、指先で触れた途端、彼女は大きく反応した。
「は……、はっ……ぁ……あ」
今までとは違い、高く、ひどく淫らな声。
柔らかいことは知っている。
そして、何度となく――……願いもした。
直接触れることができたら、俺はきっとおかしくなるだろうな。
そう思ってはいたが……事実、頭がくらくらする。
豊かな膨らみは、普段服の下に包まれているせいで見えなかったこともあり、思ったよりもずっと大きくて。
両手で触れると、柔らかいのにかなり心地よくたまらない。
「ん、んっ……ん」
「……は」
身体中を血が巡って、どくどくと激しい音を立てているのがわかる。
だが、身体は素直なもので、もっと先を求めた。
「はぁ、んっ……!」
直接胸の先を口に含むと、ひときわ高い声があがり、背を逸らした。
硬くしこらせ、自己を主張してくるような感じに、息が漏れる。
もう片方の胸を弄るように手が動き、指先が当たると穂澄が緩く首を振った。
……だが、手を止めた途端、慌てたように目を開けて『違うってば』と囁く。
「違うの……もぉ……気持ちよくって……」
「っ……」
「ヘンになりそ――……ぁあ、あん!」
潤んだ瞳で見つめられ、何かが切れたような気もした。
早急に彼女を求め、身体をまさぐるように手を這わせる。
聞こえるのは、布の摩れる音と彼女の淫逸な声。
淫らで、背徳的で、何よりも……秘密めいていて。
だからこそ、欲しくなる。
もっと――……もっと、俺に。
俺だけに許してくれているからこそ、欲は止まらない。
「ひゃ……ぁ、そこ……っ」
下腹部に手を伸ばし、下着の上から秘所に触れると、足を震わせながらも再度首を振った。
それでも、きっと理由は先ほどと同じなんだろう。
『嫌じゃない』
そう言われていると感じるのは、わがままな己の欲望のためか。
「ひぁ……っあ、あっ……」
下着を指先で引っかけて下ろし直接手をしのばせると、くちゅり、と濡れた水音がした。
当然、俺だって知識くらいはある。
かつてそのテの映像を見たことがないはずもなく、興味とて当然あったのだから、友人たちと話をしたことがないわけではない。
それでも、知識は知識。
穂澄が先ほど言ったように、結局経験に勝るものはない。
「あ、あ……里逸ぃ……」
「……すごいな」
「っ……も……やだ……」
「嫌か?」
「うー……聞かないでよばかぁ」
ちゅ、と頬へ口づけると、唇を尖らせてから『そっちじゃないってば』と笑った。
引き寄せるように彼女の両手が頬に触れ、唇を重ねる。
舌が絡まり、息が上がる。
それでも指先をひだに沿わせると、くぐもった嬌声が何よりも近くで聞こえた。
「ん! は、あ……あっ……あん!」
ぷっくりとした箇所を往復するように指の腹で撫でると、ひくひく身体を震わせながら抱きついてきた。
いや、抱きつくというのは正確じゃない。
どちらかというとしがみつくような格好で、腕を掴んだ手も細かく震えている。
「……あ……や、も……どしよ……」
「ん……?」
「ヘン……になっちゃう……」
今にも泣きそうな声で首を振られ、正直戸惑った。
それでもきっと、ここでやめればもっと嫌がるだろう。
……いいんだよな。
本当はもう1度訊ねれば済む話かもしれないが、それをしたくないのは……俺がわがままだから、だな。
貰えるとわかった以上、簡単に引き下がりたくない。
手を伸ばしていいと言われたのだから、意のままに動いてしまいたい。
……結局は男、ってことか。
やはり、わがままな生きものだ。
「気持ちいい……」
「っ……」
しどけなく開いた唇から、やけに艶かしい言葉が聞こえた。
息が上がり、首筋から胸元へ再度唇が降りる。
そのままひだの奥へ指を這わせ、ゆるゆると――……指先を沈めると、恐らくは無意識なんだろうが、すぐに締めつけられた。
「は、ぁ……っん、んっ……」
徐々に指を沈め、飲み込ませてしまう。
早急になりすぎれば、きっと痛みはあるだろう。
互いに初めての経験。
大切な“初めて”を痛い思いだけで終わらせてしまいたくない。
……穂澄がくれたChance.
明日をChangeするために、すべては始まった。
「んっ! はぁ……ん、ああ……っ」
胸を再度含み、舌先で撫でるように転がしながら味わうと、さらに秘所が潤みを帯びた気がした。
ゆるゆると摩擦なく指を動かせるようになったところで、今度は人さし指を加えて含ませる。
……もう少し。
這入ってしまえばどれほど心地いいかというのは想像でしかないが、きっとたまらないものなんだろう。
だが、1度経験してしまえば、以降はただただ欲しくなるに決まっている。
それは不安でもあるし怖くもあるが、穂澄が許してくれるのならば――……欲しがっても、いいのか。
「ん、んっ……は……里逸……ぃ」
「……ん。どうした?」
「も……指、じゃなくて……」
「っ……」
「……きて、いいよ」
薄っすら目を開けた穂澄が、俺を見つめて微笑んだ。
いつもより柔らかく、まるで儚いような笑みなのに、ひどく意識的で。
「……いいのか?」
「ん。……きて」
息を含んだ言葉が、やけに淫らに聞こえる。
それでも身体は素直に反応し、断る理由なども当然見つからなかった。
「っ……どうしてそれを」
「もぉ……これはベッドで使う物でしょ?」
穂澄から降りて取りに行こうとすると、すぐさま腕を引かれた。
ごそごそと枕元から取り出されたのは、ドラッグストアの紙袋。
……まさか場所を移されていたとは。
彼女の決意の表れとやらは本物だったらしく、苦笑するしかできない。
封を切って小袋を破り、中から避妊具を取り出す。
だが、下着に手をかけたところで、まじまじと穂澄が見ているのに気づき、思わず止まった。
「……見すぎだろう」
「だって……里逸だって見てたでしょ」
「それは…………仕方ないだろう?」
「……じゃあ、私だっていいじゃん」
くたり、とベッドへ身体を預けているくせに、口調はいつもと同じなんだな。
ゆっくり身体が上下しているのがわかり、これまでの情事の色香はかなり残っているが。
「……っ」
恐らく、穂澄にとっては見たこともない身体の器官。
ましてや今は形を大きく変えており、いかにも性の象徴そのもの。
「……え、あ……」
避妊具を纏わせてから彼女に向き直り、足を開くように両手で支えると、さすがに慌てたらしくわずかに身体を起こした。
「どうした?」
「ど……した、って……だって……」
まじまじと見られると困る――……というよりも、さらに熱を帯びる。
どくん、と血流を感じるたび反応するのも仕方ないが、穂澄は困ったようにそこを見つめたまま、うっすら唇を開いた。
「……入る、のかな」
「………………」
「…………ぅ。や、ごめん。違うの……その……」
ぽつりと呟いた言葉で彼女を待つと、ふるふる首を振ってから『なんか、すごい』などとよくわからないことを口にした。
さすがに、まだ理性とて当然残っている。
だから、怖いからやめたいと言われても、それはそれで受け入れるつもりだ。
「……里逸……」
「どうした?」
「…………きて」
「っ……」
少しだけ心もとない呼び方で名を呼んだあと、穂澄は俺に両手を伸ばした。
まっすぐに大きな瞳で見つめ、唇をつぐむ。
「……いいのか?」
「ん。したい」
「っ……わかった」
身体ごと近づいて、秘所へ猛る自身をゆっくりとあてがう。
先端が触れた瞬間、ひくりと身体が反応したが、穂澄は何も言わずに俺を見つめたままだった。
「…………っ……ぅ……!」
まだ、指を2本ほどしか飲み込めていない場所に、それよりずっと太いものがやすやす通るはずはない。
真新しい風船と一緒。
1度膨らめば空気が抜けても元通りにはならないが、最初は道を作るためにかなりの力が必要となる。
「あ、ぅあ……っ」
ぐ、と押し広げるように先を押し込むと、先ほどまでとはまったく違う悲痛な声があがった。
だが、思わず動きを止めるものの、穂澄は小さな子どものように首を振る。
「やだぁ……やめちゃ、や……っ」
「……しかし」
「平気……っ……痛くないから、だから……して、ぇ」
「ッ……」
ぎゅう、と腕を掴んだ彼女の手には、相当の力が入っていた。
よほど我慢している証拠か。
短く息をつく姿があまりにも痛々しくて眉が寄るが、穂澄は『もっと』と小さく呟いた。
「……穂澄」
「ん……へーき……」
「…………」
「だいじょぶ、だから……っ」
顔を覗くようにすると、薄っすら瞳を開けてから俺の頬に触れた。
いつもとはまるで違う笑みを浮かべられ、身体の奥が疼く。
「ッ……!」
「っく……」
声を漏らさないようにか、穂澄が両手で口元を覆った。
痛いのは当然。
それでも欲しいと望んでくれた以上、やめることはできない。
……俺だって欲しかった。
ずっと、ずっと――……穂澄だけを、満たしてしまいたかったんだ。
「つぅ……っぁ」
ゆっくりと少しずつ押し広げ、道を作る。
どれだけ時間がかかったのかは、わからない。
それでも、しっかり根元まで這入り込んでから彼女を見ると、肩で息をしながらも俺と目が合うと小さく笑った。
「……なんか……すごい変な感じ」
「…………そうだな」
「でも…………えへへ。すっごい嬉しいよ?」
「っ……」
「ぁん! や……もぉ……全部わかるんだけど」
「……仕方ないだろう」
「ん……嬉しいから、いい」
どくん、と気持ちが強く反応するたび、どうしたって自身も反応する。
だが、こうして繋がっている以上、当然それは穂澄にも伝わる。
……ひとつ、か。
たしかに、こうして受け入れてもらえることこそ、何よりも満たされた気分になるものなんだな。
「……穂澄」
「ん……なに……?」
わずかに動くと、一瞬眉を寄せたものの、穂澄はすぐに笑みを浮かべた。
痛いのは違いないし、我慢しているのも当然あるだろう。
それでも、こうして俺を見つめてくれるだけで、心底ありがたくてたまらない。
「……愛してる」
「っ……」
「ずっと……お前だけを大切にする」
手を伸ばして頬に触れ、撫でてから微笑むと、逆に穂澄は今にも泣きそうな顔をした。
みるみるうちに瞳が潤み、わずかな光を反射する。
「……もぉ……」
「どうした?」
「…………えっちのとき以外でも、ちゃんと言ってよね」
ばか。
唇だけを動かして笑った彼女を見て、小さく笑いが漏れる。
「……当たり前だろう」
「ん……じゃあ、期待してるね」
温かい手のひらが手に重なり、心底幸せそうに頬擦りされた。
ほかの誰も知らない、顔。
……聞いたこともない、声。
それをすべて俺だけのものにできた以上、誰に遠慮することはない。
ゆっくりと動き出しながら彼女の身体に触れると、また、あの耳に残る甘い声を漏らした。
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