「は……ぁ……」
ルームウェアの上着を滑るように大きな手のひらが降りてきて、箇所をひとつひとつ丁寧になぞる。
まるで確かめるように触れられるこの時間は、たまらなくどきどきして。
きっと、里逸のクセみたいなものなんだろうなって思うと、余計に嬉しくなる。
“私だけ”にしてくれる行為。
ときおり『穂澄』と息を含んで名前を囁かれるたび、身体の奥がぞくりと震えてなんともいえない感情でいっぱいになる。
「んっ……」
何かを探していたかのように上着を撫でていた指先が、一点で止まった。
まだそんなに触れられてないのに、自己主張している胸の頂を円を描くように刺激され、ひくん、と身体が勝手に反応する。
それだけじゃない。
出ないように、聞こえないように、って押さえている口元からは声が漏れて。
いつもは全然感じない吐息さえも、やけに大きく聞こえる。
「ん、んっ……り……ち」
彼にもたれたままリビングにいたものの、キスされてすぐ寝室へ運ばれた。
これまで、自分がお姫様抱っこされてる図なんて想像もしなかったけど、されてみてかなり目線が変わって驚く。
でも、里逸はもっと高い場所から世界を見てるんだよね。
そう思うと、なんだか半分くらいは教えてもらえた気がするから、あれはあれで悪くない。
「っ……」
ちゅ、と音を立てて唇が首筋から胸元へ降り、鎖骨のラインを辿る。
濡れた感触があちこちへ触れるたびに、わけもなくぞくぞくして。
一瞬目を開けたときに見えた里逸の顔がやけに男っぽくて、いつもは絶対見ないような『欲しがってる』ような顔で、だからこそ何も言えなかった。
……えっち。
普段は、こんな欲丸出しのことなんて何も考えてないみたいな顔だし、言動だってそうなのに、いざってときになると全然違うから困る。
でも…………嬉しい。
こういうときは、間違いなく『素』そのものだと思うから。
「は……っぁん!」
ジッパーが下ろされると同時に胸を直に触れられ、舌が先端を含んだ。
途端に感じる熱に、ひくりと背中が反る。
舌で転がすように舐められ、そのたびに声が漏れる。
……すごいやらしいんだけど。
里逸は、こういう私をどう思ってるんだろう。
嬉しい……のかな。
それとも、はしたない?
「ん、んん…………ぁ、あっ……」
大きなもう片手が直に胸を包み、指先で先端をしごいた。
ぴりぴりと快感ともまた違う感じに声が漏れ、恥ずかしさから口元へ手の甲を当てる。
――……途端、手首を掴まれた。
「え……っ」
「……もっと」
「なっ……!」
「嫌じゃないんだろう?」
びっくりするのは、1回だけじゃなかった。
眼鏡越しじゃない瞳でダイレクトに見つめられ、喉が鳴る。
だ……だって、だよ?
こんなこと言われるなんて、誰が想像する?
まばたきするのも忘れて唇が開き、とんでもないセリフに身体が熱くなった。
「なッ……によもぉ……ばかぁ」
「……なぜそうなる」
「だって……! だって、もぉ……顔が……すごいえっち……」
「っ……」
「…………やだ……どきどきして、苦しい……」
途中からはもう見ていられず、ふるふる首を振りながら視線を外していた。
……どうしてくれるの? この、心拍数急上昇。
すっごい苦しくて、どきどきして、だけど…………おかしくなりそうなくらい、嬉しい。
はぁもぉ……なんなの、今日の里逸って。
いつもと違いすぎて、こっちがおかしくなりそう。
「あ、あっ……!」
「……すごいな」
「やっ……もぉ、里逸……なにぃ……ん、んっ……すご、い……えっち」
「そ……んなことは、ないだろう」
「そんなことあるってば……っ……ん! ひゃ……や、あ、あっ……」
下着と一緒にルームウェアのズボンを脱がされてすぐ、指が中へ這入って来た。
くちゅり、と濡れた音が響いて、身体がまた反応する。
首筋へ口づけていたからか、里逸が小さく喉を鳴らしたのもわかったからこそ、もぉ……やだ、どうにかなりそう。
増やされた指が胎内を探るように動き、そのたびに淫らな音が聞こえて、身体だけじゃなくて顔もずっと熱いままだった。
「え……っちょ、……な……!?」
首筋から鎖骨、そして胸からお腹へ唇が降りたかと思いきや、不意に里逸が身体を離した。
かと思いきや、両手で太ももを支えるように体勢を変えられ、これから何をされるのか頭が判断できな――……!
「っひゃぁ……!? あ、ああっ……や、なっ……やぁだぁっ……!」
ものすごい恥ずかしい体勢にされたかと思いきや、躊躇なく里逸が秘所へ口づけた。
舌先で、自分でもそうそう触ることのないような場所を舐められ、これまでとは全然違った濡れた音と感触に、声も出ない。
「やぁ、んっ……! ん、んっ……は……あぁ、あっ……ん!」
声がワントーン上がり、今にも泣きそうな音に変わった。
それでも里逸はそれこそ遠慮もなしに、舌での愛撫を続ける。
当然、聞いたことはあったし、こういうコトをするっていうのだって、知識としてはある。
あるよ? それはもちろん。
でも、まさかっ……まさか、自分がされるなんて……っていうか、里逸がするとか考えなかったし。
それに……この、音とか、全部……っ……全部が、おかしくなる要素でしかない。
「あ、あっ……ん! り、ち……っ……だめ……ぇ、だめっ……!」
「……どうした?」
「っはぁ……」
ひくん、と足と秘所が震えて、いつもよりもずっと強い快感が身体の中心から溢れ始めたとき。
里逸の肩を強く掴むと、ちゅ、と音を立ててようやく彼がソコから離れた。
「もぉ……なんなの……? なんで、そんなこと……」
「気持ちいいだろう?」
「ッ……そ……」
だから、どうしてそういうことを真顔で聞けるの?
どう答えればいいのか全然わからなくて、こっちが恥ずかしくなるのに!
「……嫌か?」
「そ……れは……」
「穂澄が嫌がるなら、しない」
「っ……」
何その意地悪な質問。
ていうか、普段はそういう言い方しないくせに、なんでこういうときに限って、そうやって追い込むようなことをワザとするのかな。
無意識?
それとも、やっぱりワザと?
どっちにしろ、まじまじ見つめられた私の鼓動は、全然静まってはくれそうにない。
「……嫌じゃない……もん」
「なら――」
「で、でもっ……すごい……恥ずかしいの」
ていうか、イキそう。
ぼそり、と耳元で小さく小さく囁くと、途端に里逸が目を見張った。
そりゃあそういう反応するでしょうよ。
……イク、とかはしたないこと言って悪いとは思うよ? ちょっとくらいは。
でも、里逸がしてきたんだからね。
責任取って……っていうか、ちょっとくらい反省してよ。
私をここまで追い込んでるんだから。
「……っ」
「かわいいな、お前は」
ぎゅう、と息が詰まるほど強く抱きしめられて、一瞬何が起きたのかわからなかった。
だけど、身体から聞こえてくる声が、なんだかあんまり余裕ないみたいだったから、嬉しくもある。
「……こっちがおかしくなりそうだ」
「っ……」
数センチの距離で見つめられてすぐ、口づけられた。
柔らかい唇の感触のせいで、身体に入った力がすぅっと溶けるように抜ける。
舌が絡んで、吸い上げるようにキスをくり返されて、しどけない表情のまま里逸を見ると、一瞬眉を寄せてから秘所へ指先を沈めた。
「んっ、や、だから……っ」
くちゅり、と指が大変なことになっている秘所へ沈み、奥まで刺激するように動き始めた。
と同時に親指で今まで散々刺激されていた花芽をこすられ、泣きそうな声がまた漏れる。
「おかしくなっていい」
「な……っ」
「もっと……俺でいっぱいになってくれ」
ちゅ、と頬へ口づけられてすぐ、掠れた声が聞こえた。
……びっくりする、とかってレベルじゃないから。ホントに。
「もぉ……ばかぁ」
それ以外何も言えず、眉を寄せて唇を尖らせるしかできない。
だけど、里逸はなぜか少しだけ嬉しそうに口元を緩めると、身体をすり合わせるように強く抱きしめた。
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