「あっ……そ、こ……!」
 ひくん、と身体が震えたのがわかったから、口づけて言葉を遮った。
 こうしてしまえば、彼女から拒否は出ない。
 俺が欲しいのは、肯定だけ。
 どうせ今さら何をしても止まれないんだから、今のは聞く必要のない言葉だ。
「ん、んっ……んぅ……ん!」
 喉から漏れる声がやけに色っぽくて、これはこれで正解だな。
 舌を絡めたキスのせいか、濡れた音が耳へ淫逸に届く。
 ついばむように口づけ、深くまで味わうように吸い上げる。
 ウマくて、心地よくて。
 ホント、俺好みの女によくもまぁここまでばっちり育ったもんだなと感心するしかない。
「ひゃ……ぅんっ」
 帯に手をつけることなく、浴衣の合わせを開いて胸から――……下腹部へ。
 手のひらを往復させるように足を撫でると、そのたびに身体が反応した。
 が、太ももの内側を撫でた途端、きゅっと力をこめて拒否され、同時に彼女の手が肩口を押す。
 ……ここにきて、か。
 おおかたの予想はついていたが、実際そうなったところでまぁ……どうにもなんねぇんだよな。もう。
「っ……!」
 むさぼるように角度を変えて口づけ、声を漏らさないように処置。
 片手で彼女の手首をつかみ、そのまま頭の上へと追いやる。
 もう片手は、もちろん拒まれた太ももへ。
 今度は、内側から……なんて生易しいことはしない。
 直接、下着の縁をなぞるように指を這わせる。
 ……もう、余裕がない。
 指先で秘所を布越しに触れるとわずかな湿りを感じ、息が荒くなった。
「……止まんねぇっつったろ」
 声が掠れていたのは、自身の余裕のなさの表れ。
 耳元でささやいてから耳たぶを舐め、舌を這わせる。
 すぐここで聞こえる、甘い、我慢しているような声。
 ……それが俺を煽ってるってことに、果たして気づけるのはいつやら。
「……っ……」
「……いい匂いだ」
 以前何度もかいだことのある、彼女自身の香り。
 甘い桃のような独特の匂いは、シャンプーなのかボディソープなのか、はたまた化粧品の類なのか……それともコイツ自身の香りなのかわからない。
 だが、ウマそうだと頭が判断したのは間違いなくて。
 実際、こうして嗅ぐのは何度目かわからないが、やはり毎回同じように自身が反応する。
 フェロモンといえば、それ。
 彼女の地の匂いにほぼ近いであろう、香り。
 同じように感じる男がいるんだろうが――……自分と同じ思いをさせてやれるワケがない。
 これは、俺だけのモノ。
 誰からも奪ってしまうために、ずっと待っていた。
「あ、あゃ……っん!」
 指先を下着の縁から差し入れ、1点を探る。
 ……までもなく感じた、ぬめり。
 あえてそうしようと思わずとも、わずかに動かせば途端に聞こえる濡れた音。
 秘所を直接撫でてはいないが、それでも身体の下にある彼女は反応していて。
 口元へ当てた手のせいで先ほどよりも声が聞こえなくなってしまったが、十分嬌声は漏れている。
「……気持ちいいか?」
「そ……こは……、だめです……」
「なんで」
「っ……だ、だって! きれいじゃ……な……っ」
 ちゅ、と頬へ口づけて訊ねると、ふるふる首を振ってから俺を見つめた。
 困ったように寄せられている眉と、潤んだ瞳。
 今にも涙がこぼれるんじゃないかと思うと、喉が鳴る。
「……っ!」
 彼女を見つめたまま、指先で引っかけるように下着を下ろす。
 刹那、瞳がさらに丸くなって、きゅうっと唇を結んだ。
 驚きと、恥じらいと、戸惑い。
 いろんな感情が入り混じっているようで、彼女の白い喉も動く。
「え……あ、ぁっ……!?」
 ひょい、と膝裏へ手を当てて体勢を変えさせ、足の間に身体を割り込ませる。
 慌てたように彼女が両手で浴衣をつかみ、ソコを隠そうとするが、俺にしてみればその行為はなんにもならない。
 遅い、つーか無理。
 何をしたところで、今の俺が思うのは『だから?』くらいなモンだ。
「やっ……!? だ、だめ、です……!」
「ダメじゃねーだろ」
「だめですよっ! そんなところ……っ……や、やぁっ……だ、め――……ひゃ……ああん!」
 ぐい、と膝を割るようにさらけさせ、唇を寄せる。
 確かに、恥ずかしいってのはもっともな感情だろう。
 だが、『泣かない』と誓ったのは彼女。
 もちろん、そんなことさせる気はさらさらないが、恥ずかしいという感情をぶつけられても、今さらやめられるワケがない。
「やぁっ……や、んんんっ……あ、はっ……はぁっ……ん!」
 足に当てた手から伝わってくる、震え。
 舐め上げるたびにひくひくと反応するのが、正直たまんねぇな。
 嬉しいとか、楽しいとか、そういうモンよりも強いモノ。
 今、確実に彼女を支配しているのは俺。
 そうわかるから、行為は加速する。
「だ、め……ぇ……っひぅ……ん! そ……しさ……っ」
 わざと音を立ててねぶり、吸い上げる。
 ついばみ、なぶる。
 そのたびに高い声をあげ、悦を感じる彼女。
 身体が震えるたび、『もっと』なんだなと理解する。
 もっとよろこべ。欲しがれ。
 俺だけを考えて、中も外も、全部俺でいっぱいになれ。
 わがままというよりは、独占欲。
 さまようように頭へ触れた手が髪をすき、ときおり切なげに震える。
 喉から漏れる我慢の声が、かわいくてたまらない。
 ……えろいな。
 つか、思ったとおりだ。
 コイツなら、コトの最中はかなりかわいくなるだろうと思ったが、まさかここまでとは。
 自身ががっつり反応するのがわかって、今、正直苦しい。
 ……這入りてぇ。
 さて、どこまで持つかな。
 彼女に対する、俺の優しさってヤツは。
「っは、はぁっ……もっ……!」
 きゅうっ、と彼女の手に力がこもったのがわかり、ソコから口を離す。
 感じているのは、確か。
 唇についた蜜を舐め、顔をのぞき込むように体勢を戻す。
 これが、彼女の味。
 ……あー、クラクラする。
「は……ぁっ……ん、ちゅ……」
 荒く息をする彼女に口づけると、先ほどの口づけよりもずっと絡んできた。
 イイ顔してるぞ。
 キスが気持ちイイと思ったのは、随分と久し振りだ。
「気持ちよかったろ?」
「っ…………はぃ」
「自分じゃできねーことだからな。……俺が幾らでもしてやる」
 ニヤ、と口角を上げると、潤んだ目を丸くして唇を結んだ。
 そーゆー顔もいいけどな。
 ……つーか、今見ることができるどんな顔も、普段は決して見れないモノだから。
「あぁっ……!」
「……イイ声出すよな」
「は、あ……ぁ、や……っ……壮士、さ……」
「イキそうか?」
「あ、ああっ……」
 指先を秘所に含ませ、ゆっくりと往復する。
 普段とはまるで違う、甘い声。
 耳に届くたびどれだけ煽られているか、彼女は知らない。
 ……そろそろ、わからせてやってもいいかもな。
「っ……!」
 ぐい、と腰を下腹部へ密着させ、耳元へ唇を寄せる。
「……瑞穂」
 わざと吐息を含んで囁き、舌先で耳たぶを舐める。
 顔が近づいたからか途端に声を抑えるようにされ、甘い声が喉から漏れた。
「っあ……そ、こ……!」
「ここがどうした?」
「やぁ……あ……も、だめ」
「何が」
 蜜を指先に取り、円を描くように花芽を撫でる。
 ゆるゆると、力を抜いて。
 そのたびに、ひくひくと秘所だけでなく彼女の身体が震えた。
「あ、ああっ……ん、んっ……!」
 ――……声が、変わった。
 鼻にぬけるような、甘い声。
 イク手前、ってところか。
「っはぁ……っは、はぁ……!」
 指先でつまんで弄るのをやめ、手を離す。
 途端、大きく息をした彼女が、ゆっくりとけだるそうにまぶたを開いた。
「まだだ」
「……え……?」
「いい、っつーまでダメだ。イクな」
「っ……」
 囁きとともに、口角が上がった。
 今の俺を見て、どう思った? 何を考えた?
 意地悪だと思ってくれて構わない。
 ろくでなしだろうと、人でなしだろうと、なんでもイイ。
 終わったあとでなら、どんなことをどれだけ言われようと、構わない。

 いかにして、彼女をウマく食べるか。

 正直、今はただこの行為を楽しむことしか考えてないから。
「っ……ん!」
 指先を秘所へ当て、蜜を指で塗り込むようにあちこち探る。
 すっげぇ、とろとろ。
 濡れるとかってレベルじゃない摩擦ゼロの泉に、頬が緩む。
 まだ、誰も何も許したことのない場所。
 それどころか、恐らく自分でも触ったことのないであろうソコへ、ゆっくりと中指を沈める。
「っは……ぁ、あっ……」
 つぷん、と小さな音とともに指が飲み込まれた。
 彼女にとっては、未体験。
 ……いや、コレが初体験と言わせたほうがいい。
「身体から……力抜け」
「ぁ……、あ、は……ぁ」
 きゅ、と服をつかんだのが見え、耳元で囁く。
 とはいえ、こればかりは『はい』と素直に言ってできるかっつーと、そんな簡単なモンじゃない。
 それはわかる。
 だが、どうにかしたい。
 それもわがままってヤツか。
「…………」
 指を根元まで沈め、ゆっくりと抜き差しを始める。
 わずかにでも指を動かせば、くちゅり、と特有の濡れた音が漏れる身体。
 やらしいとかって思いよりも、早く這入りたいという欲望しか浮かばない。
「は……ふぁ……っ」
 短く息を繰り返す彼女を見ながら、指を増やす。
 阻まれる感じはもちろんあるが、少しでも道を作っておきたいのが正直なところ。
 無理やりどうこうする気はないが、苦しんで、つらい思いをするのは俺じゃない。
 何もかもワケがわからないのに、すべて一方的にやられている今、彼女にあるのは不安……が1番大きいだろう。
 だからこそ、感じさせてやりたい。
 気持ちよくさせたい。
 ……できることならそこに、『もっと』とねだってほしい思いは当然あるが。
「っぅあ、あっ……ん!!」
 ナカを探るようにしていたら、あるところで彼女が背中を反らした。
 ぎゅうっと腕をつかまれ、今撫でた場所を――……静かに往復する。
 彼女自身が教えてくれたこと。
 ココが1番敏感で、身体が勝手に動くくらい感じる場所だ、と。
「あ、あぁっ! そ、しさっ……んん、そこ……や……!」
「……弱いんだな、ココ」
「っ……あ、ああっ……ちが……のっ……そこ、あぁっ……ん!」
 ふるふると首を振る彼女を見ながら、つい笑みが漏れる。
 奥から溢れ始めた、蜜。
 ぐちゅりと音が変わり、指先に胎内の熱が伝わる。
 ……あー、すっげぇ。
 こんだけ濡らせばいいよな。
 十分だよな。
 ――……これ以上は、もう無理。
「っは、ぁ……!」
 指を抜き取り、隣のベッドへ手を伸ばす。
 彼女を運んだときにバッグから出した、箱。
 我ながら、正直呆れた。
 どんだけヤる気満々なんだよ、って。
 ……だが、否定はしなかった。
 そりゃそうだよな、と。
 無理もないわな、と。
 つか……そろそろいいよな、と。
 いろんな『俺』が俺に同意し、結局箱ごとつっこんだブツ。
 ただ、彼女から俺に来てくれるという最良な展開は、望んじゃいなかった。
 俺は、ひどくて(こす)くて自分のことしか考えてないから。
 大人の集まり→泊まり→ヤることはひとつ。
 そんな図式を勝手に作り上げてしまおうと思っていたから。
 封を切り、自身へ纏わせるようにして準備完了。
 あー、久し振りの感触だ。
 この感じ、ゴブサタどころの話じゃない。
「…………」
 やっぱ、箱で持ってきて正解だったな。
 この勢いあまりまくりの自身が、1回で済むワケがない。
「……ぁ……」
 先端を秘所へあてがい、前置き。
 身体で息をしていた彼女が少し落ち着いたようだったが……悪い。これからが本番だ。


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