「瑞穂。名前呼べ」
「……え……?」
「いいか?」
「ん…………はい」
 頬へ手を当てて告げ、ぐっ、と先だけを沈める。
 まっすぐに俺を見つめる瞳には、不安のような戸惑いのような色が見えた。
 だが、ここまで来て無理と言われても俺が無理。
 ……泣かせるかもな。
 慣らしがちゃんとできてはいない。
 負けたのは、理性。
 結局『気持ちよくなりたい』っていう欲望のほうが強いってことか。
「っあ、っんん……!」
「……っく」
 狭い狭い入り口。
 そこを押し広げるように、徐々に這入る。
 ぴったりとした密着感こそあれど、当然俺に痛みはない。
 あるのはむしろ、言いようのない熱さと窮屈さ。
 ……あー、たまんねぇな。
 気持ちよくないワケがない。
 まだ半分しか這入ってないにもかかわらず、荒い息が漏れ始める。
 ……頭がクラクラして、溺れそうだ。
「っは、はっ……はぁ……!」
「瑞穂。……名前」
「っ……そ、しさ……壮士さ……ん……!」
「……そうだ。もっと」
「んんっ……そ……し、っ……壮士さぁん……っ」
「っく……!」
 短く息を繰り返していた彼女の頬を撫で、促す。
 息を吐けと言っても、この状況じゃうまくやれないのは承知。
 だから、名前を呼ばせた。
 ……ま、半分は名目で半分は俺の自己満足だけどな。
「ぃっ……あ、っあ」
 腰に手を当て、徐々に徐々に自身を沈める。
 さすがに、這入るので精一杯。
 動けるまでには至りそうにない――……が、だからと言って、諦めてやれるほど大人でもない。
 次は、次だ。
 今は、今しかない。
「……っく!」
「っあぁあっ!!」
 あと少し、というところでさすがに我慢できず、一気に押し開いた。
 痛いか、とは聞かない。
 ンなわかりきってること聞いたって、彼女なら『大丈夫です』とでも言うだけだから。
 怖いし、痛いし、つらい。
 そんなマイナスばかりを情報として持っていただろうに、拒まずに受け入れてくれた。
 それはまず何より評価すべきだ。
「……っはー……」
 圧着感と密着感からわかる、まさに俺のための場所。
 ほかの誰でもない、俺だけの狭さ。
「……大丈夫だ」
「っ……は……」
「怖くないから。……大丈夫だ」
 髪を撫で、上半身を起こしたままでくり返す。
 さすがにこの状態から抱きしめたら、それだけで悲鳴あげそうだしな。
 そーゆー開発は、徐々にすることにして――……今は、専念。
 いかにして彼女の許しを乞うか、を。
「っんん……!」
「……っは……すっげ」
 両手で胸をすくうようにしてから、親指で先端を弄る。
 柔らかい場所にある、つん、と上を向いて主張しているソコ。
 ……あー、舐めてぇな。
 が、それは無理。
 ならばどうするか。
「っ……あ、あっ……」
「……いい声だ」
「あ、壮士さっ……あ、はぁ……っ」
 つまむように指で弄りながら、ゆっくりと腰を動かす。
 途端、ものすごい締めつけがあったが、これは想定内。
 なんであろうと、異物に変わりないからな。
 だからここから先はもう、彼女にひたすら感じてもらって快感として捉えてもらうしかない。
「……は……すげ」
「っぁ、ああ……!」
「瑞穂。……ヤバい、お前……っ……」
「んんんっ……壮士、さ……」
 繋がったところ、すぐの花芽。
 そこを、舐めた指で撫でるように刺激すると、身体を震わせた。
 身体中を血が巡る。
 どくどくとあちこちが脈打ち、中でも1番は――……いうまでもないか。
 締めつけがハンパないものの、摩擦は少ない。
 ……感じてくれてる証拠だな。
 相変わらず、お前は俺に甘い。
 が、それはものすごく嬉しいんだ。
「っく……」
「ん、んんっ……ぁあっ!」
 ぐちゅりと濡れた音が響き、互いの荒い息が部屋に響く。
 快感が頭まで届き始め、自然と抑えていた律動を徐々に送るようになっていた。
 痛いのはわかってる。
 ……ガマンしてくれてるのも、もちろん。
 だが、だからこそイケるならとっととイって、ツラさを軽減してやりたい。
 …………だから、欲しい。
 もっと。
 1番奥まで、味わい尽くしたい。
「あぁ、あっ……ん! そ、しさっ……!」
「……っは……、く……! 瑞穂……ッ」
「あ、あぁっ……! ぁっ……ひゃ……ぁあ!」
 律動を早め、両手で彼女の腰をつかんで最奥を目指す。
 途中、彼女の声が変わったが、今は――……悪い、余裕ない。
 ダメなヤツだな。ほんっと、最低だよな。
 ……でも。
 お前だけは、もう二度と離さないから。
 ほかの誰にも、くれてやらないから。
 俺だけのモノにさせてくれ。
「っぁ、イク……!」
 寸前の、あの感じ。
 あの瞬間が、ものすごく好きだ。
 ぞくぞくと身体が粟立って、迫る限界が見えるから。
「ッ……!」
「あぁ、ああっ……ん!!」
 彼女の腰をつかんでいた手が、震えた。
 もっと、もっと。
 1番奥まで届くように密着させ、大きく息を吐く。
 荒い、身体での呼吸。
 ゆっくり目を開けると、手の届くソコにいる彼女もまた身体で息をしていた。
 同じように俺を見つめた……その、目元に滲む涙。
 見つけると同時に親指の腹で拭ってやり、頭を撫でる。
 これは、反射みたいなモンかもしれない。
 ……クセ、とも言えるかもな。
「……はー……」
「っ……ん」
 ゆっくりと自身を抜き、簡単に処理する。
 が、まだ終わりじゃない。
 当然。
 やるべきことは、まだまだ。
「っ……え!」
「イってないだろ?」
「あ……え、と……」
 今ので気持ちよかったのは、間違いなく俺だけ。
 ずっと痛みを我慢してた彼女が、気持ちいいワケがない。
 初めてひらかれた道が、そう簡単に快感へは通じないだろう。
 だから、次は俺の番。
 ……いや、彼女の番か。
「あ、やっ……!」
 膝を折って足を開かせ、再度身体を割り込ませる。
 ひくひくと震える秘所。
 そこへ、先ほどしたのと同じように――……だが、今度はあえてゆっくりと口づける。
「ひゃ……あ、やぁん……!」
 ぺろりと舐めてから、蜜を舌先に絡めとる。
 手当て、に近い行為。
 ナカへも舌を差し入れて、今度はじかに味わう。
「あ、あっ……! そっ……はぁ、ん……!」
 ぷっくりと主張している花芽を含み、舌で転がすようにねぶる。
 少し強めにしごいてやれば、途端にびくびくと身体が震えた。
 ……あー、すっげぇ楽しい。
 ヤバい。ハマる。
 なぶるのはそこまでの趣味じゃないと思っていたんだが、意外とどうやらそうでもないらしい。
 年月のせいか、それとも目の前の彼女のせいか。
 ……ま、答えはそのどちらもってのが1番の線だろう。
「ん、んっ……!」
「いいぞ、イって」
「はぁ、っ……ん、んんっ……!」
 そのままで囁き、改めて味わう。
 果ては近い。
 ……初だな。
 存分に、俺を感じて果ててくれ。
「あ、やっや……! あ、あぁっ……ん!」
 きゅう、と彼女が俺の肩をつかんだ。
 ぴくぴくと、与えられる悦に比例して震える手。
 声が変わる。
 快感のさなかにいる、女の声に。
「やぁ、あっ……い、っちゃ……! あぁああ、いっちゃ、う――……んんっ!」
 短い息のあとで聞こえた、ものすごく甘くて、ものすごいかわいい声。
 しかも、その声でささやいた言葉は……エロすぎだろ、お前。
「んっ、んっ……!」
 鼻先に香る、新しい蜜の匂い。
 ひくつく秘所を目にしてから離れ、改めて彼女を見下ろす――……と。
「っ……」
 口元へ手の甲を当てて精一杯声をガマンしている様子が目に入り、どくん、と自身が脈打つのを感じた。
 ……やべ。夜だけじゃ済まないかも。
「っ、ん……っ」
 思うが遅いか、彼女へとまた手を伸ばしていた。
 抱きしめるように腕を回し、深く深く口づける。
 絡みつく舌、熱い口内。
 だが、もっと心地いい場所を知ってしまった以上、ソコを欲しがらずにはいられない。
「……もっかいしようぜ」
「っ……え」
「な? もっかい。あと1回でいい。……頼む」
 ちゅ、と頬へ口づけながら、片手は箱へ。
 先ほどちぎった残りの束を引っ張り、彼女を見たまま封を切る。
 ……さて、この頼み方であと何回できるか。
「……っ」
「な? もっかい……イかせてやるから」
 彼女の白い喉が動いたのが見え、自然と口角が上がった。


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