「…………」
 ちっともわからない。
 タオルを頭から被ったままキッチンに向かうと、入れ替わるように彼女がグラスをくれた。
 ……さっきから……つーか、風呂のときからずーっと観察してるんだが、まったくもって未だに謎のまま。
 そう。
 先ほど見つけた、あの例の袋。
 風呂に入ればわかると言われたから、あえていろいろ追求せずにきたのに。
 いつもと変わらず、少し大きめのパジャマを着て、同じように紅茶を飲んで……。
 ……なんだ? いったい。
 彼女を見ながらシンクにもたれると、つい眉が寄る。
 ……なんだよ。何がわかるんだ?
 ソファにもたれてニュースを見ている彼女に向き直ってから残っていた紅茶を飲み干し、シンクに置いてから隣へ向かう。
 こちらに気付いて、少し横にずれてくれるのも……いつもと一緒。
 ……気になる。
 隣に座って横顔を見つめるも、普段と変わらない顔だし。
 …………。
「っな……んですか……?」
「……なんにもわかんないんだけど」
「え?」
「だから。さっき、言ったろ? 何? 風呂入ればわかることって」
 ムリヤリもたれさせるように抱き寄せると、視線を外してから宙へと向けた。
 ……明らかに、何か隠してる顔。
 それがわかるから、こうやって抱き寄せたんだが……話してくれない限りは、何もわからない。
「っ……お……重い」
 体重を預けるように両腕を肩に乗せて背中にもたれると、さすがに身体を丸めてから小さく呻いた。
「そう思うなら、早く何を隠してるのか――」
 …………あ……?
「っ……え……先生?」
 ぱっと身体を離すと、驚いたようにこちらを振り返る。
 そんな彼女の背中を見つめてから視線を合わせると、独りでに意地悪く笑みが漏れた。
「……ぁ……」
 途端に見せる、彼女の困ったような表情。
 逃げられないように片腕で首元を引き寄せると、緩く首を振りながらあれこれ弁解を始めた。
 ……もう遅いけどな。
「珍しいね。寝るときはつけないんじゃなかったの?」
「……だ……だからっ、これは……」
 彼女にもたれたとき感じた、違和感。
 というか、異物感というか……。
 いつもは温かな肌を布越しに感じるのだが、今日は違っていた。
 少し硬い……というか、なんかこう、凹凸があったんだよ。
 つ……と指で背中をなぞると、確かにそこにある正体。
 しかし、なんで今日に限って付けてるんだ?
 普段下着を付けたりしないからこそ、どうしても気になるわけで。
「やっ……!? まっ、せ、先生っ!!」
 1度身体を離してから背中をたくしあげると、そこには見慣れない下着があった。
 普段のものよりレースが多いというか……いやまぁ、俺だって彼女の持っている物すべて把握しているわけじゃないんだが。
 それでも、なんていうか……ピンときた。
 あの袋。
 雑貨を買った、風呂に入ればわかると言っていた、彼女の言葉。
 ……そして、風呂上りに下着をつけている今。
「……そんなに俺に見せたかった?」
「! ……ちがっ……ん」
 ボタンをいくつか外してやってから、たくし上げるように上着をすっぽりと脱がせてやる。
 ……我ながら器用だな。
 こと、彼女に関しては。
 そのままで抱きしめるようにすると、丁度耳元に唇が寄った。
 いい高さ。
 独りでに上がる口角をそのままに、やっぱりもがいている彼女を腕に力を込めて抱きしめてやると、ほどなくして諦めたように大人しくなった。
「正面から見たいんだけど?」
「……え……」
 指先で髪をなぞりながら囁き、わざと息をかけてやる。
 相変わらず、髪から香る自分と同じ匂い。
 ほっとするっていうか……まぁ、そんなトコだな。
「でも……」
「んー?」
 くりっとこちらを振り返り、困ったように眉を寄せた彼女。
 ……そんな、頬染めなくても。
 まぁ、無理もないけど。
 ――……なんて思っていたら、すっかり飛んでいた言葉が聞こえた。
「だって、明日……学校だし……」
「でも、制服あるし。平気じゃない?」
 ……って、ブラウスがないのか。
 さすがに2日連続で同じ服着せるわけにいかないしな……。
「けどっ……あの、体育あるんです。明日」
「体育? それじゃ、送ってってあげるよ」
「……え……?」
「明日。家に寄ってから、学校に行けば問題ないだろ?」
「……う……それはまぁ……」
 こくんとうなずく彼女に、思わず笑みが漏れた。
「じゃ、今夜はお泊りね」
「……ん」
 頬を撫でてやると、1度上目遣いでこちらを見てから、かわいくうなずいた。
 ……聞きわけがイイというか、素直というか。
 もっと反発してくれてもいいけど、まぁ、これが彼女らしさってヤツだ。
「……ベッド行こうか」
「…………うん……」
 ぎゅっと抱き寄せて耳元で囁くと、ほどなくしてうなずいた。
 パジャマの上着を軽く引っかけてやってから、手を引いて立ち上がらせる。
 そして、先に電気を落としてから彼女とともに寝室へ向かうことにした。

「…………」
 ぎゅっと袖を通していない上着の合わせを握って、ベッドに腰かけた俺の前へ――……立ってくれている今。
 間接照明がほのかに部屋を照らしている中で、やけに艶っぽく彼女の姿が浮かぶ。
「じゃ、脱いで」
「……え……」
「今さら戸惑う必要はないだろ? ……それとも、ほかの誰かのために買ったの?」
「ち、違いますよ!」
 手を重ねてから上着を外すと、俯き加減に両肩へと手を置いてきた。
 そこから伝わってくる、温もり。
 いつもより、少し熱い気がする。
 ……ドキドキしてそう。
 こうなると、どうしても顔が見たくなるわけで。
 覗き込むように瞳を合わせると、一瞬丸くしてから首を振った。
「……別に、誰のためでも――」
「こういうときは、嘘でも『俺のため』って言うもんじゃないの?」
「え……。……っ……もぅ」
 ……彼女らしいな。
 笑ってから髪を撫でると、小さく反応を見せてから口元に手をやる。
 ……なんか、やらしいな。
 こう、上半身だけ下着姿ってのは……なんか、ヤラシイ。
 こういう照明だと、余計に。
「で? 誰のため?」
「……先生のため……」
 あっさりと呟いた彼女に、口元が緩む。
「それはどうも」
「んっ……!」
 背中に手を回しながら、ちょうど目の高さにある胸元に唇を寄せる。
 わずかに後ろへ反るような格好の彼女を抱き寄せてズボンに手をかけるも、これといった抵抗は見られなかった。
 ……それどころじゃないみたいだな。
 なんともいえない悩ましげな表情は、相変わらずそそられる。
「……んっ……せんせ……」
 もたれるように身体を預けながら、囁かれる声。
 何かを探るように髪へ絡んだ指を感じていると、わずかに吐息もかかる。
「っ……」
 太腿半ばまでズボンを下ろすと、重力ってヤツで下に落ちた。
 露わになる、下着。
 白のつるりとした生地にあしらわれている、レースとブルーの細いリボン。
 彼女が選びそうで、そして何より似合っていて……でもな。
「ぁ……っ」
 ホックに手をかけながら肌に唇を寄せると、力なく俯いたせいで髪が当たった。
「よく似合ってる。……けど」
「……え……?」
「白って、清純って感じだろ? けど……こう、目の前にこれだけで立たれると……すごい、やらしい」
「っ……そんなこと……! ん、や……」
「なんていうんだろうな……小悪魔的っていうか。……俺のこと試してるみたい」
「せんせっ……んっ!」
 言い切ると同時に肩紐を落とし、軽くずらす。
 カップからこぼれる、両方の胸。
 ……うわ。なんか、すげぇヤラシイ。
 思わず喉を鳴らすと、すぐに引き寄せられるように身体が動く。
「やっ……ぁんっ!」
 崩れそうになる、彼女自身。
 足の間に立たせたままで責めるってのも、なかなか悪くない。
 片方の胸を柔らかく揉みながら指先で先端を探ると、すぐに刺激を受けて硬く尖らせた。
「ん……んっ……はぁ」
 こうして、下から悦を受けている顔を見るのは、嫌いじゃないんだよな。
 ……ものすごくやらしくて……ってのもあるけど。
 まざまざと見ることができるのは、非常に楽しい。
 手のひらを背中から腰に滑らせ、身体が震えるたびに揺れる胸へ舌を這わせる。
 少し下から舐め上げるようにすると、首にかけられた腕に力がこもった。
「は……ぁ、ぅんっ……ん……ぁ」
 ぎりぎり胸の頂を掠めるようにすると、なんともいえない声が聞ける。
 ……これが聞きたいがために、って感じかもしれない。
 しばらくそうして焦らしてやってから口内に迎えると、ひくん、と身体が揺れた。
「あ、んっ……! んっ……ふぁ」
 わざと音を立てながらときおり吸い付き、柔らかく舌で撫でる。
 そのままでもう片方の手をショーツにかけてから、そのまま中へ忍ばせる。
「んっ……あ、あ……」
「……すごいな……」
「やだ……そんな……ぁ」
 ぬるりとした感触が指先に当たると同時に、熱い雫が指の間を抜ける。
 ひだをなぞるように指先を動かすと、すぐに淫らな水音が響いた。
「……すごい濡れてる。……そんなに感じてるわけ?」
「は……ぁっ……いじわる……」
 ぎゅっと閉じられたままの瞳ながらも、息はどんどんと荒くなっていく。
 指で撫でる場所を変えながら茂みを割り、指を――……。
「やっ!! ……ぁん!」
 触れた途端、ぎゅうっと抱きついてきた。
 耳にかかる、荒い息。
 ……ヤバい。
 これだけでも、結構……クル。
 むしろ、このまま――……なんて考えが浮かばないわけもなく、どれだけ自分が切羽詰ってるのかわかった。
「あ、あ……んっ……は……」
「……ずいぶんヤラシイ声出すね」
「……だっ……てぇ、んっ、ん……もぉ……やだぁ」
 荒くつく息の間に、搾り出すような小さな喘ぎ。
 だけど、こっちにしてみればずっとか大きな刺激なワケで。
 瞳を閉じて胸先を含みながら、つい彼女の中へと指を進めていた。
「っく……ぅん……あぁ……」
 熱い胎内に、思わず動きが止まる。
 ……あー……這入りたい
 一層荒くなる息を感じてそんなことを考えつつ、指を増やしながら抜き差しを続ける。
 それに伴って大きくなる、濡れた音と……指を濡らす蜜。
 瞳を開ければ、乱れた姿と、乱された下着。
 なんだか、半脱ぎ状態でヤラシさ倍増なんだが。
 5割増し。
「……すげぇかわいい」
「か……わいくないもん……」
 ゆるく首を振りながら、こんなときでも否定してくる。
 ……律儀だな。
 つーか、なんつーか……。
「なんで? そんなことないだろ。……かわいいよ」
「……いじわる……んっ」
 うっすらと瞳を開けて、見上げていたこちらと瞳が合った。
 ……2倍どころじゃないな。
 うん。3倍以上。
 噛み締めるように、そして耐えるように軽く噛まれた唇が、なんとも言えず艶っぽくて……ヤラシイ。
 つーか、もう、今見える彼女がすべてにおいてヤラシイんだが。
 どうしたものか。
 ……耐えられないかもしれない。
 こちらの刺激に対して鋭く悦を受けてくれる、イイ身体。
 なのだが、それはある意味諸刃の刃でもあるわけだ。


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