濡れた唇を再び舌で舐めてから、そのまま首筋に寄せられる。
彼の髪が頬に当たって、くすぐったい……と同時に、彼が動いたことでまぶたに強く光が当たった。
「っ……せんせ……待って」
「……何?」
パジャマのボタンを外しながら首筋で囁かれ、思わず背中が粟立つ。
「明かり……消してほしい、のっ」
肩を軽く押しながら呟くと、耳元に唇が移動した。
「……このまま」
「んっ! だ、だって……!」
「このままがいいんだけど?」
「や……っ」
わざと息がかかるようにされると、ぞくぞくと身体が震えてしまう。
……いじわる。
目を開けて彼を見ると、案の定そこには楽しそうな笑みがあった
「だって、恥ずかしいんですもん……だから!」
「ほら。そんな声出すと、聞こえるだろ……?」
「っ……ん」
ふぅっと吐息をかけられて顔を背けると、軽く耳たぶを甘噛みされた。
ぞくりと身体が震え、吐息が熱く漏れる。
「やっ……いじわる……」
「いいの? 孝之とか、ご両親にバレても」
「そう思うなら……っ……今日は――」
「いまさら、我慢できるわけないだろ」
「んっく……ひぁ」
ぺろっと耳の弱い部分を舐められて、情けない声が漏れる。
それを聞いて楽しそうに耳元で笑った彼が、ボタンの外れたパジャマの合わせから手のひらを入れた。
「こんなに甘くて……ヤラシイ声出すんだってバレてもいいの?」
「……いじわる……ぅ」
力なく答えるしかできず、口元に手を当てる。
……うぅ。こうしてないと、声が勝手に漏れちゃうんだもん。
だけど、彼はまったく気にしていない様子だった。
「バレたら困るだろ? ……マズいもんな。だから、しっかりがんばりなよ?」
「っ……んっ、や……」
ゆっくりと胸を撫でていた手が、掠めるように硬くなり始めた胸の先端へ触れた。
円を描くようにされ、力の入らない手で彼の肩口を押す。
……けど。
そんな弱い拒否で彼が許してくれるはずなんて、ない。
パジャマを肩からずらして器用に脱がし、じかに胸を包まれる。
「ん……ぅ」
柔らかく揉みしだかれ、自分の意思と反するように声が漏れてしまう。
それがわかっているように舌で撫でられると、どんどん身体に力が入らなくなっていく。
……言うことを聞いてくれない。
あちこちを軽く吸われ、そのたびに彼の指がそこをなぞる。
途中で、数えるのはやめた。
……だって……あまりにも多いんだもん。
「あ……んっ」
撫でるように、身体のあちこちを彼の手のひらが這う。
何かを求めるようにしていたけれど、最後にはズボンへ行き着いた。
「っ……ん!」
ショーツごと脱がされてしまい、ひんやりとした空気にさらされる。
もぉ……こんなに明るいのに、やだよぉ……。
いつものことだけど、やっぱりこうした明るい蛍光灯の下でするのは、恥ずかしさが先立つ。
彼の寝室のように淡い光ならばまだいいけれど……やっぱり、こう……ダイレクトに……全部が見えちゃうんだもん。
「やっ……ぁん」
優しく太腿の内側を撫でながら、彼の手のひらが上に向かう。
そして、何度も往復されるたびに彼へ回した手が震えた。
「ひぁっ……う……っ!」
いきなり秘部を撫でられ、ヘンな声が漏れる。
「……いけない子」
「そ……んなっ……や、ぅっ……先生がっ……ん!」
「そんな声出したら、バレるだろ?」
「……じゃあ……やめて……」
「それは、無理」
にっこりと笑みを見せられ、たまらず眉が寄った。
……そんなぁ。
だって、それじゃあ……言ってることとやってることが全然、別じゃないですか。
「あ、あっ……んっ!」
くちゅっと小さく音が響いたかと思うと、遠慮なく彼の指が中に這入ってきた。
すぐに弱い部分を探り当てられ、わざとそこばかりを刺激するように擦りあげる。
……相変わらず、こうされてしまうと自分には為す術がない。
ただ、今夜だけは……声を漏らすわけにいかないの。
だって、廊下を隔てただけの隣の部屋にはお兄ちゃんが。
そして、階下には――……両親が、いるわけで。
ぎし、ときしむ音がするたびに、鼓動が早くなる。
いつもはこんなにベッドがきしむことはないし……すぐ下の部屋には……ふたりが……!
「ん、んぁっ……あ、だめっ……!」
漏れてしまう言葉を噛んで首を振るものの、彼の動きは一向に止まらない。
もぉ……ヘンなこと考えたから……余計に、力が入らなくなる。
今は、余計なことを考えちゃダメ。
だって、そうでもしないと……。
「んんっ……! ぅん、っふ……ぁ」
……すべてが、快感に変わるから。
ぎゅっと彼の服を握りながら、耐えられることには堪える。
だけど、どうしたって彼に与えられる快感のほうが大きいから……声だって自然に漏れちゃうのに。
「! やぁっ……んん、せんせっ……だめ……ぇ!」
「……そんな声出したら、孝之に聞こえるんじゃないのか?」
「だっ、て……っん、だ……めなの……っ」
わざと耳元で囁きながら、充血し始めている花芽とナカの弱い部分を執拗に責められ、声がどうのという場合じゃなくなってきていた。
曖昧な、ライン。
今にでも果ててしまいそうなのに、わざと焦らすように彼が動きを時おり止める。
……なぶられてる。
うっすらと瞳を開けて彼を見ると、ものすごく楽しそうな笑みが見えた。
荒く肩で息をつきながら眉を寄せるも、そ知らぬ顔で弄ばれる。
……いじわる……。
もぉ、どうしてこんなに楽しそうなんだろう。
「……かわいいね」
「う……嘘つきぃ……」
泣きそうになりながら眉を寄せると、怪訝そうに眉を寄せてから――……耳たぶを軽く舐めた。
……え……?
しぃ、と唇に指を当て、視線をドアに向ける。
それにつられて同じようにそちらを向く――……と。
「……っ……」
階段を上がってくる音。
軽いきしみと、リズムのいい一定の間隔で音が近づいてきていた。
……マズい。
もし、こんな状況でノックされた日には………どうしよう。
言い訳なんて、到底できっこない。
家族は誰も、彼が今この部屋にいることなんて知らないし、何よりも……この格好……なんて言えばいいの?
彼は服を着ているけれど、私はもう……裸だし。
口元に手を当てて喉を鳴らすと、階段を上がりきって音が向かいに消えた。
……お兄ちゃんだ。
それがわかると、再び喉が鳴る。
……うぅ。ますます、声を出せない。
やっぱり、もう終わりに――……と思ったそのとき、彼が足の間に身体を滑りこませた。
「なっ……!?」
とっても小さく呟いて手を口元に当てて見ると、そのまま太腿の内側を舌で撫でてきた。
「やっ……ん…!」
漏れた声に慌てて口元を押さえるも、視線を1度こちらに向けてから再び舌を動かす。
……え、わざと……!?
驚いて彼を見ると、今度は視線を合わせたりしなかった。
代わりに、彼の唇がどんどん上に近づいて――……。
「っ……!!」
ぱくっと、唇で花芽を挟まれた。
びくんっと身体が震え、声が漏れそうになる。
ぎゅうっと手を合わせて肩を抱くように腕を握り締めると、彼がゆっくりと舌先を動かした。
「……あ、あ……ん……んぁ」
優しく舐められるたびにも、予想以上に身体が反応を見せる。
……と同時に、彼を欲しがる自分もいた。
すごくいやらしくて、淫らだと思うけれど……だけど、どうしようもなかった。
彼以外に、こんな快感を与えてくれる人はいないのだから。
「……ぅんっ、ん……っ」
舌先で円を描くようにされると、卑猥な音が響いた。
濡れた水の音。
……もぉ……やだよぉ……。
すごくえっちで、どうしようもなくなる。
「せんせぇ……も……許して……」
「ダメ」
「だ、だって……! 隣に、お兄ちゃ――」
「声出さなきゃいいだろ?」
「む……り……っ」
答えながらも責めるのをやめてくれない、彼。
それどころか、そのままで呟かれるから……吐息と動く唇が当たるわけで。
「んっ……ん……!」
自分の意思に関わらず勝手に反応を見せる、身体。
それが、いやらしくて、淫らで……もぉーー。
「いじわるっ……」
「……誰が……」
「っ……ひゃん!」
「……誰が意地悪だって?」
軽く甘噛みしてから顔を上げた彼が、瞳を細めて唇を舐めた。
肩で息をしながら見つめていると、顔を近づけてから指で頬を撫でる。
「……だって……声、出ちゃうもん……」
「我慢すればいいだろ?」
「できませんよっ!」
首を振って抵抗を見せるものの、一向に離してくれそうにはなかった。
――……でも、次の瞬間。
とんでもないことが身に起きた。
「っんぁ!」
何も言わずに彼が這入ってきたのだ。
「やっ……ん!」
一気に奥まで彼で満たされ、声が漏れる。
そのまま抱きしめてくれた彼が、ゆるゆると動き出す。
「はぁ……うっん、ん……!」
弱い部分を撫であげながらの動きに、自然に声が漏れる。
びくびくと締め付ける、自身。
それに構うことなく、執拗に彼が同じ部分をこすりあげた。
「……せんせ……ぇ……もぅっ、や……」
「イヤとか言わせないって言ってるだろ。……告白、ね。っくそ……」
「んっ! くぅ……」
小さく悪態をついてから、ぐいっと身体を起こされる。
と同時に胸を再び濡れた感触が襲った。
「あ、ぅっ……ん、んっ……せんせ……ぇ」
絡めるように繰り返される、舌での愛撫。
もぉ…それだけで、精一杯なんだけれど。
腰を抱くように回された腕に支えられながら首に腕を回すと、ぐいっと背中を押して距離を縮めた。
より深く繋がったのもあるけれど、同時に責められるのは……やっぱり弱い。
「ふっ……ぁ」
ぱく、と胸を軽く唇で挟まれ、びくっと背が震える。
まるで、そんな私のよううを確認するかのように再び舌で撫で上げられ、しばらくの間責め続けられた。
……なんか、いつもと違う。
なんていうか、私の反応を楽しんでるっていうか……。
ううん、それはいつもと変わらないんだけど……さっきもそうだし……なんか、不機嫌な感じがする。
もしかして、告白された……から?
でも、妬いてくれてるとは思えない……けど……。
「……先生……」
「ん……?」
目を合わせて彼を見ると、いつもと同じ優しい顔だった。
……いつもと一緒。
なんだけど……。
「なんか……いつもと違う」
「……何が?」
「先生が……」
「……俺?」
「うん」
怪訝そうに眉を寄せた彼に小さくうなずくと、少し気まずそうに視線を落とした。
……やっぱり。
何かが違う。
「もしかして、黒川君の――んっ!」
「……その名前を出すな」
ぐいっと一際強く突き上げられ、たまらず身体を折る。
「んっ……あぁ」
鎖骨の少し下あたりに唇を寄せた彼が、いつもよりきつく吸い付いた。
そして、離してくれたかと思いきや……何度も撫でるように舌を這わせる。
「……や……ぁ」
「俺以外の男の名前を呼ぶな」
いつもの彼とは違って、ずっと小さな声。
だけど、芯の強さがかなり現れている。
「……せん、せ……」
「嫉妬っていうより……腹が立つ。……俺が知らないところで……」
「! んっ……ん……」
体勢を変えてベッドに再び倒され、そのままぐいっと突き上げられる。
簡単に両腕を枕元に追いやってから、首筋に彼が軽く噛み付いた。
「……つけるか。ここに」
「なっ……! だ、めっ……! だって、明日はまだ学校――」
「……つけたい」
「ん……せんせ……ぇ」
吐息交じりに耳元で囁かれ、ぞくりと背中が粟立つ。
何度かキスをするように首筋に触れた彼が、改めてそこを吸う。
こんなふうにされると、抵抗できない。
……ここじゃ、見えちゃう。
でも、いつものように意地悪じゃなくて……優しく言われると、どうしても拒めない。
もちろん、意地悪に言われても……断れないんだけど。
「……はぁ……」
ちゅ、と小さく音を立てて彼が唇を離すと、目を合わせてきた。
「……バレるかもな。みんなに」
「先生……」
髪を撫でながら漏らした笑みは、少しだけ自嘲的だった。
普段、見るようなことのない顔。
あまりにも不安になるような顔で、たまらず手が伸びる。
いつも彼がしてくれるように彼の頬へ手のひらを寄せると、ぎゅっと握るかたちで手を重ねた。
「……なんつーか……ダメだ。大人気ないよな」
「え……?」
「大事にしてたものを横取りされた気分。……子どもと一緒だな」
「…………先生……」
「アイツに告白されたって聞いて自制が利かなくなった。わかってるんだぞ? 頭では。……アイツになびいたりしないことくらい。……だけど……ね。なんか……悔しい。ものすごく」
いつもより低い声で、視線を外して独り言のように呟かれ、何も言えなかった。
こんな彼を見たのは、初めてかもしれない。
……こんなに……儚い顔をしている彼は。
「……羽織ちゃん?」
「会いたかったの……すごく。先生に会って……こうしてもらいたかった」
目を閉じてしがみつくように腕を回すと、親指で唇をなぞってくれた。
そこでうっすら目を開けると……とっても優しい目で。
思わず、笑みが浮かぶ。
「……自慢できる彼なの。私の……大事な人で、すごく大切で」
ぽつりぽつりとしか出てこない言葉ながらも、彼はきちんと聞いてくれた。
愛しげに見つめられ、じわじわと心の奥があたたかく震える。
「黒川君に……ね、言いたかったくらいなんですよ? ……先生が、私の彼なんだって」
「……言えばよかったのに」
「もぅ。困るでしょっ」
「困らないよ」
ふっと見せられた真剣な顔に目を見張ると、髪を撫でながら耳元に唇を寄せた。
「むしろ、誇示したい気分」
「……先生……」
「でもまぁ……それができないから、こうしたんだけど」
「っ……」
いたずらっぽく瞳を細めてから、再び首につけた跡を舐めた。
そのままゆっくりと動き出され、落ち着き始めた身体が再び悦を求め始める。
「せ……んせっ……」
たまらず彼に腕を回すと、首から徐々に降りて行きながら唇をあちこちに寄せた。
そのたびに身体が無意識に震え、奥から湧き上がってくる快感に流されてしまいそうになる。
「は……ぁん」
抱きしめてくれている腕に力がこもり、彼の鼓動が伝わってきた。
……すごく安心する。
「……俺だけだ」
「…………んっ……」
「こうして………触るのもキスするのも……甘い声も……狂いそうな顔も……全部」
「……先生だけ、だもん……こうしてほしいのは」
「…………愛してるよ」
「っ……私も……」
ぞくっと大きな快感と一緒に、彼に対する愛しさが身体中を巡る。
嬉しさと、少しの照れと……そして、彼に対する自分の大きな想いが溢れていく。
名前を呼べば、すぐに応えてくれる。
手を伸ばせば、すぐここに彼がいる。
こうしていられるのが普通だと、当り前だと考えてしまうようになったのは、一体いつからだったのだろう。
きっと、安心というぬるい水に浸かりきっていた罰なんだ。
彼はいつもそばにいて、こうして応えてくれる……と。
甘えすぎていたのは私のほうだったのに。
だって、努力せずに得られるものなんて、何もないんだから。
『当り前』だなんておこがましい考えをしていた自分が、恥ずかしかった。
彼を好きでいること。
それは、当り前すぎるけど……でも、彼にも好きでいてもらうためには、何もしないでいるわけにはいかないんだよね。
自分の気持ちを正直に伝えること。
……これが、きっと大事なんだと思う。
「……大好き。ううんっ……愛してる……」
「…………愛してるよ」
彼が本当に好きで、大切で……必要な人。
それがわかっているのに、口に出すことが彼に比べてずっと少なかった気がする。
自己暗示とは言わないけれど、確かめることは大事なこと。
自分が変われば、そういう方向に向かっていけば、きっと……きっと、今回のように過去の恋愛に振り回されたりしないだろう。
今いちばん誰のことが好きで、誰のことが必要で……誰に必要とされているかが、はっきりするから。
「! んっ……ぁんっ」
一瞬柔らかい笑みを返してくれた彼が、途端に動きを一変させた。
抱きしめられたままで突き上げられ、深く奥まで当たる。
大きな刺激に比例するように身体を支配していく、怖いくらいの快感。
だけど……身体が欲しがる。
淫らだけど、いやらしいと思うけれど……でも、彼が欲しかった。
「やっ、ぁ……! んっく……ふぁあ……」
「……もっと……声が聞きたい」
「だめっ……みんなに……バレちゃうっ……」
「……それでもイイって思うのは……ダメ?」
「もぉ……いじわる……」
「今さら気付いたワケじゃないだろ? ……ねぇ、羽織。俺を呼んで」
「っ……」
耳元で囁いた彼が、ぺろりと首筋を舐める。
うぅ、ずるいよぉ。
こんなときに名前を呼ぶなんて、身体が思い切り反応しちゃう。
「んっ……く……ぁ、や、だめっ……! もぅっ……もぉ……ダメなのっ……」
「ほら。俺だけを呼んでよ。……ねぇ、羽織」
「っ……祐恭……さっ……あ、あっ……! 祐恭さ、ぁんっ……!」
「……はぁ……いい声……ダメだ。もっと……」
「あ、あっ……祐恭さっ……あぁあんっ」
角度を変えての律動に、身体は敏感に反応する。
きゅっ、とたび重なる自身の締め付けにも彼は動きを変えることなく、そのまま責めあげられることになった。
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