「愛してる」
「か…」
―――遠くの空に想いを馳せながら、ぽつり愛の言葉を呟いてみる。
あの時思えなかった一言、それがすんなり出てくるのはきっと「彼女」がいるおかげ…。
「まーさとーー?」
ほら、笑顔で呼ぶ彼女の笑顔。
それに救われて足を一歩踏み出した。
「愛してる」
「…ね…」
昨夜は…、まぁ、自分の素直な気持ちなんだし、いつも普通に言ってるわけだから、違和感がないっちゃぁないんだけど…。
やっぱ、照れるよ、な…。
「…せんせー?」
愛しい彼女は、可愛いサンタちっくな衣服を探してきてくれたみたいで、俺の下から顔を覗き込んでいる。
「考え事?」
「いーや?羽織ちゃんと、今日はどうやって楽しもうかな、と思って」
にっこり笑って。
うん、とりあえず、とびっきりの甘いキスでもしますか。
「愛してる」
「…なんて、誰が言うかっつーの…」
テレビの再放送を眺めながらぼそり呟いて、絵里の支度を待ってみる。
女の支度は手間取っていて、待ってる間に行く気が削がれるのが多々あるが、今日みたいな日は…、まぁ待ってやらなくもない、と思えた。
「じゅーんやー」
ほーっら、お姫さまの登場だ。
きっと、くるくる回って「どう?綺麗でしょ?」なんて鼻持ちならないような言い方で俺を誘うんだ。
「今行くよ」
そう返事して、どうやって彼女を黙らせようか考えながら、寝室のドアを開いた。
「愛してる」
「ねぇ…」
何度も何度も同じ事言われて、聞く彼女もうざったいんじゃねぇのか?
とか、テレビの再放送を見てると毎回思う。
「はぁ」
一つ息を吐いて、携帯を見るとアラームが鳴り出した。
時間だ。
「みのる…?」
心細いような声を出して、お姫様の登場だ。ていうか、グットタイミング。
立ち上がってテレビを消して、くるり振り返れば―――
「…ど、…かな…」
誰にも見せたくない、誰にもさらわせたくない、俺だけのお姫様の姿。
喉が鳴ったのを確認して、理性総動員で気持ちを鎮めるととりあえず返事が返ってこなくて不安そうな顔をし始めた真姫に向かって、強く抱きしめることにしますか。
…っていうか、頼むから押し倒すなよ?俺…。
――――――Christmas Day
「―――さて、行きますか」
――――――それぞれのクリスマスが、動き出す。
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