―――羽織&祐恭side



「―――えーっと…」
 
とりあえず、稔さんが去って行った方向を眺めて、残されて固まった彼女を持つ雅都さんと二人で困っていた。
まず思うことは、稔さん達のキスシーンが結構刺激的だったってこと。
羽織ちゃん見てると、まだ少しぎこちなく笑ってるし、尋未ちゃんに限っては硬直度が高い。
 
「…羽織ちゃん、そろそろ俺達も…」
「え、ええ!?」
「なにをそんなに驚いてるの…?」
「いや、あの、その…」
「ん?」
「…なんでもないです…」
 
顔を真っ赤にして俯いちゃって可愛いんだからなぁ…。
視線を雅都さんに戻すと彼も、俺と同様に彼女を抱き寄せにっこりと微笑んでいた。
 
「…また、会えたら良いですね」
「こちらこそ」
「今日は本当に楽しかったです。雅都さんになんていえばいいか…」
「気にしないでください。むしろ、今度は浩介さんとも会いたいですし」
「祖父も喜びます」
「そう言ってもらえると、光栄だな」
「…それじゃ、良いクリスマスを」
「祐恭くんも」
 
にっこり二人で笑みを交わして、彼女を見ると彼女達も各々手を振っていた。
硬直から解けた尋未ちゃんも笑顔で俺達を見送ってくれた。
来たときに手渡された荷物札をボーイさんに渡すと、荷物が、次に車のキーを渡したら程なくしてホテルの前に見慣れた車が停まった。
 
「ありがとうございます」
 
お礼を言うと、丁寧に運転してくれたボーイさんがにっこりと微笑んで。
   

「楽しい夜を」
 

と、俺の掌に小さな小箱を渡してくれた。
一瞬なんのことか解らずにロータリーを周ると、ホテルの入り口に雅都さんと尋未ちゃんの姿が見えた。
ハザードを一回焚いて、挨拶すると俺はほんのり渋滞から外れたコースに車を滑らせた。
                   





―――――早く、キスしたかったの。
 
なんて言ったら、何度となくキスするところだったでしょう?
先生のことだもん。また私が立てなくなるぐらいにキスをすると思うの。
だから、あの時顔を真っ赤にして俯くだけにしたんだ。
目の前で繰り広げられた稔さんと真姫ちゃんの「キスシーン」に圧倒されたっていうのもあるんだけどね。
 
「…そういえば羽織ちゃんは酔ってないね」
 
不思議そうに運転席で呟いた彼の言葉を聞いて、くすくすと笑う。
 
「飲む前に、絵里の顔を見たの」
「…顔?」
「それで、なにかあるなーと思って飲まないでおいたんだ。だから、実質飲んでるのは私以外の三人だと思うよ」
「…それはそれは…。羽織ちゃんも、人を欺くのが上手になったことで」
「別に欺いてませんよ?私だって学習するんだから」
「へー」
 
ぽちっとラジオをつけると、クリスマスソングで溢れ返っていた。
ジングルベル、から、きよしこの夜、などなど。
鼻歌歌っちゃうかも。
 
「…今日、楽しかったね」
「うん。先生のおかげ」
「いやいや、それならじーちゃんに言ってくれよ」
「あ、そっか。もともとは浩介さんの招待状だしね」
「そうそう」
 
二人和やかな雰囲気で車を滑らせると、東京の夜景が次から次へと見えてきた。
幻想的な赤や白のネオンが煌いていてまるで宝石箱みたい。
 
「…雪、早く降ればいいのに…」
 
ぽつり呟いた言葉に無意識のうちに、本音が出た。
     


「……祐恭さんと一緒に見る雪、楽しみだったんだけどなー…」
     


つまらなそうに呟いた私の本音。
 
「…羽織ちゃん…」
「ん?」
 
赤信号で止まってる車内の中、強引に抱き寄せられて塞がれたのは唇で。
声をあげる間もなく、咥内を舌で一舐めされたら信号が青に変わった。
 
「…ごちそうさま」
「…先生のえっち…」
「そんなこと言うと、もっとすごいキスしてやろうか?」
 
にっこり微笑まれて思わず大人っぽい横顔にどきどきした。
自分のどきどきが伝わらないように、窓の外に散らばるネオンの宝石を眺めていたら、車窓からは見慣れた景色が次第に飛び込んできていた。
       


「―――ふぅ…んっ」
       


現在22時30分。
マンション内に人影はないにしても、エレベーターからずっとキスされて抱き上げられながら、部屋まで帰ってくるなんてこと今まで一度もなかった。
 
――バタン
 
と後ろ手で閉めた先生の大きな手がいやに耳について、どきどきが最高潮に達する。
部屋に入って電気も着けずに、先生はようやっと私を玄関に座らせた。
 
「…っはぁ…」
 
久しぶりに呼吸したような気分になる。
一気に息を吸い込むと、先生の香りがして体中に先生が入ってくるようだ。
 
「―――っふぅ…っ」
 
ここでも息もつけないぐらいのキスが落ちてくる。
器用に靴を脱がされて、再び抱き上げられた。先生も靴を脱いで、直行するのは寝室。
 
「…って…、ま…って」
 
ゆっくりとベットに降ろされて、ようやっと唇を離してもらえた。
酸欠に近い状態で意識が朦朧としてくる。気付けば先生はコートを脱がして、自分のコートも脱いでいた。
真っ暗闇。
先生が自分のコートや、スーツに手間取ってる間に私はベットサイドの電気のスイッチを入れた。
   

ぱちり。
   

「―――ぁんっ」
「こら、誰が動いていいって言った?」
「あ、あ、だ…ってぇ…」
 
先生に後ろを向けたのがいけなかった。
彼は羽交い絞めるように、後ろから私の胸を揉みしだいた。ゆっくりと形を変える自分の胸がライトに照らされてえっちな気分になるわけで。
そんな私に、耳元で
 
「…立ってきてるよ?ココ」
 
と、甘い声で胸の立ち上がった先端をつつかれると、余計に体が反応するというもの。
嬉しそうに服の上からでも解る硬くなった先端を摘みながらゆっくりと揉んでいると、両腕で支えていた体がベットに落ちる。
 
「…おっと…」
 
うつ伏せにベットの伏せた私の体を、先生がくるり反転させて上に向けさせる。
そこにはライトに映し出された先生の半裸体。
シャツのボタンは全て外され、淫らに前開きになって優しい笑みでこちらを見下ろしていた。
彼の行為を止めるために着けた電気が、私の体を照らす役目をしていることに少々恥かしくなりながらも、先生はご機嫌な様子でにっこりと微笑む。
 
「…羽織、眼鏡とって」
 
優しい声で、熱っぽいまなざしで言われたら素直に言うことをきくしかない。
私は、おずおずと両手を伸ばして先生の眼鏡をゆっくりと外した。
 
「…ん。いい子」
「ずるい…」
「なにが?」
 
眼鏡をベットサイドに置くと、先生がにっこり笑いながら浩介さんからもらったサンタのような服に手をかけていた。
 
「…優しい顔して、優しい声して、……言うこと利かせる…」
「嫌なの?」
 
胸の合い間からこちらに顔を向けた先生の顔は、意地悪い笑顔で私の反応を楽しんでいるようだった。
 
「…い、やってわけじゃ…」
「じゃ、いいじゃない」
「別に良いわけでも…」
 
ぺろり。
 
「ぁんっ!!!」
 
冷たい空気にねっとりとした熱いものが、先端に絡まった。
先生は私の胸の先端を口に含み、嬉しそうにぺろぺろと舐め始める。
気持ち良い快感に体が震えながら反り返る体を必死で我慢していたら、ぺろぺろと舐めながら下腹部へその手は降りていった。
 
「ひゃぁ…」
「…びしょびしょ?」
「やぁ…っ」
 
こり、少し甘噛みされた。
硬くなった胸のいただきから、体全体にしびれるような快感が走り、声が出なかった。
 
「認めないなら、こうだよ?」
「あ、あぁん…、やぁ…っ」
 
ずぷずぷ、と先生の指がすぐに入ってきた。
かき回すようにぐちゅぐちゅと音を奏でさせ、弱い場所を執拗に攻め立てる。
 
「あ、あ、…っ」
「なに?言ってごらん?」
「……う、きょーさぁん…っ」
 
咄嗟に出た彼の名前。
この場でこの名前を呼んだら火に油を注ぐ状態になるかもしれない。って解っているのに、どうしても「先生」って呼びたくなかった。
クリスマスの魔法かな?
ちゃんと、「瀬尋祐恭」として彼を愛してあげたかった。
 
「…あー…、もうっ!!!」
 
イライラしたように私の中から指を引き抜いて、ベットサイドから避妊具を取り出した。
そのまま素早くそれを装着して、私の足の間に体を押し入れる。
 
「あ、ああああっ!」
「は、おりちゃんが、…悪い…っ」
 
熱いモノが奥へ奥へと押し入ってきた。
快感に足が上にあがると先生が突き上げる。
ぎゅぅって先生のシャツにしがみ付いて必死に快感に押し流されないように、彼の瞳を見つめる。
 
「あ、んま見るな…よ」
「どして…?」
「……めちゃくちゃにしてやりたく、なる、だろ…!」
 
何度も何度も突き上げるように、彼に揺さぶられた。
 
「可愛い顔して、俺の名前、なんか、呼ぶな、よな…」
「そ、んな…こ…、して、な…いぃっ。ぁあんっ」
「ほんっと、やばいって…」
「…?」
 
突き上げる回数が減って、急に止まってしまった快感になにが起きたのかと先生を見ると、ぐったりとなにかに耐えている顔。
 
「…せんせ?」
「駄目、もうイッちゃうって…」
「…いーのに…」
「だーめ。俺が羽織ちゃんをめいっぱい気持ち良くしてあげたいの」
 
そう言うなり、再びつんと上を向いた胸の突起を口に含む。
ピンク色に染まったそれは先生の唾液で艶っぽく妖しい光を帯びていた。
 
「はぁんっ」
 
ぴちゃぴちゃ、ぺろぺろ、とわざと音を出して楽しむように先生は私を見上げた。
自分の乳首を舐め上げられる場所をわざと見せ付けられてるようで、余計に羞恥心が大きくなる。
途端に顔を背けた私に、先生はうめいた。
 
「うっ…。だから、締めるなってば…っ」
「な、締めてないぃ…っ」
 
乳首を咥えていた唇を離し、再び先生はゆるゆると腰を動かし始めた。
突き上げるたびに快感が波のように押し寄せてくる。なにをしても、彼の感じている顔しか見えない。
耳元では切なげに自分の名前を呼ぶ、彼の声。
 
「は、おり…っ」
「うきょ、…さぁ…っん」
 
一際強く二人で抱きしめると、一緒に果てが見えた。
 
「くぅ…っ!!!!」
「ふぅんんんんっ」
 
どくんどくん、と脈打ちながら自分の中に己を解き放つ先生を感じて、私も全てを受け止めようと、崩れ落ちてきた先生の体を抱きしめた。


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