ピンポーン
「いらっしゃい。今開けるね。部屋のドア開いてるから入ってきていいよー。」
オートロックの鍵を開けてやり、しばらくするとガチャ、と音がして2人が入ってくる。
「無用心じゃない?カギかけないなんて。」
「下は掛かるもん。まぁ、いいじゃん、もう少しでご飯、出来るからまっててね。」
キッチンに立ちながら2人をリビングへ促す。
「荷物適当に置いといていいから。」
「すっごーい広いマンション。見晴らしもいいねぇ。ほんとに1人暮らしなの?」
「うん。まぁね。」
テーブルセットしながら答える。
「出来たから食べよ」
テーブルの上には、チキンのトマト煮、ポテトサラダ、ライス。
「味は保障しないけど召し上がれ。」
「「いただきます」」
ぱく、もぐもぐ・・・・
「ど?」
「「おいしー」」
「ありがと。」
にっこり笑う。
「恭子ってなんでも出来るのねぇ。」
「何でもじゃないよ?お兄ちゃんにはいっつも女らしくないって言われるし。」
「へぇお兄さんいるんだ。」
「え、あ、うん。そ。嫌な野郎でさ。」
やばいやばい、ついうっかり口にでちゃうなぁ。
「へぇ、それにしてもこれ、おいしい。羽織も料理上手だけど。」
「そーなんだ。」
「そんなことないよぉ。」
「んで、絵里は?」
「うっ。聞かないで。」
「あはは、じゃぁ今度、羽織の料理食べさせてね!」
なんて、食事も終わってお風呂も入ってパジャマパーティーの時間。
家族のこととかいろいろ聞かれたけどまぁ、辺り障りの無いように答えておく。

2人が寝息をたてはじめる。そんな2人の顔見ながらついつい顔がほころんじゃう。
別室でキーボードを叩く。
「―――――接触成功、っと。」
電源を落とし、寝室へ。
さてさて、明日から楽しみだ。
しばらく、私に付き合ってね、お2さん♪

いっぽう瀬尋先生
「・・・・・・・・寝るか。」
ほんとに羽織がいないとだらしないわね瀬尋先生


土曜日の朝
2人より早く起きて朝ごはんの支度。
確か、絵里は牛乳絶対だったよね。
テーブルにはバターロールとフランスパン。牛乳とヨーグルトとジャム。
それに、スクランブルエッグ。まぁこんなもんかな?

「さてっと。」
今だに寝てるかわいい2人の寝顔を堪能してから起こす。
「ほらほら、起きてよ〜街の案内してくれるんでしょ〜?」
「・・・んぅ。・・・・おはよ。」
さすが羽織。寝起きはいいね。誰に躾けられてるのかしら。
「・・むぁ、もーあさぁ?・・・・ねむーい」
まだ、布団に愛されてるのは絵里。苦労してたんだろうな。

しばらく格闘してから3人で朝ごはん。
「ん〜ウマイ。」
「牛乳を褒められてもねぇ。」
「牛乳で私は幸せなの。」
「このスクランブルエッグ何はいってるの?おいし〜。」
「んとね、チーズと生クリーム」
「へぇ。今度やってみよ。」
「誰にかにゃぁ?羽織ちゃん。」
「恭子ってば決まってるじゃん。愛しの君によ。」
「え、絵里ってば!」
笑い声がある食事ってそれも一種の調味料だよね。ごはんがおいし。

「今日一日おねがいしまーす。」
「さって、どっからいこっか。」
「そーだね。」
「とりあえず車出すから下に行っててよ。」
「「えっ」」
「ん?なに?」
「恭子、免許もってるの?」
「18だしね。1人暮らしするのにいろいろ便利でしょ?」
「「・・・」」
車を回して、2人を乗せる。
「若葉マークだけど安全運転だから安心してね?」
って言ってるけど信用してくれてなさそう。一応、こっちで、正規の手続きで免許取ったから平気だと思うんだけどな。
「ん〜無言にならないでよぉ。ナビもついてるし、平気だってば。」
「ごめん。車もそうだけどマニュアル車でびっくりしただけ。じゃぁとりあえず、近くのショッピングモールいってみる?」
「そうだね、あそこはかわいい雑貨屋さんあるしね。」
「りょうかーい。ナビセット。Let’s Go!」
車を走らせて目的地へ。雑貨屋を回ったり、洋服見たり。そうそう、クレープもおいしかった。
楽しい時間を過ごす。おっといけない。ついつい普通に楽しんじゃった。
「どうしたの羽織?さっきから時計ばっかりみて?」
何度も時計を見る羽織。きっと瀬尋先生と、このあと約束してるに違いない。
でも、行かせるわけにはいかないの。ゴメンネ羽織。
「ううん、そろそろ帰らない?夜の運転大変だし。」
「そーだね。あらかた回ったかな?」
「そっか。じゃぁ帰ろぉ。」
家について、荷物をまとめる2人。後ろで寂しそうに見つめる私。
「忘れ物ない?ま、あったほうが嬉しいけど・・・。」
「なんでさ?」
「だって、明日会える口実が出来るじゃん・・・。」
出来るだけ寂しそうに話す。
「また来るからさ。ね?」
「そうそう、月曜日には会えるんだし。」
「うん・・・。そぉ・・・だね。じゃぁ、送ってくね。」
「ううん!いいよ、気を使わなくて!!ね、羽織。」
うんうんとうなずく羽織。
「私の運転怖かった?」
「そうじゃなくて、その、えっとぉ」
んふふ、困ってる困ってる。笑いが出そうだけどガマンガマン。寂しそうにね?
「えっと、なに?」
「ん〜。そのね、この後うちら彼氏の所に行くのよ。」
「そっか。でも、外暗いし歩きだと危ないよ?」
「大丈夫、大丈夫。私、強いから。」
「ダメ!私が彼氏の家まで送っていくか、迎えに来てもらわないと返さない!」
「でも、近くだし。」
「近くてもダメ!」
私の勢いに押されてか、2人とも顔を見合わせてる。
「上着取ってくるから、逃げちゃダメだからね」
ある意味、押し切った形で2人をリビングに待たす。
「どーするの絵里?」
「どーするも、迎えに来てもらうよりは前で降ろしてもらった方がバレないんじゃない?」
「そーするしかないね。」
「恭子って案外強引だね。誰かさんに似てない?」
と絵里
「・・・それって先生のこと?」
「んふふ〜羽織ちゃんは察しがいいねぇ。」
「もぅ、絵里ったら!」
隣の部屋で2人の内緒話を聞いちゃった。さてさて、作戦開始。

ガタ、ガタガタン!
「きゃぁぁ!?」
隣から2人があわてて駆けつける。
「恭子?!」
「大丈夫?!」
ダンボールの山の下敷きになった私。ちょっと派手だったかな。
「痛てて、大丈夫・・・だと思う。」
「しっかりしなよ?ほら立っ・・・!?」
「恭子!頭から血が出てる!」
そういわれて頭に手をやるとぬるっと生暖かいものが手についた。
「・・・っ!私、血だめぇ・・・」
情けない話しだけど血ってだめなの。見ると気絶しちゃう。なので今回も例外なく気絶。うぅ、計算外。

「・・・から。恭子が頭打っちゃって。・・・・・・・でも1人だし・・・」
だれか電話してる?うっすらと意識が戻ってきた。
「私だって逢いたいです。でも、ほっとけないし。・・・・・・っ!ぇぇっと・・・・。・・・・うぅ〜・・・好きですよ。」
羽織だ瀬尋先生だな。羽織いじめの最中かな?原因は私だけど。
「先生わかってくれた?」
「一応・・・。」
「ま、しょうがないよね。1人なんだしほっとけないよ。」
「うん。絵里はどう?」
「「じゃぁしょうがねーな。羽織ちゃんの邪魔するなよ」だって。失礼しちゃう」
クスクスを純也さんらしいねと絵里に笑ってる。
最初の予定とは違ったけど一応足止め成功?そろそろ起きるかな。
モゾリと動く。
「気がついた?羽織―、目が覚めたよ」
「・・・ん?絵里??」
「気分はどう?」
「ん〜・・・へい、き、かな」
「よかった。恭子ってば血を見て気絶しちゃうんだもん。びっくりたよ。」
「うぅ、ごめんね。」
ふんわりあまい、いい匂い。横を見るとさっき買ってきたカップをもった羽織が立ってた。
「はい、ホットミルク。」
手渡されたカップはあったかくて、中身を飲むと体がじんわり温まった。
「ありがと、ごめんね心配かけて。私、どれくらい気絶してた?」
「ん〜1時間くらい?」
「そんなに!?ゴメン、約束あったんでしょ?もう大丈夫だから。」
「大丈夫よ。心の広い彼氏だから。」
と気まずそうに笑う絵里。
「ううん。2日も借りちゃったら彼氏に申し訳ないよ。送ってあげられないから迎えに来てもらってね?」
「頭打ってるんだから、様子見ないとね。もう一日泊まるよ。」
「でも・・・。ありがと・・・ほんとにごめんね。」
うぅ、ほんとにごめん。心はすっごく痛むけど許してね。

寝る前にガーゼを替えてもらい、就寝。2人の寝息を確かめてから、むくりと起きて別室でパソコンの電源を入れる。
カタカタとキーボードを叩いて文章を打ち込む。
「・・・アクシデントがあったけど結果的に良し。」
電源を落とし、2人の寝てる寝室へ。
寝顔を見ると申し訳なさでいっぱいになる。
「もう少し、付き合ってね?」
欠けている月がだいぶ傾いている時間だった。


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