「うぉあ!? すっげ! みかりん、ちょーカワイー!」
「……そんな声出さないでよ」
「なんで? だって、ホントのことじゃん」
「…………」
翌日。
私は、生まれて初めて学校をサボった。
これまで、多少熱があろうとも絶対に休んだりしなかったのに。
……なのに……なぜだか、学校をサボってまで彼と一緒にいて。
そんな自分が、少しわからなくなっていた。
これまでの私らしくない。
らしくはないけど――……。
「すげー嬉しい。ありがとな、みかりん」
「……べ……別に」
ものすごく嬉しそうに笑ってくれた彼に、思わず頬が赤くなった。
「あれあれー? ひょっとして、照れてる?」
「照れてない!」
「うひょーい。みかりん、かわいくねー?」
「ああもう、うるさいッ!」
顔を覗きこんだ彼を睨んで軽く叩くものの、まったく動じずにけらけら笑ってばしばし手を叩いた。
……っくぅ。
私は、見世物のサルか!
駅前という場所で、しかもどう見たって高校生ってバレバレ。
行きかう人々に奇異の眼差しで見られているのがわかって、やっぱり居心地はよくなかった。
「さーてと」
「っ!? ちょっ……!!」
「んじゃ、行こっか」
「ちょちょちょちょっと! 中宮君!!」
「れっつらごー」
生まれて初めて、男の子に手を取られた。
しかもそのままぐいっと引っ張られて、つまづきそうになりながら……改札へ向かう。
……不覚。
情けなくも、男の子らしさをダイレクトに感じて、どきどきしちゃったじゃない。
……男の子の手って、こんなに大きいんだ。
知らなかった。
「うっし。んじゃ、行こっか」
「……う、うん」
こちらを振り返って、満面の笑みを見せた彼。
そんな彼にぎゅっと握られた手のひらをまじまじと見ながら、やっぱり頬が赤くなった。
「ほら、みかりん笑ってー」
「……くっ……!!」
「せーの……ばんざーい!」
「だ!? っきゃぁああああ!!」
必死にしがみついていたバーから両手をもぎ取られ、後ろへと瞬間的に体重がかかった。
同時に、ものすごい風が身体を押して――……。
「お、おちっ! おち!! おちおちおち落ちるーー!!」
「あはははは! みかりん、おもしれー!!」
「お、うぉ、お、おぉお面白くないぃーー!!」
ズザァアアアという音とともに身体が外へ振られ、なんとか身体を押さえつけようと両足を踏ん張る。
だ、だけど!
だけどだけど、やっぱりこわっ……こ、こわっ……!!
――……そこで、ふっと意識が途切れてしまったような気もした。
「はーい、お疲れさまでしたー」
「あはははは!! すんげー面白かったー」
「………………」
ガタガッタンという音とともにスピードが一気に落ち、今度はその反動で身体が前のめりになった。
「……もうヤダ……」
「なんで? すんげー楽しそうだったよ?」
「必死だったの!!」
ジェットコースターでこれほど死にかけたなんて、いったいいつ振りだろうか。
……ありえない。
この年になって、こんなに大声で泣きそうになるなんて。
「はいはい、手を貸してあげるから」
「……うー……」
ぐったりとバーにもたれていたら、彼が腕を取って立ち上がらせてくれた。
……くぅっ。
なんなのよ、その楽しそうな顔は!
必死だった私とは、まったく正反対の彼。
余裕綽々のその笑顔が、やたら頭にくる。
「なんてことするのよ!」
「あてっ」
「死ぬかと思ったでしょうが!」
「あはは! みかりん、かーぅわいぃー」
「うるさいッ!!」
彼の背中を叩きながら出口へ向かうものの、身体に力が入らなくて彼にもたれている状態なので、ものすごくカッコ悪いことこの上ない。
……ださ。
言わないで。自分が1番よくわかってるんだから。
「ほい、んじゃ休憩ね」
「……はぁ」
「ちょっくら、ジュース買ってくるよ」
「……うー……」
おぼつかない足取りでベンチに座らされたまま、身体から力が抜ける。
……うぅ。
気持ち悪い。
何が気持ち悪いって…………ぐるぐると世界が回ってることが、よ。
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