「っ……あ……や、ん……っ……!」
濡れた柔らかな感触が、胸の先を転がす。
ねぶるように舐められるたび、ひくひくと身体が震えて。
自分らしからぬ声も、口づけられて濡れた音も、いつもよりずっと近く聞こえて身体が熱い。
いつもと違う。
だっていつもは……こんなふうに、見えないの。
明るい場所でされている行為すべてが目に入って、ぞくぞくする。
自分へ当たり前に伸ばされる手も、唇も……舌も。
見なければいいのに、目を閉じることができなくて、一層身体は震える。
「は、ぁ……たーく、ん……っ」
身体から力が入らない。
彼を呼ぶ自分の声すらも、ぞくぞくする。
だって……まるで、ねだってるみたいなんだもん。
いつもと違う服を着ているからなのか、場所が違うからなのかはわからないけれど、ワイシャツ姿のまま手を伸ばされ、違う意味で酔っているのかもしれない。
……やだ……。
彼の、本当に目の前。
震えるたびに胸も揺れ、しどけなく開いた唇からは嬌声が漏れる。
「……んゃ……ぁ」
舌で先端を弄られ、含むように舐められる。
どうしよう。
いつもよりずっと、自分が感じているのがわかる。
……とってもはしたない感じ。
どきどきして、ぞくぞくして、身体が言うことを聞かない。
「すげぇ反応いいな。気持ちいいか?」
「っ……そんな、じゃ……」
「身体は正直だぞ」
「んっ!」
ちゅ、と音を立てて唇を離した彼が、私を見上げた。
空気に触れただけなのに、冷やりとして身体がひくつく。
まるで試すような、いたずらっぽい表情。
そんなふうに見られたら、恥ずかしくて仕方ないのに。
「ひゃ……あ、やっ……ん、んんっ……!」
反対の胸を舐め、空いた手がスカートの中を弄る。
たちまち身体が震え、淫らな声が口から漏れてしまう。
それが恥ずかしくて、思わず握った片手を口元へ当てるものの、吐息が熱くてより身体は熱を帯びる。
明るい場所で、こんなふうに……抱っこされたまま、なんて。
考えるだけでぞくぞくする。
こうなるともう、いつもよりずっと感じやすくなってしまうのに。
「もぅ……えっち……」
濡れた音ばかりが耳に絡みつくように聞こえ、身体から力が抜ける。
じんわりと身体の芯が火照って、どうしようもない。
……しかも、私の下には彼の足があって。
短いスカートで座っているせいか、体温を直に感じてより恥ずかしくなる。
だってもう……わかる、のに。
硬いものがずっと足の間にあって、だからこそ余計感じてしまうのに。
「っ……ぁ……えっち……」
「どっちが」
「たーくん、が……っ……もう、んぁ……あ、あっ」
胸に顔をうずめられ、いつもと違う感じに背中が震えた。
ちろりと見える舌先が、もう……もう、本当にいけない人なんだから。
声が漏れて、苦しいほど息が上がる。
制服を着てデートできることも、仕事上がりにそのまま付き合ってくれることも、予想外。
さらに今の状況は想像もできなかったから、このあとがどうなってしまうかわからず、身体はより火照る。
「ん……っ」
ちゅ、と音を立てて唇が離れ、反応を見るかのようなたーくんと目が合った。
……もう。
息が上がっているのは私だけで、たーくんは普段と同じ。
それが恥ずかしくて、ほんの少しだけ悔しくて、両手で頬を包んだまま引き寄せられるように唇を寄せていた。
「っ……」
両手でたーくんの頬を包み、口づける。
ただ、重ねるだけのもの……で終われるはずがなく、いつもしてくれるように、舌で唇を舐める。
……欲しがってる、みたい。
いつもと違って、私のほうがずっといけない子の気分。
こんなふうにキスを求めるなんて、自分でも考えられなかった。
『初めてがたくさん』なのは、私のほう。
制服のままこんなことするなんて、当時は想像もしなかったんだから。
「っ……」
唇を離したものの顔を見ることができず、肩口へ顔をうずめていたら、顎をつかまれた。
すぐ、ここ。
まるで、ショッピングモールへ私を迎えにきてくれたときのような顔が見え、こくりと喉が鳴る。
「たー……っ」
怒ってるわけじゃない。
だけど、普段とも違うのは十分わかる。
強く、引き寄せるように口づけられ、さっきよりもずっと舌が絡む。
「ん、ん……っふ、……んんっ……んぅ」
息が、できない。
一瞬離れるもすぐに塞がれ、むさぼるように口づけられた。
どきどきする、以上。
ときおり聞こえるたーくんの息遣いがとても淫らで、身体がぞくぞくする。
「は……ぁ」
キスが嬉しい。
でも……苦しくて、溶けてしまいそうなほどの悦。
……唇に触れられてるだけなのに、身体がひくつくなんて知らなかった。
どくどくとうるさいほど鼓動が鳴り、身体を支えていられなくて、へたりともたれる。
ワイシャツのままのたーくんと、もうすでに半分ほど裸の私と。
どっちがいけないかなんて、明らか。
もう、顔だけじゃなくて身体も赤いんじゃないかな。
「っ……え!」
たーくんが立ち上がり、まるで小さいころそうされたかのように、抱きかかえられた。
腕が身体を支え、さっきよりももっと高い位置に目線が変わる。
わ……こんな高いところから見るの、初めて。
お尻を支えられたまま、それこそたーくんの背を越すところに視線はあって、とっても特別な時間に思えた。
「っ……!」
下ろすというよりも、半ば放られるようにベッドへ身体が沈んですぐ、たーくんが顔の隣に手をつく。
天蓋つきのベッドなんて、昔を思い出すようでどこか懐かしいけれど、こんなに大きなベッドじゃなかったし……ましてや、彼と一緒にいるなんて、ありえないこと。
ワイシャツのボタンを外しながら唇が重なり、また、声が漏れる。
……どう、したんだろう。
いつもと全然違う雰囲気で、苦しい。
唇の音に、ときおり自分の声が重なって響く。
「……葉月」
「んっ……」
まるで欲しがるように名前を呼ばれ、胸の奥が震えた。
たーくんの声、だめなの。
特にこういうときはもう、ものすごくどきどきして苦しくなる。
目を見てしまえば、絶対に逃げられなくなるような、そんな気分だ。
「……ん、ぁ、あっ……」
ワイシャツとアンダーシャツを脱ぎ、放るようにそこへ。
胸をわしづかまれたまま先端を舐められ、背中が弓なりに反る。
身体がおかしくなりそう。
ワンピースをひき下ろされ、抱きしめられるように肌が重なる。
……気持ちいい、んだよね。
まさに“肌を重ねる”ことが、こんなにも嬉しくて……どきどきするほど心地いいとは、知らなかった。
「ひゃ……っん……!」
吸うように舐められ、身体が震える。
だけど、胸だけのせいじゃない。
腰から撫でるようにしてショーツを脱がされ、指先が秘所に沈む。
くちゅりと濡れた音がいつも以上に響いて、声がとめどなく溢れる。
自分だけじゃなくて、すぐここにいるたーくんの表情も、十分よく見えて。
……もう、どきどきして苦しい。
自分ではない息遣いに胸が締めつけられて、だけど……嬉しくて。
手を伸ばせば彼の素肌に触れられて、その感触もいつもとは違ってとてもどきりとする。
「ん、あっ……あ、ぁ……んっ」
ひだをなぞるように指を這わせた彼が、そこに触れた。
たちまち身体が震え、しどけなく声が漏れる。
くちゅ、と濡れた淫らな音が響き、そのせいで一層自身が煽られるものの、ささやかな指の動きすらもわかって、身体は反応する。
「ん、んっ……ふ……あ、ぁ……そこ……」
指を増やして乱すように秘部に触れられ、喘ぎ声は押さえられない。
口に手を当てていても、我慢しようと唇を閉じても。
撫でられる場所も、舐められる感覚も、肌すべてが彼を欲しているかのように、少しだけぴりぴりした。
「……すげぇ濡れてる」
「っ……言わないで……もう……」
ぺろりと耳たぶを舐めた彼が、楽しげに笑った。
楽しそうって思うのは、私の勝手なものかもしれないけれど……でも、気のせいじゃないように思うの。
息が上がり、くたりと身体が思うように動かない私とは反対に、たーくんはまったく乱れていなくて。
顔に浮かべている笑みが余裕めいて見えるせいか、どうしたらいいかわからなくて、やっぱり唇を噛んでいた。
「なんだ、その顔」
「だって……もう、こんな……」
頬に触れた手のひらが嬉しくて、重ねるように触れると、瞳を細めて口づけた。
……もう。
こんなふうにされたら、顔が緩んじゃいそうになるじゃない。
やっぱりたーくんは、ずるい。
「もう……」
「なんだよ」
「…………大好き」
「っ……お前な」
「だって……ふふ。いけなかった?」
「あー……くっそ。くすぐってぇだろ」
きゅ、と首へ抱きついて耳元で囁くと、眉を寄せて首を振った。
でも、何度だって口にしたい言葉で、想いで。
特別な人なの。
両手で頬に触れると、すべらかで心地よくて、だけどこんなふうに触れるようになるとは思えなかった人なんだもん。
身体を重ねたまま、いつもそうしてくれるように頬を引き寄せる。
普段とは違ってくるりと巻いた髪が胸元に触れて、それもいつもと違うくすぐったさはあった。
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