愛のバクダン
2020.04.21
あと2週間で果たして落ち着くのか……落ち着かない気がします(*´-`)
がしかし、ゴールデンウィーク明けたら、少しは変わってるといいですよね。
そんでもって、10人諭吉が来るらしいのでそれは期待。
自動車税とかね……住民税とかなんとか税って、5月はただでさえ出費がかさむんや……。
それも消費税と一緒に定減税になったらいいのになーーー。
以上、mushokuのわたくしの戯言でした。
さて。
小話もネタが尽きてきたよ(笑)
健全な精神が宿るためには、健全な肉体が必要なんです。
ということは、それこそそういうことですよ奥さん!
とはいえ、濃厚接触ですからね。みんな、自粛するんよ。
リングフィットでもやって、おうち筋トレタイムを増やしていきましょう。
「ねぇ、葉月。今日のおやつ、何がいい?」
「え? 羽織が作ってくれるの?」
「だって、おうち待機になってから、ずーっと葉月が作ってくれてるでしょ? たまには私が作ろうかなって思って」
おうち待機になって、早2ヶ月が経とうとしている。
うーん、なかなかにお腹のあたりがぷよぷよし始めた気もするけれど、見なかったことに……できないけどね。
うぅ。
大学始まったら、少しは今よりも歩く時間は増えるだろうし、人目にさらされるから、きっと気をつけるはず。
だけど、毎日家で勉強だけしていても、楽しさは……どうなんだろう。え、見出せてないのは私だけなのかな。
同じように分厚い本を読んでいるものの、葉月は付箋をつけたりノートへまとめたり、見ているだけだととても楽しそうにも見える。
んんーこれってやっぱり、普段からどんな学習をしているかがわかっちゃうね。
日中は一緒にリビングで勉強しているものの、どうやら葉月は自室へ戻ったときもそんなふうに過ごしてるみたいで、私とは……基礎的なものが違うんだな、とあらためて感じた。
「プリン、チーズケーキ、シュークリーム、ガトーショコラ、チョコレートケーキ、いちごショート、ロールケーキに……どら焼き、みかんゼリー、マフィン、スコーン、クレープ、ホットケーキ……なんかほかにも……あ、パフェ! 昨日食べたいちごパフェ、すごいおいしかったー」
「ふふ。よかった。一緒に作れるおやつって、楽しくておいしくてお得な感じするよね」
「ほんとそれ!」
これまでに葉月が作ってくれたデザートを挙げてみたけれど、私が忘れてるだけで、もっとあるはず。
さすがに、毎日食べてますってわけじゃないけど、ほぼほぼ毎日のルーティンのようにもなっていて、お兄ちゃんが家にいるようになってからはさらに回数が増えた気がする。
「もうさ、お店出せるよね」
「羽織とたーくんが喜んでくれるから、作りがいがあるんだよ」
「紅茶もおいしいし、ある意味毎日アフタヌーンティー開いてる気分だもん」
そう。葉月は日替わりで紅茶のフレーバーを変えてくれていて、それも特別感が増す。
ああ、幸せだなあ。
おいしいおやつがあるって、こんなにもうきうきするんだね。
……って、そうだけどそうじゃなくて!
いつも私たちのために作ってくれるからこそ、たまには葉月をおもてなししたいって気持ちになった。
できることならというか、むしろお兄ちゃんを積極的に動かしながら!
張本人にはまだ内緒だけど!
「作ってくれるなら、なんでも嬉しいよ?」
「そりゃそうかもしれないけど……食べたいもの、ない?」
「んー……おすすめはなぁに?」
「え!? そ、そうだなぁ……あ、じゃあさフルーツ系とクリーム系どっちがいい?」
「どっちもおいしそうね」
「うぅ、ありがたいけどぉお」
まぁ確かに、決められないっていうのはなんとなくわかる。
だって、私も昨日葉月に『パフェとクリームブリュレどっちがいい?』って聞かれて、結局どっちも一緒に作ることにしたんだもん。
ちなみに、クリームブリュレはお風呂上がりにおいしくいただいた。
……ってああもう。
これだから、葉月を休ませてあげられないんだなぁ……反省。
「うーん、あ、わかった。じゃあさ、とりあえず今日は私が何かしら作っておもてなしするから、葉月は自分の時間ゆっくり過ごしてて。ね?」
「いいの?」
「もちろん! 今日はのんびり好きな本読んでね」
バッチリ任せてほしい! と太鼓判は押せない気もするけれど、でも、どうせなら私がたまには作ったものを『おいしい』って食べてほしかった。
いつもの感謝の気持ちをばっちり込めてね!
「……は?」
「えっと、だからね? たまには、葉月におやつ作ってあげたいなって思うんだけど、何がいいと思う?」
お兄ちゃんの部屋へ行ってみたら、どうやらwebで誰かと話しているらしく、パソコンの画面には複数の人たちの顔があった。
……とと、映るつもりはないので、カメラから外れた位置へ立つ。
っていうか、お兄ちゃんの背景なんかすっごいキレイな海外セレブの部屋みたいになってるけど、こんな機能あるの?
と思いきや、ほかの人に至ってはアニメの世界観だったりドラマのセットみたいだったり、はたまた牢屋だったりとバラエティ豊富すぎでしょ。
今どきの会議っていうか……ああ、これ絶対仕事じゃないやつ。
ヘッドフォンを外したお兄ちゃんを見たら気持ちが表情へ出たらしく、なぜか『ほっとけ』と舌打ちされた。
「なんでもいいんじゃね?」
「だから。そうだろうけど、何かしらおもてなししたいでしょ? 日ごろの感謝を込めて」
「日ごろの、ね。まぁ……そうだな。でも、ほぼほぼなんでも作れるだろ? アイツ」
「う」
「だから、俺たちが作るよかよっぽどアイツの作ったモンのほうが、うまいじゃん」
「それは……わかってる、んだけどさ……」
正論だとは思うけれど、でもだって、だって!
たまには、休んでほしいじゃない!
いつも私たちがお世話になりまくりなんだから!
「まぁ、たまにはって気持ちもわからなくねーけど……あー、わーった。んじゃ、作ればいいんだろ? あとで」
「え? お兄ちゃん作ってくれるの?」
「おー。期待しとけ」
ひらひら手を振った彼が、ヘッドフォンを手にした。
あ、もう戻るつもりね。
どうやらマイクだけをミュートにしてあるようで、ぎゃーぎゃーと悲鳴のような声は私まで聞こえていた。
なんだかんだいって、自由というかある意味謳歌してるんだなぁ。
けらけら笑いながらつっこみを始めたお兄ちゃんを見て、ああこの人はどんな状況下でも生きていけるんだろうなと改めて感じた。
「え? これって……」
「……たこ焼き?」
「そ」
宣言通り、14時を過ぎたあたりからお兄ちゃんがキッチンで何かしてるなと思ったものの、私と葉月が覗こうとしたら『立ち入り禁止』と手のひらを向けられた。
そのとき『密』って言ってたけど、それって絶対アレの真似でしょ。
単純に言いたいだけだろうと思ったけれど、つっこまず葉月とふたりでリビングへ戻ることにはした。
で、改めて呼ばれた今……なんだけど。
ダイニングテーブルの上には、いわゆる電気で作れるタイプのたこ焼き器が置かれていて、じゅうじゅうと丸い物体がおいしそうな……って、あれ。
「ねぇ、これってなんか生地違う?」
「よくわかったな」
「だって、なんか甘い匂いするよね? ホットケーキみたいな」
「ご名答」
見た目はまんまるたこ焼きなんだけど、匂いはホットケーキみたいな甘いもの。
てことは、生地はそれなのね。
お兄ちゃんが作るっていうからどんなものかと思いきや、でもお手軽でいいなぁとも素直に感心した。
「こんだけありゃ、あとは好きにトッピングでもなんでもして食えるだろ」
葉月と一緒に席へつき、配られた小皿と竹串を手にたこ焼きを見つめる。
見た目は一緒。匂いも一緒で、おいしそう。
ちなみに、トッピングとして置かれたのは、昨日のパフェで使ったチョコレートソースとキャラメルソースに、生クリームと大きなカップに入っているバニラアイスだった。
「……あ、このアイスお母さんが食べたいって言って買ったものじゃない?」
「そうは言っても、買ったのだいぶ前だろ? 結局ひとくちしか食ってねーし、よくね?」
バレなきゃいいんだよ、どうせ。
葉月の隣へ腰掛けたお兄ちゃんは、なかなか怖いことを言ってくれる。
うぅ。でも、お母さんこのアイス好きなんだよ……? 知らないからね?
ちょっとお高めのバニラアイス、もちろんおいしいのはよく知ってる。
……。
まぁ……いいか。
何かあったら、お兄ちゃんにまず責任は取ってもらおう。
「どこからでも好きなの食っていいぞ」
「へー。それじゃあ……」
「ふふ。いただきます」
肩をすくめたのを見てから、葉月と一緒に竹串を伸ばす。
このとき、本当は気づけばよかったんだよね。
だって……お兄ちゃんは私たちを見ながらも、腕を組んだままにやにや笑ってたんだから。
「っ……!!?」
熱いだろうなと思って食べたけど、そうじゃない。
や、あの、熱いには熱かったの。
でもそうじゃなくて……そうじゃなくてっ!
「なにこれ!?」
ひとくちで行ったのがまずかったらしく、噛んだ瞬間中からじゅわっと何かがあふれた。
何か。
何かって……これ、みかんでしょ!
あつあつのみかんの果汁があふれて、危うくむせるところだった。
「アタリか。引き強いな、お前」
「そういう問題じゃないでしょ!? えぇえ!? ちょ、なんで!? なんで中身がみかんなの!?」
この間食べたみかんゼリーと同じ感じだから、きっと缶詰のみかん。
うぅ……じゅわっとホットなみかん果汁は……思いのほか、甘ずっぱい。
でも、お兄ちゃんはテーブルへ頬杖をつくと、葉月へ向き直った。
「中身なんだった?」
「……キャンディチーズ?」
「ち。ハズレか」
「え、当たりでしょ!」
「そーか? 期待したリアクションと違ったら、ハズレだろ」
お兄ちゃんの判断基準がまったくわからない。
ていうか……てことは……え、ええ?
もしかしてこれ全部、中身違うの?
じゅうじゅうと音を立てて焼かれているまんまるの物体が、改めてちょっと異様な存在感を示しているように見えた。
「おやつじゃないじゃない!」
「中身がランダムってだけで、どー考えたっておやつだろ。食べられるモンしか入れてねーぞ」
「そういう問題じゃないっ!」
ああもうああもう!
自信満々に言うから信じたのに、まさかこんなことになるなんて!
うぅ。怖いんだけど……。
ぽっかり2個ほど空いた場所を見ながら、当然眉は寄った。
「たーくんは食べないの?」
「いや、俺中身知ってるし。アンパイしか引かねーから、おもしろくねぇじゃん」
「うぅ、不正行為だ」
ていうか、こんなわくわくしないおやつ嫌だぁ。
見た目はおいしそうだったのに、今となっては隠されているものがあるとわかって、恨めしい。
でも……食べ物、粗末にしちゃいけないでしょ。
匂いはおいしそうなのになぁ。
とはいえ、葉月はキャンディチーズを引いたわけでしょ?
てことは、あと……えっと1/17はもしかしたらおいしい何かかもしれない。
うー。心臓悪いなぁ。
ニヤニヤしながら中央のひとつをつまんだお兄ちゃんは、『ウィンナーだと完全にアメリカンドックだな』とつぶやいていた。
「……これっ!」
「あー」
「っ……ねぇやめてそれ! 食べる前に怖い!」
「お前、単純だな」
「もう。たーくん、羽織で遊ばないであげて」
意を決して選んだ瞬間そう言われたら、なんかもう……何を信じればいいの?
葉月が意見してはくれたけれど、お兄ちゃんはまったく気にしない様子で『おすすめはこの辺な』と私が選んだのと逆側を指で示した。
「……葉月どれにする?」
「んー……じゃあ、これ」
「こっちがうまいっつってんだろ」
「おいしいとは言わなかったでしょう?」
「ち。お前、勘いいな」
葉月が選んだものをみて、お兄ちゃんは明らかに舌打ちした。
うぅ。私たちで遊ぶのやめてよー。
葉月が半分ほどかじったそれは、いちごジャムだったらしく、ほっとした顔で生クリームを追加していた。
「…………」
ごくり。
私も……おいしいのがいい。
ていうか、全部の具は何なの?
一覧みたいなのが欲しいんだけど、そういうマメさはなさそうだから諦める。
「えいっ!」
ど真ん中に位置するものを刺し、お兄ちゃんの反応を見ずに……恐る恐る、かじる。
と。
「あ、ウィンナーだ」
「よかったね」
「え、同じ具材ってありなの?」
「そんなに種類ねーからな。さすがに、ヤバイやつは入れてねーし」
「うぅ、心臓に悪いよ……ていうか、違う意味でどきどきするおやつなんてやだぁ」
さっきのみかんが、少しだけトラウマ。
みかんは、みかんとして食べるのが絶対いいと思うんだよね。
それにしても、なんでこんなおやつを考えたのか。
まさにギャンブルそのもので、ああ性格ってこういうときよくわかるよねとある意味納得した。
「てか、ちびちび食ってねーで、ひとくちでいけよ」
「だって怖いんだもん!」
「だから、そんな変なモン入れてな——ッ!!」
からから笑ったお兄ちゃんは、宣言通りひとくちで行った。
瞬間、口へ手を当てて立ち上がり、慌てたように冷蔵庫へ向かう。
え……え、やだ、何? 何食べたの?
げほげほとむせているのが聞こえ、葉月と眉を寄せて見守るしかできなかった。
「たーくん、大丈夫?」
「くっそ……ミスった」
グラスへなみなみと冷茶を注いで戻ってきたお兄ちゃんは、椅子へ座り直すと半分ほど飲みほす。
え、なんの具食べたの?
怖いような聞いてみたいような気持ちで見つめたら、ため息をついて頬杖をついた。
「塩辛」
「えぇえ!? やだっ! 何入れてるの!?」
「しょーがねーじゃん。アタリが多めじゃなきゃおもしろくねぇだろ?」
「やだやだやだっ、絶対おいしくないでしょ! もぅ、なんでそういう珍味を入れようとするわけ!? 信じられない!」
「案外合うかもしんねーだろ」
「合わなかったでしょ!? そういうの自業自得って言うんだからね!」
でも、ほんとまさに自業自得だからね!
うぅう入れた張本人が間違うとか、そんなのやなんだけど!
塩辛もやだけど、きっとほかにもいろんな具材が隠れてるんだ。
うぅ、やだぁ。楽しめない!
だってこれじゃ、まるで闇鍋みたいじゃない!
「とりあえず、これで一巡したな。あとは……よし、じゃんけんで順番決めようぜ」
「え!?」
「しょーがねーじゃん。誰かひとり多く食う権利あるぞ」
「全然嬉しくない!」
たこ焼き器には、あと13個残っている。
ふあぁやだぁ。
ていうか、こんな緊張をしいられたまま4つも食べなきゃいけないことが、そもそもストレスなんだけど。
もぅ! 食べ物で遊んじゃいけないんだよ!
葉月を見ると、中身を当てるかのようにじぃっとたこ焼きを見つめていたものの、小さくため息をついて諦めた様子を見せた。
「ねぇ、たーくん」
「あ?」
「今日の夕飯、餃子にしようと思ったんだけど……いろんな具があったほうが楽しめる?」
おずおずと手を挙げた葉月を見て、けらけら笑っていたお兄ちゃんが動きを止めた。
餃子……そういえば餃子も、中身見えなくなるよね。
え、それってそういうこと?
うぅ、私は絶対普通の餃子がいい!
まじまじと見られているのがわかってか、お兄ちゃんもさすがに口を閉ざした。
「いいか? 食い物ってのは、安心ていう大前提があって然るべきだろ? つまり、おやつだからって遊んじゃいけないんだよ。わかるか?」
「それはこっちのセリフ!」
「餃子はガチでいい。てか、普通じゃない餃子ってなんだよ」
「作ろうか?」
「やめろ」
真面目な顔で何をいうかと思えば、当たり前のことを当たり前のように言われ、つっこむしかなかった。
葉月は、怒ってないと思うけれど、間違いなく呆れてるんだとは思う。
小さくため息をつくと、『こういうのは、一緒のテンションで楽しめる人とやってね』と苦く笑った。
「ごめんね、葉月」
「え?」
「私が作るって言い出したばっかりに、こんなゲテモノおやつになっちゃって」
どれにしようか悩んでいた葉月へ頭を下げると、まばたいてから首を横へ振った。
お兄ちゃんへ見せた苦笑とは違い、いつもと同じ笑顔なのがかえって申し訳ない。
「楽しいは楽しいし、今のところふたつともおいしかったよ」
「でも……」
「こういうおやつもいいんだな、ってちょっとだけ思ったから……次からは中身を変えてみるね」
「いや、だから悪かったって!」
にっこり笑った葉月を見て、お兄ちゃんが慌てたように声をあげた。
ああ、こういう叱り方もあるのね。
正面きって正論をぶつけるよりも、お兄ちゃんの場合はこういうほうが効くらしい。
くすくす笑った葉月へ切々と言い訳をしているのを見ながら、ああやっぱり葉月のほうが一枚上手だなと改めて思った。
そんな、ロシアンたこ焼き。
お子さまと一緒にやってみるのも、ある意味盛り上がるかも……!?
という、そんな1日でございました。
がしかし、ゴールデンウィーク明けたら、少しは変わってるといいですよね。
そんでもって、10人諭吉が来るらしいのでそれは期待。
自動車税とかね……住民税とかなんとか税って、5月はただでさえ出費がかさむんや……。
それも消費税と一緒に定減税になったらいいのになーーー。
以上、mushokuのわたくしの戯言でした。
さて。
小話もネタが尽きてきたよ(笑)
健全な精神が宿るためには、健全な肉体が必要なんです。
ということは、それこそそういうことですよ奥さん!
とはいえ、濃厚接触ですからね。みんな、自粛するんよ。
リングフィットでもやって、おうち筋トレタイムを増やしていきましょう。
「ねぇ、葉月。今日のおやつ、何がいい?」
「え? 羽織が作ってくれるの?」
「だって、おうち待機になってから、ずーっと葉月が作ってくれてるでしょ? たまには私が作ろうかなって思って」
おうち待機になって、早2ヶ月が経とうとしている。
うーん、なかなかにお腹のあたりがぷよぷよし始めた気もするけれど、見なかったことに……できないけどね。
うぅ。
大学始まったら、少しは今よりも歩く時間は増えるだろうし、人目にさらされるから、きっと気をつけるはず。
だけど、毎日家で勉強だけしていても、楽しさは……どうなんだろう。え、見出せてないのは私だけなのかな。
同じように分厚い本を読んでいるものの、葉月は付箋をつけたりノートへまとめたり、見ているだけだととても楽しそうにも見える。
んんーこれってやっぱり、普段からどんな学習をしているかがわかっちゃうね。
日中は一緒にリビングで勉強しているものの、どうやら葉月は自室へ戻ったときもそんなふうに過ごしてるみたいで、私とは……基礎的なものが違うんだな、とあらためて感じた。
「プリン、チーズケーキ、シュークリーム、ガトーショコラ、チョコレートケーキ、いちごショート、ロールケーキに……どら焼き、みかんゼリー、マフィン、スコーン、クレープ、ホットケーキ……なんかほかにも……あ、パフェ! 昨日食べたいちごパフェ、すごいおいしかったー」
「ふふ。よかった。一緒に作れるおやつって、楽しくておいしくてお得な感じするよね」
「ほんとそれ!」
これまでに葉月が作ってくれたデザートを挙げてみたけれど、私が忘れてるだけで、もっとあるはず。
さすがに、毎日食べてますってわけじゃないけど、ほぼほぼ毎日のルーティンのようにもなっていて、お兄ちゃんが家にいるようになってからはさらに回数が増えた気がする。
「もうさ、お店出せるよね」
「羽織とたーくんが喜んでくれるから、作りがいがあるんだよ」
「紅茶もおいしいし、ある意味毎日アフタヌーンティー開いてる気分だもん」
そう。葉月は日替わりで紅茶のフレーバーを変えてくれていて、それも特別感が増す。
ああ、幸せだなあ。
おいしいおやつがあるって、こんなにもうきうきするんだね。
……って、そうだけどそうじゃなくて!
いつも私たちのために作ってくれるからこそ、たまには葉月をおもてなししたいって気持ちになった。
できることならというか、むしろお兄ちゃんを積極的に動かしながら!
張本人にはまだ内緒だけど!
「作ってくれるなら、なんでも嬉しいよ?」
「そりゃそうかもしれないけど……食べたいもの、ない?」
「んー……おすすめはなぁに?」
「え!? そ、そうだなぁ……あ、じゃあさフルーツ系とクリーム系どっちがいい?」
「どっちもおいしそうね」
「うぅ、ありがたいけどぉお」
まぁ確かに、決められないっていうのはなんとなくわかる。
だって、私も昨日葉月に『パフェとクリームブリュレどっちがいい?』って聞かれて、結局どっちも一緒に作ることにしたんだもん。
ちなみに、クリームブリュレはお風呂上がりにおいしくいただいた。
……ってああもう。
これだから、葉月を休ませてあげられないんだなぁ……反省。
「うーん、あ、わかった。じゃあさ、とりあえず今日は私が何かしら作っておもてなしするから、葉月は自分の時間ゆっくり過ごしてて。ね?」
「いいの?」
「もちろん! 今日はのんびり好きな本読んでね」
バッチリ任せてほしい! と太鼓判は押せない気もするけれど、でも、どうせなら私がたまには作ったものを『おいしい』って食べてほしかった。
いつもの感謝の気持ちをばっちり込めてね!
「……は?」
「えっと、だからね? たまには、葉月におやつ作ってあげたいなって思うんだけど、何がいいと思う?」
お兄ちゃんの部屋へ行ってみたら、どうやらwebで誰かと話しているらしく、パソコンの画面には複数の人たちの顔があった。
……とと、映るつもりはないので、カメラから外れた位置へ立つ。
っていうか、お兄ちゃんの背景なんかすっごいキレイな海外セレブの部屋みたいになってるけど、こんな機能あるの?
と思いきや、ほかの人に至ってはアニメの世界観だったりドラマのセットみたいだったり、はたまた牢屋だったりとバラエティ豊富すぎでしょ。
今どきの会議っていうか……ああ、これ絶対仕事じゃないやつ。
ヘッドフォンを外したお兄ちゃんを見たら気持ちが表情へ出たらしく、なぜか『ほっとけ』と舌打ちされた。
「なんでもいいんじゃね?」
「だから。そうだろうけど、何かしらおもてなししたいでしょ? 日ごろの感謝を込めて」
「日ごろの、ね。まぁ……そうだな。でも、ほぼほぼなんでも作れるだろ? アイツ」
「う」
「だから、俺たちが作るよかよっぽどアイツの作ったモンのほうが、うまいじゃん」
「それは……わかってる、んだけどさ……」
正論だとは思うけれど、でもだって、だって!
たまには、休んでほしいじゃない!
いつも私たちがお世話になりまくりなんだから!
「まぁ、たまにはって気持ちもわからなくねーけど……あー、わーった。んじゃ、作ればいいんだろ? あとで」
「え? お兄ちゃん作ってくれるの?」
「おー。期待しとけ」
ひらひら手を振った彼が、ヘッドフォンを手にした。
あ、もう戻るつもりね。
どうやらマイクだけをミュートにしてあるようで、ぎゃーぎゃーと悲鳴のような声は私まで聞こえていた。
なんだかんだいって、自由というかある意味謳歌してるんだなぁ。
けらけら笑いながらつっこみを始めたお兄ちゃんを見て、ああこの人はどんな状況下でも生きていけるんだろうなと改めて感じた。
「え? これって……」
「……たこ焼き?」
「そ」
宣言通り、14時を過ぎたあたりからお兄ちゃんがキッチンで何かしてるなと思ったものの、私と葉月が覗こうとしたら『立ち入り禁止』と手のひらを向けられた。
そのとき『密』って言ってたけど、それって絶対アレの真似でしょ。
単純に言いたいだけだろうと思ったけれど、つっこまず葉月とふたりでリビングへ戻ることにはした。
で、改めて呼ばれた今……なんだけど。
ダイニングテーブルの上には、いわゆる電気で作れるタイプのたこ焼き器が置かれていて、じゅうじゅうと丸い物体がおいしそうな……って、あれ。
「ねぇ、これってなんか生地違う?」
「よくわかったな」
「だって、なんか甘い匂いするよね? ホットケーキみたいな」
「ご名答」
見た目はまんまるたこ焼きなんだけど、匂いはホットケーキみたいな甘いもの。
てことは、生地はそれなのね。
お兄ちゃんが作るっていうからどんなものかと思いきや、でもお手軽でいいなぁとも素直に感心した。
「こんだけありゃ、あとは好きにトッピングでもなんでもして食えるだろ」
葉月と一緒に席へつき、配られた小皿と竹串を手にたこ焼きを見つめる。
見た目は一緒。匂いも一緒で、おいしそう。
ちなみに、トッピングとして置かれたのは、昨日のパフェで使ったチョコレートソースとキャラメルソースに、生クリームと大きなカップに入っているバニラアイスだった。
「……あ、このアイスお母さんが食べたいって言って買ったものじゃない?」
「そうは言っても、買ったのだいぶ前だろ? 結局ひとくちしか食ってねーし、よくね?」
バレなきゃいいんだよ、どうせ。
葉月の隣へ腰掛けたお兄ちゃんは、なかなか怖いことを言ってくれる。
うぅ。でも、お母さんこのアイス好きなんだよ……? 知らないからね?
ちょっとお高めのバニラアイス、もちろんおいしいのはよく知ってる。
……。
まぁ……いいか。
何かあったら、お兄ちゃんにまず責任は取ってもらおう。
「どこからでも好きなの食っていいぞ」
「へー。それじゃあ……」
「ふふ。いただきます」
肩をすくめたのを見てから、葉月と一緒に竹串を伸ばす。
このとき、本当は気づけばよかったんだよね。
だって……お兄ちゃんは私たちを見ながらも、腕を組んだままにやにや笑ってたんだから。
「っ……!!?」
熱いだろうなと思って食べたけど、そうじゃない。
や、あの、熱いには熱かったの。
でもそうじゃなくて……そうじゃなくてっ!
「なにこれ!?」
ひとくちで行ったのがまずかったらしく、噛んだ瞬間中からじゅわっと何かがあふれた。
何か。
何かって……これ、みかんでしょ!
あつあつのみかんの果汁があふれて、危うくむせるところだった。
「アタリか。引き強いな、お前」
「そういう問題じゃないでしょ!? えぇえ!? ちょ、なんで!? なんで中身がみかんなの!?」
この間食べたみかんゼリーと同じ感じだから、きっと缶詰のみかん。
うぅ……じゅわっとホットなみかん果汁は……思いのほか、甘ずっぱい。
でも、お兄ちゃんはテーブルへ頬杖をつくと、葉月へ向き直った。
「中身なんだった?」
「……キャンディチーズ?」
「ち。ハズレか」
「え、当たりでしょ!」
「そーか? 期待したリアクションと違ったら、ハズレだろ」
お兄ちゃんの判断基準がまったくわからない。
ていうか……てことは……え、ええ?
もしかしてこれ全部、中身違うの?
じゅうじゅうと音を立てて焼かれているまんまるの物体が、改めてちょっと異様な存在感を示しているように見えた。
「おやつじゃないじゃない!」
「中身がランダムってだけで、どー考えたっておやつだろ。食べられるモンしか入れてねーぞ」
「そういう問題じゃないっ!」
ああもうああもう!
自信満々に言うから信じたのに、まさかこんなことになるなんて!
うぅ。怖いんだけど……。
ぽっかり2個ほど空いた場所を見ながら、当然眉は寄った。
「たーくんは食べないの?」
「いや、俺中身知ってるし。アンパイしか引かねーから、おもしろくねぇじゃん」
「うぅ、不正行為だ」
ていうか、こんなわくわくしないおやつ嫌だぁ。
見た目はおいしそうだったのに、今となっては隠されているものがあるとわかって、恨めしい。
でも……食べ物、粗末にしちゃいけないでしょ。
匂いはおいしそうなのになぁ。
とはいえ、葉月はキャンディチーズを引いたわけでしょ?
てことは、あと……えっと1/17はもしかしたらおいしい何かかもしれない。
うー。心臓悪いなぁ。
ニヤニヤしながら中央のひとつをつまんだお兄ちゃんは、『ウィンナーだと完全にアメリカンドックだな』とつぶやいていた。
「……これっ!」
「あー」
「っ……ねぇやめてそれ! 食べる前に怖い!」
「お前、単純だな」
「もう。たーくん、羽織で遊ばないであげて」
意を決して選んだ瞬間そう言われたら、なんかもう……何を信じればいいの?
葉月が意見してはくれたけれど、お兄ちゃんはまったく気にしない様子で『おすすめはこの辺な』と私が選んだのと逆側を指で示した。
「……葉月どれにする?」
「んー……じゃあ、これ」
「こっちがうまいっつってんだろ」
「おいしいとは言わなかったでしょう?」
「ち。お前、勘いいな」
葉月が選んだものをみて、お兄ちゃんは明らかに舌打ちした。
うぅ。私たちで遊ぶのやめてよー。
葉月が半分ほどかじったそれは、いちごジャムだったらしく、ほっとした顔で生クリームを追加していた。
「…………」
ごくり。
私も……おいしいのがいい。
ていうか、全部の具は何なの?
一覧みたいなのが欲しいんだけど、そういうマメさはなさそうだから諦める。
「えいっ!」
ど真ん中に位置するものを刺し、お兄ちゃんの反応を見ずに……恐る恐る、かじる。
と。
「あ、ウィンナーだ」
「よかったね」
「え、同じ具材ってありなの?」
「そんなに種類ねーからな。さすがに、ヤバイやつは入れてねーし」
「うぅ、心臓に悪いよ……ていうか、違う意味でどきどきするおやつなんてやだぁ」
さっきのみかんが、少しだけトラウマ。
みかんは、みかんとして食べるのが絶対いいと思うんだよね。
それにしても、なんでこんなおやつを考えたのか。
まさにギャンブルそのもので、ああ性格ってこういうときよくわかるよねとある意味納得した。
「てか、ちびちび食ってねーで、ひとくちでいけよ」
「だって怖いんだもん!」
「だから、そんな変なモン入れてな——ッ!!」
からから笑ったお兄ちゃんは、宣言通りひとくちで行った。
瞬間、口へ手を当てて立ち上がり、慌てたように冷蔵庫へ向かう。
え……え、やだ、何? 何食べたの?
げほげほとむせているのが聞こえ、葉月と眉を寄せて見守るしかできなかった。
「たーくん、大丈夫?」
「くっそ……ミスった」
グラスへなみなみと冷茶を注いで戻ってきたお兄ちゃんは、椅子へ座り直すと半分ほど飲みほす。
え、なんの具食べたの?
怖いような聞いてみたいような気持ちで見つめたら、ため息をついて頬杖をついた。
「塩辛」
「えぇえ!? やだっ! 何入れてるの!?」
「しょーがねーじゃん。アタリが多めじゃなきゃおもしろくねぇだろ?」
「やだやだやだっ、絶対おいしくないでしょ! もぅ、なんでそういう珍味を入れようとするわけ!? 信じられない!」
「案外合うかもしんねーだろ」
「合わなかったでしょ!? そういうの自業自得って言うんだからね!」
でも、ほんとまさに自業自得だからね!
うぅう入れた張本人が間違うとか、そんなのやなんだけど!
塩辛もやだけど、きっとほかにもいろんな具材が隠れてるんだ。
うぅ、やだぁ。楽しめない!
だってこれじゃ、まるで闇鍋みたいじゃない!
「とりあえず、これで一巡したな。あとは……よし、じゃんけんで順番決めようぜ」
「え!?」
「しょーがねーじゃん。誰かひとり多く食う権利あるぞ」
「全然嬉しくない!」
たこ焼き器には、あと13個残っている。
ふあぁやだぁ。
ていうか、こんな緊張をしいられたまま4つも食べなきゃいけないことが、そもそもストレスなんだけど。
もぅ! 食べ物で遊んじゃいけないんだよ!
葉月を見ると、中身を当てるかのようにじぃっとたこ焼きを見つめていたものの、小さくため息をついて諦めた様子を見せた。
「ねぇ、たーくん」
「あ?」
「今日の夕飯、餃子にしようと思ったんだけど……いろんな具があったほうが楽しめる?」
おずおずと手を挙げた葉月を見て、けらけら笑っていたお兄ちゃんが動きを止めた。
餃子……そういえば餃子も、中身見えなくなるよね。
え、それってそういうこと?
うぅ、私は絶対普通の餃子がいい!
まじまじと見られているのがわかってか、お兄ちゃんもさすがに口を閉ざした。
「いいか? 食い物ってのは、安心ていう大前提があって然るべきだろ? つまり、おやつだからって遊んじゃいけないんだよ。わかるか?」
「それはこっちのセリフ!」
「餃子はガチでいい。てか、普通じゃない餃子ってなんだよ」
「作ろうか?」
「やめろ」
真面目な顔で何をいうかと思えば、当たり前のことを当たり前のように言われ、つっこむしかなかった。
葉月は、怒ってないと思うけれど、間違いなく呆れてるんだとは思う。
小さくため息をつくと、『こういうのは、一緒のテンションで楽しめる人とやってね』と苦く笑った。
「ごめんね、葉月」
「え?」
「私が作るって言い出したばっかりに、こんなゲテモノおやつになっちゃって」
どれにしようか悩んでいた葉月へ頭を下げると、まばたいてから首を横へ振った。
お兄ちゃんへ見せた苦笑とは違い、いつもと同じ笑顔なのがかえって申し訳ない。
「楽しいは楽しいし、今のところふたつともおいしかったよ」
「でも……」
「こういうおやつもいいんだな、ってちょっとだけ思ったから……次からは中身を変えてみるね」
「いや、だから悪かったって!」
にっこり笑った葉月を見て、お兄ちゃんが慌てたように声をあげた。
ああ、こういう叱り方もあるのね。
正面きって正論をぶつけるよりも、お兄ちゃんの場合はこういうほうが効くらしい。
くすくす笑った葉月へ切々と言い訳をしているのを見ながら、ああやっぱり葉月のほうが一枚上手だなと改めて思った。
そんな、ロシアンたこ焼き。
お子さまと一緒にやってみるのも、ある意味盛り上がるかも……!?
という、そんな1日でございました。